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2007-12-20 16:25

外交の場で日本産品をPRする意義

西川恵  ジャーナリスト
 一見、些細なことだが、外交の場におけるもてなしという意味で、いま面白い動きが出ている。今年12月、世界各国の日本大使公邸で開かれた天皇誕生日レセプションで、試験的に日本産ワインが振舞われたが、これが予想以上の反響を呼んだ。来年から他公館に広げるが、外務省は大使公邸に日本産ワインを常備し、大人数のレセプションだけでなく食事会のときにも供する動きも出ている。これまで日本大使公邸のレセプション、食事会では、現地で調達しやすい外国産ワインを使ってきた。ただ日本産ワインのレベルが向上したこともあって、今年の天皇誕生日レセプションで試験的にカンボジア、ラオス、マレーシア、ガボン、コンゴの5公館で日本ワインだけを出した。昨年の国産ワイン・コンクールで入賞した中から、白2種類、赤1種類の計3種類、5公館合わせて44ケース、528本を送った。1公館あたり100本前後だ。

 カンボジアの日本大使公邸では今月7日、レセプションが開かれた。篠原勝弘大使があいさつの中で「皆さんのグラスに注がれたのは日本のワインです」と紹介すると驚きの声が上がり、約400人の招待者はワインのコーナーに殺到した。15年前、日本で勤務した駐カンボジアの欧州連合(EU)代表は「当時、日本ワインは値段が高く、品質もよくなかった。ここまで素晴らしくなったことに驚いた」と述べ、カンボジアの政府要人は「これはどこで買えるのか」と日本の外交官を質問攻めにした。旧ポル・ポト政権時代の大虐殺を裁く特別法廷のフランス人予審判事は「ワイン好きの私から見ても素晴らしい。このワインを飲むためだけに日本大使公邸に招かれる価値がある」と語った。豪州の外交官は「今年最大の驚き」と評した。いまアジアの12カ国でワインが造られているが、アジア各国と日本の「国産ワイン」の違いは、多くの国が外国人に醸造や経営を任せているのに対し、日本では日本人技術者が試行錯誤を経ながらゼロから作ってきたことだ。日本ワインはものづくりにかける日本人の情熱の結晶である。評判に手ごたえを得て、カンボジアの日本大使公邸では日本産ワインを常備し、少人数の食事会でも出すことに決めた。

 たかがワインだが、外交の場でも活用次第で大きな展開を期待できる。日本人のものづくりへの情熱や、ワインが作られる地域など、日本人や日本社会の紹介に使え、食卓の格好の話題になる。なににも増して、レセプションでは必ず自国産ワインを出すフランス、イタリア、カナダ、オーストラリア、米国に伍して、日本も誇るべき国産ワインをもっていることを味覚に肥えた人々にアピールし、そのレベルの高さを広く知ってもらうことができる。すでに世界で高い評価を得ている日本料理との二人三脚で、日本料理に合うワインとして輸出も見込めるようになるだろう。日本の食文化のPRという点で、国産ワインを日本大使公邸で出しはじめたことの意味は小さくないのである。
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