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2008-01-12 11:30

地球温暖化と過剰流動性に共通するもの

古屋 力  会社員
 いま我らが地球をすざまじい勢いで急激に被いつつある脅威が2つある。1つは「地球温暖化」、1つは「過剰流動性」である。前者は「温暖化ガス」が、後者は「国際通貨」が主役である。この2つの脅威には共通点が幾つかある。そのことを指摘しながら、解決策の手がかりを探ってみたい。
 
 まず、1つ目の共通点は、環境も国際金融もどちらも「グロ-バル」である点である。いま我々の吐いた二酸化炭素は1週間で地球を一周する。3日で地球の裏側まで達するのである。また、年初のドル安円高もそうである。米国の雇用統計の公表が瞬時に世界中のマーケットに影響を与え、その結果、今年の年初は円高で始まった。国際通貨の価値評価は、自国の事情ではない様々な他律的な事情で、あたかも常に係数が変化している複雑な連立方程式の解のように変動する性質を持っている。この重要な共通点は、両者とも地球的規模で問題となっていること、その対応には世界的な視座でコンセンサスが必要であることを意味している。

 また、2つ目の共通点は、両者とも人々の人生に、さらに言うなれば子孫の運命にまで直接的に影響を与えることである。しかも、お互いの行動がお互いの運命に影響を与える避けがたい因果関係がある。閉じた地球という球体の中の出来事である。運命共同体なのである。お互い様ではあるが、それだけに人類の英知を結集させ、すこしでもお互いに不幸にならないような工夫が必要である。人類は同じ船に乗っているのである。この両者は、自分さえ良ければ好いという虫の好い行動が許されないことを示している。

 3つ目の共通点は、どちらも、共通の尺度を持っていることである。前者の温暖化ガスは、全て二酸化炭素に換算でき、CO2t(あるいは t-CO2)で表記できる。ロンドンでもダッカでもリマでも二酸化炭素に変わりはなく、1CO2tは、1CO2tである。後者は、世界の誰もが言語は違っていても、経済生活をしてゆく上で係わり合いのある通貨自体の価値は同じである。レイキャビックでもワシントンでも東京でも1ドルは1ドルである。

 過剰流動性は、昨今のサブプライム問題や1997年のアジア通貨危機等のように、そこから派生した投機の動きと共に、多くの問題を引き起こしている。有り余ったお金が過剰流動性となって世界経済を混乱に陥れているのである。この国際金融における古くて新しい過剰流動性問題は、ブレトン・ウッズ体制発足後の1971年8月のニクソン・ショックを経て今日に至るまで、国際通貨体制の仕組みの中で一種の持病のように通底してきた問題である。未解決のまま放置されてきた弊害として、いまや問題が表出しつつある。こうした危険を内包しながら急激に拡大を続けてきている国際通貨の風景は、急激な地球温暖化を加速させている温暖化ガスの増加の風景にどこかしら似ている。

 かつて英国の名宰相ウイストン・チャーチルは「民主主義は最悪の仕組みであるが、これ以上の良い仕組みがないので、致し方なく採用している」と喝破した。この箴言は、いみじくも現在の国際通貨体制にも地球温暖化にも当てはまるであろう。どちらにも共通して言えることは、我々にとって国家間でかけ引きをしている時間的猶予はもはやない、ということである。よく問題提起や対応策自体を批判する人がいる。制度の批判はいいが、批判をする者は批判するだけでなく、自分でもそれを凌駕する代案を提案すべきである。いまは神学論争をしている暇はないのである。気付いたときから行動に移す必要がある。そして、一国だけではどうにもならない問題であること、さらには、真にグローバルな協働と協調によってしか解決の糸口の見出せない問題であることを、自分の問題として深刻に認識するべきである。両者とも、その解決には、大局観と実現力が必要である。この両者の問題に「対岸の火事」は存在しない。なぜならば、全てはこちら側の岸辺で起こっている火事だからである。そんな文脈の中で、今年の7月に世界の注目する洞爺湖サミットが開催される。もちろん議長国は日本である。
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