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2007-10-15 10:33

EUに学ぶべき対途上国援助

河合正男  白鴎大学客員教授
 わが国もEUとの自由貿易協定交渉に入ることになって来ている様であるが、結構なことである。インド洋での自衛隊の給油活動問題もあって、対米関係ばかりが注目される昨今であるが、突出した軍事力と言うハードを中心にした米国外交に対して、経済や倫理等のソフト面をより重視したEU諸国の外交は、じわりじわりと世界の指導権を得つつあるように見られる。通貨面でもユーロの独歩高が続いている。そのEUの外交政策で、日本がもっと関心を持つべきものの一つが対途上国援助である。私がOECDのDAC(Development Assistance Committee)に、政府の代表として出席していた20年程前には、日本の援助額がまもなく世界一になろうとする勢いがあった。私は、DACの議長は米国、副議長はフランスと固定しているのはおかしいと問題提起したものである。ところが今や、援助国側の様相が大きく変わりつつある。その指導権を握りつつあるのは日本でも米国でもなくEUである。

 9・11事件後、テロ対策としては軍事力でテロリストを押さえ込むだけでなく、テロリストの温床となる貧困問題や国際的不平等問題に対応することが重要だとの考えが、先進国の間に広まり、援助額が増大し続けている。特に、この問題に真剣に取り組んでいるのはEU諸国である。先進国の中で日本だけは、このような考えに賛同はしているにせよ、具体的な行動には殆ど結び付けていない。むしろ、既に長年に亘りODA予算を減額し続けている。EUは加盟国全体として、国連のミレニアム開発目標(MDGs)達成のために、2015年までに1970年代からの国連目標であるGNIの0.7%のODA実施を共同目標として打ち出している。EU諸国は各国別の援助に加えて、EUに拠出してEUとしての援助活動も行っている。このEUとしての援助が年々増大しており、数年を経ずして世界最大のバイの援助実施者になるものと見られる。

 また、途上国においてもこれまでのように援助国の旗を鮮明に掲げた(flying flag)援助ではなく、出来るだけ援助国全体が共同して相手国のニーズに応えて行く、援助各国の旗を掲げない援助をすべきだとの政策を強めつつある。途上国側から見れば、世界の良心の中心はEUだとのイメージが強まりつつあるのではないか。EUとのFTAに援助活動を含めることにはならないにせよ、日本としても援助活動面でEUとの連携を模索するとともに、援助活動を行っている他の東アジア諸国との対話を進め、可能なところでは連携を図っていく、との考えが重要になって来ているのではないかと思う。
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