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2026-03-13 19:44

(連載1)中国共産党は全人代で「台湾統一」を推進すると強調している

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 3月5日から始まっている中国の最高意思決定機関と言いながらも、もう片方では「決まったことを発表し、集団で集団の責任にする会議体」とされている全人代、全国人民代表者会議が行われ、その中で「台湾の独立」や「民族の統一」ということを強く強調したことが話題になっています。実際にアメリカがイランと戦争状態になっている状態での台湾有事は、さすがに日本もかなり大きな被害が出てしまいますので、これからの中国の動きには、どうしても神経質になってしまいます。そのような意味でこの内容を注目したいと思います。
 
 現在の中国における政治的な動き、特に全人代(全国人民代表大会)で示された方針は、周辺国にとっても非常に重みのある、そして懸念を抱かざるを得ない内容へと変貌しています。李強首相が政府活動報告において、これまでの「反対」から一歩踏み込み「断固として打撃を与える」という言葉を選択したことは、単なる言葉のあやではありません。中国共産党にとって、言葉の選定は政策の優先順位と覚悟を対外的に示す最重要のシグナルです。これまでの「反対」が現状維持を妨げる動きを牽制するニュアンスだったのに対し、「打撃」という表現は、具体的な行動、それが法的手段であれ、軍事的な威圧であれ、を辞さないという積極的な攻撃性を含んでいます。特に2030年までの経済運営を定める「第15次5カ年計画」において中台関係の「主導権」を握ると明記した点は、中国がもはや米欧や台湾の動向に反応する側ではなく、自らのタイムスケジュールで事態を動かす「仕掛け人」になるという宣言に他なりません。
 
 この強硬姿勢の裏付けとして注目すべきが、国内における「リーガル・ウェポン(法的武器)」の構築です。新設される「民族団結進歩促進法案」は、一見すると国内の調和を目的としているように見えますが、その本質は新疆ウイグル自治区やチベットなどでの少数民族政策に対する国際的な干渉を遮断するための巨大な防壁です。第10条に盛り込まれた「外部勢力の干渉を受けない」という文言は、人権問題というカードを使って中国を批判する欧米諸国の動きを、中国国内法によって「犯罪行為」や「浸透工作」と定義し直すものです。これにより、中国当局は「法に基づいた統治」という建前を維持しながら、批判者を法的に訴追したり、国内の引き締めを正当化したりすることが可能になります。 軍の粛清についても、非常に重要な視点をご指摘されています。近年のロケット軍幹部の交代や国防相の解任といった一連の動きは、単なる汚職への対処というよりは、習近平国家主席への絶対的な忠誠心を持つ組織への作り替えと見るのが妥当でしょう。もし武力統一という極めてリスクの高い決断を下すのであれば、軍内部に迷いや反対意見を持つ勢力が残っていることは致命傷になります。つまり、これらの一連の「掃除」は、最高指導部がボタンを押した瞬間に、軍が迷いなく、かつ迅速に動くための「研ぎ澄まされた刃」を作るプロセスであると考えられます。
 
 さらに、日本の南西諸島に関する懸念についても、地政学的な文脈から切り離すことはできません。台湾統一を目指す軍事作戦において、台湾の目と鼻の先に位置する与那国島や石垣島、宮古島といった南西諸島は、中国軍から見れば「米軍や自衛隊の介入を阻むための障壁」であり、同時に「作戦を妨害する拠点」でもあります。中国が台湾を「主導権」を持って併合しようとする際、これらの島々を無効化、あるいは一時的に占拠して防衛ラインを構築することは、軍事戦略上のセオリーになり得ます。「併合」という形をとるかどうかは別として、台湾海峡での有事が日本の一部を巻き込む軍事的な必然性を伴っている点は、現在の日本の防衛政策の転換にも大きく影響しています。このように、2026年の全人代で見られた変化は、思想・法・軍・戦略のすべてが「一つの目的」に向かって収束し始めていることを示唆しています。それは単なる憶測を超え、中国という国家が「現状維持」から「現状変更」へと明確に舵を切った、歴史的な転換点として記録されるかもしれません。(つづく)
 
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