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2021-08-06 21:52

(連載1)誰がハイチ大統領を暗殺したのか

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 ジョブネル・モイーズ暗殺事件とは、ハイチ共和国で2021年7月7日未明に発生した暗殺事件である。もともと、モイーズ大統領が選出されるにあたりはさまざまな経緯があった。第39代大統領ミシェル・マテリの任期が2016年2月7日で終了することに伴い、後継の大統領を決める選挙が2015年10月25日に実施され、32.81%の票を獲得したジョブネル・モイーズと25.27%のジュード・セレスタン候補が決選投票に進み、12月27日に投票が行われる予定であった。しかし10月の第1回目投票で不正があったと抗議デモが発生したため決選投票が2016年1月に延期。その後も抗議は収まらず再延期となり、最終的に10月の選挙結果は無効となった。11月20日になってようやくやり直しの大統領選挙が行なわれ、モイーズが得票率55.67%で当選。
 
 この選挙に大きな問題は指摘されず、2017年1月4日に結果が確定。2月7日に就任した。2018年に議会総選挙が実施されるはずであったが混乱のため延期され、大統領令で政策を実行した。ハイチの大統領任期は5年のためモイーズは自らの任期は2022年2月7日までとしたが、野党勢力はマテリ前大統領が退任した2016年2月を任期の起点とするよう求め、2021年2月7日に退陣するよう抗議。折しもモイーズが約1年にわたって議会の承認を経ずに大統領権限を行使してきたことも批判の対象となった。
 
 野党の主張する任期切れの2月7日に政府はモイーズの殺害計画を含むクーデター計画を事前に阻止したと発表し、最高裁判事や国家警察幹部ら少なくとも23人を逮捕したことを公表した。任期の問題の他にも政権内の汚職が絶えず、またギャングによる犯罪が野放しになっていることに抗議するデモが度々発生していた。このことを受けて事件の二日前である7月5日には、モイーズが神経外科医のアリエル・アンリを新首相に指名している。
 
 話はずれるがハイチといえば、2010年に、いわゆるハイチ地震があり、自衛隊が当地に派遣されたことを覚えている方もいるだろう。その時にちょうど民主党政権であったことから、自衛隊の武器運用に否定的で混乱や武装蜂起が多かったハイチで、武器、特に機関銃の保持を認めないなどという不合理な政策判断を押し通し、自衛隊では大きな反発があったという。その国でその国の大統領が暗殺されたことを思うと自衛隊の任務の重さに思いを致さざるを得ない。(つづく)
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