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2007-12-25 16:21

温暖化対策をめぐる国際政治上の駆け引き

鈴木馨祐  衆議院議員
 バリ島で行なわれていたCOP13が閉幕した。ポスト京都議定書、つまり京都議定書の期間後である2013年以降の温室効果ガス削減のスキームの議論が本格的に幕を開けたといっていいだろう。結局成果文書は最後の段階で数値目標を盛り込まずに「玉虫色の決着」と相成ったわけであるが、詳細は報道に譲るとして、一つ注目すべき論点を提示したい。

 それは温室効果ガス削減の基準年についてである。そもそも、温室効果ガス排出量の総量規制を行なうにしても、エネルギー効率という「質」の面での規制を行なうにしても、考え方としてある基準年と比較して○%削減という考え方もあれば、絶対値をどこどこまで削減するという考え方も存在する。ことの是非はともかくとして、京都議定書、そして今回の議論でも基準年を設定して削減幅を決めるという議論がなされている。もちろんそのこと自体に問題があるというのが私の立場であるが、仮にそのような議論になるとしても、京都議定書以来頻繁に引用されている「1990年時点」というこの設定は大いに疑問があるものだといわざるを得ない。

 1990年というのは何の年かといえば、東ドイツが西ドイツと統合されるなどまさに東西ヨーロッパが一緒になり始めたタイミングだ。そしてそのことが今回の温室効果ガス削減においてどんな意味を持つかといえば、ヨーロッパ全体としては、1990年時点の数値を基準としている限りは、エネルギー効率の悪い東ヨーロッパの削り代で「食べていける」ということに他ならない。ヨーロッパ諸国が1990年比の高い数値目標を掲げあたかも環境先進国で環境規制に熱心であるかのように見えながら、その実日本よりもはるかにエネルギー効率が低いレベルに留まっているという事実こそが、そのことを如実に表しているといえないだろうか。

 実は先日のAPECの首脳レベルで採択した「シドニー宣言」における温暖化対策の努力目標では2005年時点が基準年となっていたり、今回のCOP13でも長期目標の基準年は2000年となっている。1990年時点という基準年をポスト京都でも路襲することの意義は全くないし、国際政治的な駆け引きでエネルギー効率の水準が世界のトップにある日本だけがバカを見るような結論が出ることはないように、日本としてはきちんと交渉に臨むべきであろう。
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