国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2025-06-14 14:17

(連載1)自衛隊が長距離射程のミサイルを開発しても安心できない理由

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 中谷防衛大臣が2025年5月23日に静岡県の陸上自衛隊富士駐屯地を視察した際に、島嶼防衛用高速滑空弾、共通戦術装輪車(偵察戦闘型)、24式機動120mm迫撃砲の3種類の最新装備が展示された、との報道があった。敵の攻撃権の外から撃つことのできるミサイルのことを「スタンドオフミサイル」という。ちなみに、太平洋におけるマリアナ沖海戦では、小沢治三郎連合艦隊司令長官は「アウトレンジ」という単語を使ったが、現在ではこれは使わないようである。
 
 スタンドオフミサイルとは、敵の防空システム圏外から攻撃できるミサイルのことで、具体的には、敵の対空ミサイルの射程圏外から発射可能なミサイルであり、通常、攻撃作戦で陸上や海上の目標に対して使用される。この「スタンドオフ」とは「離れている」という意味で、発射元が敵の防空システムから離れた安全な場所で攻撃できることを指す。つまり敵の攻撃範囲外から攻撃を仕掛けるので自衛隊員の安全を確保しつつ、自衛隊機が敵の脅威圏外から対処できるようにすることで、我が国を有効に防衛することができるとされている。
 
 今回の記事によると、島嶼(とうしょ)防衛用高速滑空弾、共通戦術装輪車(偵察戦闘型)、24式機動120mm迫撃砲の3種類の装備が展示されたという。実はこれはかなり画期的なことである。当然に「敵が攻撃する前に攻撃をすることができる」ということは、当然にここにあるように自衛官の命を守ることができることになる。しかし、当初自衛隊や防衛省は「敵が攻撃してくる前に攻撃を行うことは専守防衛(憲法9条)に抵触する可能性がある」として開発されなかった。その内容が開発されるようになったのは、かなり最近の事であり、20世紀の間は全くそれらの研究もされていなかったということである。ちなみに、一部そのような内容を研究していた形跡はあるが、いずれも公式的なものではないということになる。
 
 このスタンドオフ装備に関しては、様々な問題がある。基本的には島嶼防衛ということは、敵が船や飛行機ということになる。それらは動いているということになるので、当然に、その動きを予想して着弾迄の時間を計算しなければならない。つまり当然に命中率は下がるということになる。では、その命中率が下がった場合の弾薬の補充はしっかりとできるのかということが最も大きな課題になる。つまり島嶼部における弾薬の供給がどれくらいしっかりとできるのかということが非常に大きな問題になる。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム