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2022-12-21 09:51

予算ありきの防衛費問題

岡本 裕明 海外事業経営者
 防衛費問題は、岸田政権にとって禍根を残すかもしれません。年明けの大予想をするつもりではないのですが、23年度波乱のひと札をあげよ、と言えばこれは有力候補かもしれません。経済同友会の桜田謙悟代表幹事が「全体の金額と財源だけが議論されている」(2022/12/13産経新聞)と述べているのですが、これに深く同意します。「今後5年間で43兆円を使う、その一部の財源は法人税などでカバーし、国債は発行しない」このストーリーだけが岸田首相の頭の中で頑なな形でインプットされているのです。しかし、これは手段の話であって目的は何、と言えばようやく確定する「安保三文書」がベースです。安保三文書は「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」を指します。そのうち最重要なのは国家安全保障戦略で、その概要に3つの目標が記されています。抑止力強化、同盟強化、外交強化です。今回、膨張する中国、ミサイル実験を繰り返す北朝鮮、ウクライナ問題で外交が悪化したロシアを具体的な対象と捉え、究極的には日本が平和で安全であり、国土が損傷なく維持できる国家体制を維持することであります。本質的には岸田首相の43兆円プランはここが出発地点であり、そのトリガーは安倍元首相が唱えた防衛費2%目標であり、近年の社会事象(ウクライナ問題や台湾、北朝鮮案件)であるわけです。その為に武器、装備品を買う、相手を叩く戦闘能力を持たせる、自衛隊設備の拡充などを防衛費増額の理由にしています。
 
 ただ、個人的には岸田首相はやはり、数字ありきの議論を先走り過ぎていると思います。国家の安全とは戦時体制を整えたり、「見せ武器」で相手を威圧したりすることも重要ですが、それ以外にもやらねばならないことはごまんとあるのです。まずは情報をしっかり押さえることだと考えています。これは地味な仕事だけにあまり話題にならないですが、情報漏洩を防ぐこと、スパイの侵入を防御すること、スパイに騙されないことといった万人に求められる基本中の基本を教育することから始まります。これは右派とか左派という問題ではなく、「国を護る」という当たり前のことなのです。次に流出を防ぐこと。主たるリスクは技術やノウハウで、Brain Drainと称されるものです。特に日本の学者や専門家が高い報酬で中国や韓国などに引き抜かれるケースが後を絶ちません。彼らは三顧の礼で迎えられますが、一通り吸い取ったらポイ捨てされるのです。そんな行為をしたら日本にも戻れない、相手国にもいられない世界が待ち受けています。ではなぜ、頭脳流出が起きるのかと言えば、日本の報酬が安いからなのです。結局まわりまわると防衛強化は妥当な報酬ということになったりします。不動産はどうでしょうか。日本は多少、規制が厳しくなったとはいえ、外国人にとって最も不動産を取得しやすい国の一つです。日本法人なんてダミーでいくらでも作れるし、不動産を一度取得し、日本人役員が某国の役員に交代したところでそれを知るチャンスもないし、不動産を取り戻すのは尚更難しくなります。あるいは住民の権利はどうでしょうか、外国人の権利を人権の部分と国防と混同していたりしないでしょうか。
 
 要するに、もっと強化しなくてはいけないところはいくらでもあるのです。個人的には公安、特に外事の手が薄すぎだと思います。公安と言えば警察ですが、その主力はほとんどが警視庁、そして外事課はロシアの1課、中国の2課、北朝鮮の3課がほとんどで4課はおまけみたいなもので担当エリアだけはその他全世界という扱いです。つまり偏り過ぎの上に人数も専門家も全然足りていないのです。強権を持たない法務省管轄の公安調査庁も基本はオウム真理教絡みが強く外事は調査ルートが限られていてほぼダメ。あとは外務省ですが、こちらもそういう専門人材を育てていない弱みがあるのです。
 
 戦略的武器が重要なのはわかるのですが、日本は戦後、一種の平和ボケと島国という特性から相手からの防御に脆弱性があります。一発何億円もするミサイルもわかりますが、もっと国民意識を根本から見直さないといけないでしょう。自衛隊員は27万人程度とされます。増えないです。不人気以上に少子化で隊員は今後も苦戦が強いられるでしょう。特にきな臭い状況になればなおさら志願者は減るかもしれません。とすれば日本はより頭脳プレイと堅固な社会システムを作り上げることがより重要です。私は43兆円に反発しているわけではないのです。どうやったら日本を護れるのか、この議論、そして全方向での戦略と議論が欠落している点を憂いており、それは岸田さんの手にすべてかかっています。その岸田さん、最近の顔つきは以前の柔和さがすっかり消えてしまっている点、私は非常に気になっています。
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