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2007-12-30 00:35

連載投稿(3)北方領土問題とは何か(3)

茂田 宏  元在イスラエル大使
 私は、スターリンが日本に対して行った不正を日本国民は決して忘れてはならないと考えている。自らが被害者である不正を正すことが出来ない国に、国際社会での正義を説く資格はない。そういう意味でこの問題は、不正を正す問題、正義を回復する問題であり、かつ日本国のあり方の根本に係わる問題である。1993年の東京宣言が「法と正義」に基づいてこの問題を解決すると書いているのは、このためである。

 「北方領土折半」論や「3島返還」論など色々な案が出されているが、物事の本質を考えると、こういう妥協案は考慮に値しない。日本は占領された領土のすべてを返還するように要求してもいいが、諸現実を考慮し、択捉、国後、色丹、歯舞という固有の領土に絞って返還を要求している。この4島の返還だけでロシアと平和条約を結んでもいいと申し出ている。これ以上の妥協などありえない。ソ連、ロシアはこの領土を保有する権利をまったくもたない。千島全体についてもない。ロシアが力だけで押してきている問題である。自分が当事国でもないサンフランシスコ条約の規定をロシアが援用することがあるが、北方領土の併合は1946年に行われたのであって、サンフランシスコ条約の発効は1952年である。

 ロシアが4島を返還をする見込みはないから、私のような態度ではこの問題はいつまでも解決しないのではないかと言う人がいる。私の考えでは、解決しないのであれば、それでよい、日本がこのような力だけに基づくロシアの領有を正義の回復の立場から認められないと主張し続けることと、明白な不正義を不問に付し、力に屈服して、安易な妥協をすることの利害得失を考えると、前者がずっと望ましい。4島なしで日本は十分繁栄出来ることは証明済みである。その憲法第9条で「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する」としている日本が、安易に妥協するのは、憲法違反ですらある。時期が来れば、ロシア人もスターリンの遺産を後生大事にすること、他人の財産である土地や家を法的根拠もなしに占拠していることが恥ずかしくなることであろう。

 東郷和彦元外務省欧亜局長が『北方領土交渉秘録』と言う本を書いているし、『4でもゼロでも2でもなく』と言う本を書いている大学教授もいる。頑張ってよく書いているとは思うが、これらの本がこの問題の本質を突いているかというと、そうではない。周辺のことを述べているに過ぎない。なお、森総理は、総理の頃プーチンに「日本国民が国後、択捉を諦めることは絶対にない」と述べたとされている。それでよい。(終わり)
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