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2024-11-05 20:55

日本人が日本を考えるということ

高畑 洋平 GFJ世話人事務局長/慶応義塾大学SFC上席所員
 日本政府観光局(JNTO)の発表によれば、訪日外国人客数はコロナ禍から順調な回復を見せ、2024年の訪日外国人数は前年を大きく上回る3,310万人(2023年比131.3%)と推計され、コロナ禍から回復した観光業界を中心にインバウンド需要が順調に回復しつつある。また、そもそも日本の伝統文化や伝統芸能、あるいは日本のアニメなどは、時代を問わず海外で高い評価を受けており、「日本再ブーム」ともいうべき動きが顕著に見られること自体歓迎すべきであり、これに異を唱える日本人はいないであろう。
 
 他方、訪日外国人旅行客の急増は、異文化への理解をはじめ、人材不足やインフラへの負荷、さらには、オーバーツーリズムの問題といった様々な課題を浮き彫りにした。そして、何より我々が忘れてならないのが、日本という国が「観光立国」であると同時に「災害大国」でもあるという二面性を持っている点にある。2024年1月1日に発生した能登半島地震は、能登半島を中心に北陸地方に甚大な被害をもたらしたことは、皆様ご記憶のとおりである。2011年の東日本大震災以来の衝撃と悲しみは、われわれ日本人の心に深く刻まれた。また、改めて言うまでもなく、2023年は、関東大震災から100年の節目の年であったほか、2024年は阪神・淡路大震災から30年の節目を迎えたことは言うまでもない。この他にも、日本の歴史に刻まれた災害は数え切れないほどあることを我々は認識している。
 
 第2次大戦後、日本は国際社会からの支援・融資を受けながら、自助努力の精神に基づき、戦禍で疲弊した国土を復興させ、常に国際社会と共に歩み他国と共に栄えることを重視してきた。日本人は、古来より、自分のことを多少後回しにしてでも他者を尊重する、思いやりや礼儀を大切にしてきたことから、その精神性を「日本人の強く美しい心」と称され、その精神は今日まで脈々と受け継がれている。また、こうした精神は、日本の各種の遺産についても同様であり、有形、無形に関わらず、どちらも長い時間をかけて人から人へと受け継がれてきた。さらに、文化財に関しても、東京タワーや広島平和記念資料館などは戦後復興のシンボルとして、今日においても、その重要な役割を担い続けている。まさに、日本人には非常に長い年月をかけて築き上げてきた文化的な「価値観」が多々ある。
 
 今日、世界における日本の地位が低下し続けていると言われ続けているなかで、我々に必要な視点とは何であろうか。それは、つまるところ日本人がもう少し自分たちの価値を再認識するべきではないだろうか。日本全国には魅力溢れる観光資源をはじめ、最先端の技術力や、地方各地に伝わる伝統芸能、海外にもファンをもつアニメ文化、また旅行先として、さらにはビジネス向けの市場としても潜在能力を秘めているが、最近ではこうした事実を日本人よりも海外の人々の方がより認識している現実がある。このままでいいのだろうか。今このタイミングで、日本人自身が日本固有の歴史や文化等の魅力を再確認するとともに、その多面的な魅力に加えて、潜在的な価値等についても再発掘することは、それほど馬鹿げたことではないと思うのは私だけであろうか。
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