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2024-11-15 18:34

(連載1)セブンのMBO提案に思うこと

岡本 裕明 海外事業経営者
 セブン&アイへのカナダ、アリマンタシォン クシュタール社による買収提案で現在その提案額は約7兆円まで引き上げられ、セブンの第三者委員会で検討中とされていました。そこに創業家の伊藤興業とセブンの副社長である伊藤順朗代表取締役副社長からMBOが提案されました。その金額9兆円。正直、この提案は頂けません。成立する可能性も微妙です。クシュタール社より買収提案があった際、私はセブンへの取引関係から三井物産が白馬の騎士になることがあり得るかもしれない、と申し上げたのですが、その後、物産のCFOが同社の成長のための資金枠が5兆円程度と述べていたのでこれで物産の線は消えたなとみていました。今回、その代わり、伊藤忠との組み合わせで買収シンジケーションを組成するという話です。

 私がこの提案にネガティブなのは買収そのものが伊藤家の欲求を満足させる以外の何物でもなく、セブンというグループ全体の利益につながるとは思えないのです。クシュタール社が7兆円に買収金額を引き上げた後も株価はそれにさや寄せすることなく、買収額の2割ほど低い金額で推移していました。これはTOBを企てたケースとしては珍しいのですが、その解釈は2つあり、一つはクシュタール社による買収は非現実的と取ったか、セブンの現在の企業価値はどう見てもそれほどない、とみるかであります。クシュタール社が買収するなら企業価値に株価がリンクする必要はないのでたぶん、実現性に疑問視をつけていたのでしょう。

 ところが11月13日、MBOを発表した時、株価は急騰しました。日本チームによる買収なら可能性があるのだろうと市場は見たわけです。しかし、私が指摘したいのはセブンの経営陣による経営能力は正直、革新的なことは期待できないのです。鈴木敏文氏が率いた頃のセブンは破竹の勢いとコンビニ戦争による圧倒的強みを見せました。また先駆者利益も大いにあったと思います。ただ、企業戦略には栄枯盛衰があり、鈴木氏の戦略であったエリアを絞って集中的出店を図るドミナント戦略の賞味期限はそもそも長いものではありません。せいぜい10年ぐらいでその間に次の戦略を打ち出し、更に高いレベルに磨き上げることでドミナント戦略の趣旨である地域要塞型ビジネスを圧倒的なレベルにすることが可能でした。が、現経営陣にバトンが渡された時点でそれは継続されず、むしろドミナント戦略は今となっては負の遺産となりかねない状況にあるのです。

 私がクシュタール社に期待したのは日本的なビジネス思想は同社にはないのでセブンのコアとなる日本独特のサービス提供についてはセブンの現状から大きく変えることなく、むしろ、アメリカのコンビニ事業の刷新、及び、サークルKやクシュタールなどのブランドネームを業態ごとにブランド化し、それぞれ特徴あるコンビニの売り場形態にすることにありました。(つづく)



 
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