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2007-11-19 15:24

中国外交学会の国際シンポジウムに出席して

大河原良雄  グローバル・フォーラム代表世話人
 中国の外交学会が関係の国際問題研究機関と共催する「中国の平和的発展と調和ある世界」を主題とする国際シンポジウムが11月8、9両日北京で開催された。唐家璇国務委員は会議開会式の基調演説において「調和した世界の構築の推進は、重要な戦略思想、重要理念であり、永続的平和、共同の繁栄、人と自然の調和を内容とする」と強調した。又、昼食会に招かれて基調講演を行ったドイツのシュレーダー前首相は中独関係の推進を主題として講演した。会議には米国のRoy、ロシアのRogachev及び韓国の鄭鍾旭各元駐中国大使が招かれ、日本からは加藤紘一衆議院議員と天児叡早稲田大学教授のほか、私もパネリストとして出席した。中国の第17回共産党大会終了直後であったので、中国政府が新しい態勢の下に内政・外交上の諸課題に如何に対処するか、に外国からの参加者の関心が向けられていた。

 全部で5セッションが開催されたが、私が特に注意を引かされたのは、次の3つの報告であった。すなわち、Roy元米国駐中国大使は「中国の経済的発展が軍事的膨張に繋がってはならない。日本、中国が民族主義的競争に陥るのを避けるべきである。中国、日本及び米国の三国間関係の進展をはかることが重要である。アジア共同体結成の動きが大国間の対立関係を招来することがあってはならない」、Rogachev元ロシア駐中国大使は「世界の新秩序構築の為には国連の役割を高め、国際法の尊重をはかるべきである。ロシア、中国及びインドの連携関係を深める必要がある。上海協力機構(SCO)の機能強化をはかるべきである」、鄭元韓国駐中国大使は「中国は韓国にとって最大の貿易(1189億ドル)及び投資(19.5億ドル)の相手国であり、年間480万人が中国を訪問し、4万社が企業進出し、7万人が留学している。韓国人は米国より中国に信頼感を持ち、同盟国に近いパートナー視している。30歳代及び40歳代の約50%が中国を密接なパートナー視している。米国については夫々21%及び26%である。中国にとり朝鮮半島の平和と安定は重大関心事であり、従って他の大国の支配的関与を排し、現状維持をはかる。韓国では中国を新しい地域秩序の積極的推進者と捉えている」と述べていた。

 小泉政権当時、主として靖国問題が障害となって日中関係は約5年間氷河時代ともいうべき膠着状態が続いた。然し昨年10月の安部首相の訪中と今年4月の温家宝中国首相の訪日により、日中間に「戦略的互恵関係」の推進が合意され、日中間の氷が砕かれ、更には融解が始まったとされる。今回、北京におけるシンポジウム出席の際の中国関係者との接触においても、中国側識者は党大会の規約改正によって採択された「科学的発展観」に基づき、平和的発展と調和ある世界という政策を推進すべきであるとし、日本に対しても新しい観点に立って友好協力の政策を進めようとしているものと観察された。2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博という大事業を控える中国と、環境その他多くの分野での協力を求められているこの時にこそ、中長期的視野に立って中国と積極的な交流を図っていくべきものと思う。
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