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2023-06-20 10:15

中国が沖縄を占領するための理論を作りだした裏側

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 私は、現代に横たわる陰謀を見ながら、その内容をどのようにして、ニュースなどから端緒を見つけることができるかということを考えている。実際に、陰謀は様々な所で行われており、その内容をいかに考えてゆくのかということをしっかりと見ていなければならない。全く表面に出ない陰謀などもあるが、実際は、ニュースなどに何か端緒が出ていたり、あるいはニュースに何かか隠されているようなことも少なくないのである。例えば、「外交的な言葉の中に、これからの野望が込められている」ということである。その言葉などをしっかりと報道を見つけ、そして、その内容の意味を見て、しっかりと反論をしてゆくことが最も重要な「抵抗」であるし「国際社会における日本の立場の表明」も重要になるということになる。そのためには、相手の外交的な言葉や、そのことばを出した背景、または政治的な背景や、相手国の国内の政治情勢などをすべて考えておかなければ、なかなかそのようなことはできないのではないか。そのためには、「外交的な言葉」に注目しなければならない。もちろん「外交的な言葉」の中には、「嘘」や「誇大表現」などが多い。外交というのは基本的には「嘘をついてよい場所」であり、また「相手をだますくらいがちょうどよい」というような評価をされる。そのような中において、「外交的な言葉」をどのように注目すればよいのか。

 日本人の多くは「嘘だから(または外交的な言葉だから)証拠価値が少ない」などと言うことを言う人が少なくない。しかし、実際には「真実」よりも「嘘」の方が情報が多いのである。情報を扱う人ならば当然のことであるが、「嘘」には、まずその嘘の元となる「真実」があり、また「嘘をつかなければならない事情」つまり「隠したい事実」と「隠さなければならない事情」が存在する。そのうえで、その「事情」に関して、別な事情や政治的な駆け引きなどが別途存在するということになるのである。またその嘘は「様々なタイプの中でなぜこのうそを選んだのか」ということで、相手が自分たちをどのように見ているかということなどの「見方」や、場合によってはそれをどのように調べたのかということなども見えてくるのである。そのように考えると、「嘘」に「だまされてあげながら、相手のそれらの情報を全て入手する」ということが最も重要なのではないか。そのような観点で見てゆかなければならないし、また、そのような外交に関する内容を「訓練」しておかなければならないのである。その意味で今回は、習近平が「琉球」に言及したことについて考えてみたい。

 中国共産党機関紙・人民日報は6月4日付の1面で、習近平国家主席が、沖縄県尖閣諸島に関連して琉球(沖縄)と中国の交流に触れた発言を伝えた。基本的には習近平が「沖縄」という単語を知らないというわけではない。わざと「琉球」という言葉を使った。このペースであれば、そのうち「日本」ではなく「倭国」というようになってくるのではないか。要するに、「古代中国は先進国であって、日本の様々な王国が朝貢しに来ていた」ということを主張し「その時代に戻して尖閣諸島や先島諸島、南西諸島、場合によっては日本全体」が、中国の領土の一部であるというようなことを主張しているということになる。日本の一部メディアでは、この習近平の発言について「中国が内政だとする台湾に日本が関与を強めれば、再び沖縄の帰属問題を持ち出すこともありうるとの警告だ」と報じた。つまり、「中国の気に食わないことがあれば、そのような1000年前の屁理屈を付けて、日本全体を従属させ武力で威圧する」という脅しでしかない。そもそも、わざわざ中国のメディア関係者という人は「台湾の内政干渉」ということを言っているが、僧ではなく、始から尖閣諸島や南西諸島、日本国そのもののことを言っていないということはどのように証明できるのであろうか。そうではないというような保証は全くないのである。そのうえで、日本政府は、この記事をもって、中国の「脅しに屈する」のかどうか、そこは大きな問題である。

 一方で、なぜ中国は「琉球」という単語を使って、このようなことを言わなければならないのか。前述の「嘘」と同じように、なぜこのようなことを言わなければならないのかということを考えなければならない。「なぜこんなこと」は、今回はあえて二種類を挙げてみよう。一つは「琉球」という言葉、もう一つはメディア関係者を使って「台湾の内政干渉」ということであろう。「琉球」という言葉を使うのは、あえて、そのようにして「沖縄は独立国だり沖縄の県民の独立の意思がある」ということを主張している。つまり、デニー知事をはじめとした「革新系の政治的な勢力」があり、その人々が「中国に帰属したい」というように思っていると判断しているということになる。基本的にはロシアがウクライナ東部のドンバス地方において「ロシア系住民が独立従っていてその承認が必要」として、昨年の2月24日に攻め入ったのと同じ構図を作り出そうとしているのであろう。逆に言えば、「それだけ中国政府の工作が進んでいる」ということを意味している。単純に、沖縄の左翼勢力日本政府に抵抗している人々が、中国の工作員とつながっているということを意味しているのである。この辺のことはまた改めて言わなければならないのであろう。
 
 一方、「台湾の内政干渉」ということを警戒するのは何であろうか。あえて、メディア関係者に言わせたということは、当然に「それが本音ではない」ということである。逆に言えば、台湾の内政干渉ではなく本当に日本や沖縄を従属させることが目的かも知れない。そのことは否定できない。しかし、それ以上に「日本からの内政干渉」がかなり邪魔であるということ、中国にとっては「困った存在」であるということになるのである。逆に言えば、中国が最も嫌がるということを行っている。ちゃんと言えば、台湾の国民が日本の応援があること、日本が独立を保っていることによって、台湾が独立を保つ心を持つことになる。そして、そのことは、「台湾への工作がうまくゆかなくなる」ということを意味している。つまりは中国共産党は「工作によって台湾を併合しようとしており、そのうえで、台湾への工作は総統選挙を基にやっている」ということにある。そのうえで、その工作をうまく成功させるためには、アメリカよりも日本が邪魔だということになるのである。さて「嫌がられて辞める」のか、あるいは、「嫌がられているからこそ台湾の独立を守るのか」そのことが重要なのである。
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