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2007-09-13 16:14

もっと政治のリーダーシップと透明性を

河合正男  白鴎大学客員教授
 この欄で、我々は国際社会における日本の立場を強化するための方途について種々の議論を行っている。しかし、今日この内政状況ではそのような議論をすることが空しいような気がする。安倍総理の辞任表明により、さらに深刻化した内政の混乱について敢えて意見を述べたい。

 一つは、政治家のリーダーシップについてである。政治家とは社会におけるリーダーである。しかし、多くの論者にも無責任と受け取られている安倍総理のこのような形での辞任は、まさに政治家の資質とリーダーシップの弱体化を露呈している。健康上の問題があったのかも知れないが、そうであればその点も“しっかりと”国民に説明して、理解を得るべきであった。まさに、命を賭して国民の先頭に立ち続けようとした小渕総理や大平総理との落差を感じる。日本は今や、危機的状況にある。少子高齢化、産業の競争力の減退、財政赤字等による国力の後退、そして対外的にはパッシングされつつある日本がある。何にも増して深刻なのは、連日の自殺者に見られるように、多くの日本人が幸福感を持てなくなっていることである。この日本を救えるのは、やはり政治家、政治指導者である。二世議員が増えて、政治がひ弱になっているとの批判がある。そうであれば非二世議員がもっともっと頑張らなければならない。闘わなければならない。

 しかし、日本の政治には、もっと根本的な問題がある。それは政党間の政権交代が行われにくいということと、政治の透明性が不十分だということである。一つの党の中で政権交代が行われるだけでは、国民のために真に闘う強い政治家は育たない。政党間の闘いの中で、強い政治指導者が育って行くのだ。これを我々は欧米先進国の政治に見ている。また、今自民党が混乱しているのは、長期の権力維持の中で沈殿した政治の不透明性が限界に来ているということではないか。

 私のいたノルウェーは、世界的にも税率が高い国である。それでも国民から高税率に対する反乱が起きないのは、高福祉制度があるだけでなく、社会の諸制度の透明度が高いからである。オンブズマン制度等が良く機能しているとともに、国連報告でも世界で最も汚職の少ない国とされている。途上国援助に関しても、途上国での汚職追放を重点政策としている。政治の透明性が高いということは、国民の政治参加意識が高いということである。その証左として、選挙での投票率も高い。

 いずれ日本でも増税が必要になって来ている。それには、歳出削減を図るだけでなく、政治と行政の透明度を高めて政治への国民の信頼を高めることが必要である。政治とカネの関係で次から次と問題が出て来たのでは国民の信頼が得られるはずは無い。透明度を上げる諸制度の整備こそ、日本の政治を活性化するために急務である。真に国民が自分たちのものとして信頼し支持できる政治の出現なくして、社会の活性化を図ることも、外交を強化して行くことも難しい。
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