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2008-04-05 02:18

ムードに流される地球温暖化対策の危険

木下 博生  全国中小企業情報促進センター参与
 今年に入ってから日本国内では、マスコミを含めて、地球温暖化対策に積極的に取り組むべきだとの声が急速に高まっている。日本が議長国になって、サミットが洞爺湖で開かれることになり、その中心テーマが地球温暖化になったということが響いているようだ。議長国だから成果を上げる必要があり、具体的な対策を合意し、日本自身も率先してこれを実行する姿勢を示すべきだ、との意見に皆が乗せられているのである。

 炭酸ガスなどの温室効果ガスの排出が地球温暖化の原因であるとの理屈は一応認めるにしても、京都議定書で取り決めたようにガスの排出を削減するのは、およそ不可能なことなのだ。だからこそアメリカは脱退した。京都議定書は日本で調印されたから、その時の日本代表は強く日本の主張をしなかったに違いない。1990年を基準に、2012年までに温室効果ガスの排出量を日本は6%削減することを約束した。

 この議定書には、いくつかの問題がある。一つは90年を基準年にしたことだ。この年は東ヨーロッパの社会主義体制が崩壊した時期にあたり、それまではこれら地域の発電所や工場は、効率が悪く、石炭や石油を公害対策もせず無駄に燃やしていた。そのときすでに日本は、省エネや公害対策を徹底的に進めていたのである。そういう地域を含めたヨーロッパ諸国の削減目標が8%で、日本より2%多いだけというのは、全くおかしい。今頃になってそのおかしさに気付き、日本は新しい公平な負担案を提案しているようだが、本当は京都議定書のときに本気で議論すべきだったのである。

 次は、より基本的な問題である。経済成長を続けながら炭酸ガスなどの排出量を削減することは、実際上可能なことであろうか。経済活動にはエネルギーが要る。石油、天然ガス、石炭など、燃やせば必ず炭酸ガスが出る化石燃料を主要なエネルギー源としている人類が、原子力など他のエネルギー源に大きく転換することは、そう簡単なことではない。森林だらけの地球になれば炭酸ガスは吸収されるだろうが、そうならない限り、排出されたガスを大量かつ効果的に閉じ込めることができる技術は、まず見付からないであろう。世界の人口が減り、経済成長がマイナスになるなら可能だ。また、化石燃料が枯渇する時代になったら、燃やして出るガスも減るであろう。排出権取引などの小手先の対策は、全く意味がないとは言わないが、目立った効果には結びつかないと考える。こういう問題をムードで議論することに、どのくらいの意義があるだろうか。
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