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2007-12-29 22:19

連載投稿(2)北方領土問題とは何か(2)

茂田 宏  元在イスラエル大使
 8月10日の会談で、マリク駐日ソ連大使は参戦の理由として「日本がポツダム宣言を拒否した」ことをあげたのに対し、東郷外相は「どこからそういうことを聞いたのか。日本は天皇の統治大権に変更がないとの了解のもとで、ポツダム宣言を受諾すると既に連合国側に回答した。あなたからもしっかりロシア政府に伝えて欲しい」と述べた。満州の現地では、ソ連軍の侵攻により婦女子を含む市民も被害を受けた。その上、ソ連は約60万の日本軍人を捕虜としてシベリアに連行した。これは、ポツダム宣言第9項の「日本国軍隊は、各自の家庭に復帰し、平和的かつ生産的の生活を営む機会を与えられる」との条項に対する明白な違反であった。
 
 8月14日、日本は連合国側の回答を踏まえ、最終的にポツダム宣言の受諾を連合国側に通告した。8月15日には天皇の終戦の詔勅がラジオで放送された。各地にいる日本軍には連合国軍への降伏が命じられた。しかし、スターリンは戦闘を止めなかった。8月9日から1週間も経っていないのであるから、8月15日現在千島にはソ連兵は1兵もいなかった。千島の最北の島、占守島に赤軍が来たのは8月18日である。その後、樺太では日本軍の白旗を掲げた停戦交渉のための軍使を射殺し、戦闘を継続するなどしながら、8月の終わりから9月の始めまでに歯舞までの諸島を占領した。8月16日、スターリンはトルーマンに対して釧路と留萌を結ぶ線(両市を含む)から北の北海道をソ連の占領地にすることを要求した。トルーマンがそれを断ったのに対して、スターリンは不平を述べている。

 9月2日、スターリンは日本に対する「戦勝」記念の演説をしたが、そこで「1904年の日露戦争でのロシア軍隊の敗北は、国民の意識に重苦しい思い出を残した。この敗北はわが国に汚点を印した。わが国民は日本が粉砕され、汚点が一掃される日が来ることを信じ、そして待っていた。・・・そしてここにその日が訪れた。・・・このことは、南樺太と千島列島がソ連に移る・・・ことを意味する。」と述べた。日露戦争への報復と領土の獲得が戦争の目的であったことを明確に述べている。これは火事場泥棒的侵略戦争である。私は、ロシア史の汚点を消すのではなく、更なる汚点を付け加えたものであると考えている。(つづく)
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