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2007-11-03 10:31

連載投稿(2)プーチン後の予見可能性の高まり

須藤繁  シンクタンク研究員
 現在、ロシアでは社会的格差、地域間格差が拡大しており、それらの解決が経済政策上の課題である。また、主要都市を除いては、概して人口は減少傾向にあり、少子化対策も課題である。ただし、2007年10月8日開催の閣議において、メドベージェフ第一副首相は、人口問題に関するプーチン大統領の質問に答え、「出生率はここ15年間で最高の数値を示している。これは大統領が始めた人口政策が有効であることを示している。特に喜ぶべきことは、この傾向が一時的なものでなく、ロシア全土でみられることである。特にロシア中央地域では人口が増加している。これらの数値は、2025年までに予想されている人口問題プログラムが成功裏に進捗していることを示している」と報告していたことが注目された。

 また、視点を変えると、経済の活況地域(モスクワ、サンクトペテルブルグ等)の人口は増加しており、人口減対策は経済の活性化、地域間格差の是正といった経済政策の成否に帰着する問題であるともいえる。その点から重要なことは、投資が十分に行なわれているか、十分な資本形成が行なわれているかという点である。現在のロシアの資本形成は依然20%程であり、現在の中国や60~70年代の日本に比べれば、依然低い水準にある。この点からは、資金がきちんと投資に回っているか、効率的な経済運営が行なわれているか、あるいはプロジェクト形成がなされているかが重要である。

 これまで、ロシア経済の評価に関しては、予見可能性の欠如が大きな問題であったが、9月の首相交代や「統一ロシア」党大会でのプーチン大統領の「2008年3月に首相になるのも一つの選択肢である」との発言は、予見可能性の高まりという点で大きな意味をもつといえよう。プーチン大統領の2008年以後の政治への関与表明は、ロシアにこれまで存在していた予見可能性の欠如というリスク要因をある程度払拭するものになると評価される。

 今年9月の「統一ロシア」党大会で、プーチン大統領は、場内からの質問に答える形で、上記発言を行なった。このことは、2008年以後も自分が現役で居続けることを初めて表明したという点で重要である。それまで取りざたされていた憲法改正による大統領三選の観測を明確に否定したが、後継者へ影響力を残すことを明確にしたのみならず、2012年、又はその後の大統領選への再登場の意思を示唆した。2012年に再登場の可能性が大きいとの見方が多いが、2014年のソチ五輪への思い入れの強さからも、それは裏付けられているといえよう。それらを含めて、ロシア経済の予見可能性は著しく高まったといえよう。(おわり)
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