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2008-04-07 08:01

小沢“八方破れ政権”の実現度

杉浦正章  政治評論家
 いやはや、春で朧で勝利の美酒だ。音羽御殿でガソリン値下げ成功の祝杯を挙げた民主党代表代行の菅直人は「小沢政権を満開に咲かせたい」と気勢を上げた。確かにこのままだと八方破れながら“小沢一郎政権”も机上の空論ではなくなるかもしれない。特に党首が福田康夫対小沢一郎の選挙だと、ひょっとするとひょっとする。福田内閣の支持率激減を見ると、7日で民主党代表就任2年となる小沢が政権を取る可能性を馬鹿には出来ないのである。毎日新聞の調査では、福田支持は24%で、昨年9月の政権発足時以来最低を更新。産経新聞の調査による「日本の首相にふさわしい人物」では福田6%に対し、小沢11.4%と倍近い差だ。小選挙区制では、党首の人気が選挙情勢を圧倒的に左右する傾向がある。小沢は6日のNHKの番組で「小選挙区300議席のうち、150議席以上を何が何でも達成したい。比例はついてくる。これで野党は過半数をとれる」と、大変な意気込みを示した。確かに今ガソリン選挙に持ち込めば、これも夢ではないかもしれない。

 しかし、「小沢政権」をシュミレーションしてみると、矛盾撞着山積である。小沢は政治家と言うより、前から言っているように革命家だ。まず、体質に革命家に不可欠の“打ち壊し”の精神が染みついている。同じく「自民党を壊す」と宣言した小泉は、壊すふりをして再生させた。これが“政治”だ。小沢は、壊すこと自体が目的の“壊し屋”である。小沢の“壊しの歴史”をみると、まず自ら率いた新生党も加わった細川護煕非自民連立政権を作って、壊した。ついで新進党を結成して、空中分解させた。自由党を率いて今度は自民党と手を組むが、自由党は内部分裂、後に保守党となる政権残留グループと袂を分かつ。自由党残党を率いて2003年に民主党と合併したが、昨年は福田との大連立に動き、これもすんでのところで壊しにかかった。小沢は壊すのである。人間関係も側近や、記者がうるさくなって、一定期間を過ぎると切る。おそらく大接近している国対委員長・山岡賢次もやがては切られるであろう。

 外交・内政も全く場当たりの政策である。対米重視を唱えながら、テロ特措法問題では、教条的に憲法違反とする反対姿勢をとり続け、駐日米大使シーファーを激怒させた。同大使は「テロ特措法問題は小沢が癌」と大統領に報告したといわれる。「小沢首相」では日米安全保障関係が成り立たない可能性がある。対中関係も、言っていることに整合性がない。発言から判断すると焦点の靖国問題では、靖国を参拝しても対中関係を良好に維持できることになる。その内容はつまびらかではない。あるなら提示しなければ、口から出任せとしか思えない。内政では、ガソリン値上げという目先の利益で大衆を釣る。まさににんじんをぶら下げて大衆を扇動する革命家の手口だ。新聞の大勢が社説で「再引き上げ」を主張する中、これを無視するように音羽御殿の花見で「勝利の祝杯」を挙げる。小沢には「ガソリン値下げ成功」という短絡した政治判断しか思い浮かばないようだ。国家財政など眼中にない。

 首相に不可欠の官僚対策では、日銀人事で財務省を完全に敵に回した。厚生労働省、防衛省、国土交通省なども敵に回している。政権を取っても、面従腹背の仕打ちを受けるのは目に見えている。官邸のリーダーシップは発揮できまい。もっとも小沢には米国の政権交代が念頭にあるようだ。米国では政権が変わると4,5万人が移動する。霞ヶ関に“粛正”の嵐が吹きすさぶかもしれない。心臓に持病を抱える小沢は、医師の指示に従い、日ごろ昼の休憩を欠かさない。だから衆院本会議も欠席する。首相の激務に耐えられるか疑問だ。大平正芳のように激務が原因の心臓発作も十分考えられる。まさに八方破れだが、それでも“小沢政権”に突っ走る民主党を、政府・与党がいかにして阻止するかだ。福田が党首では至難の業かもしれない。「けんか」のやりかたは、小沢が一枚も二枚も上手だ。政治家には持って生まれた素質があり、福田は激動期の首相としては最も不適任なタイプかもしれない。まずあり得ないが、福田が奇跡の支持率回復をするか、自民党が福田以外に党首を求めるか。それしか勝てまい。
 
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