国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-04-10 00:02

日本評価の内外格差

小笠原高雪  山梨学院大学教授
 英国のBBCが毎年おこなっている国際世論調査の最新結果によると、日本が世界に対し主として「良い影響(positive influence)」を与えているという答は、ドイツのそれと並ぶ56%で、主として「悪い影響(negative influence)」を与えているという答の21%を大きく上回っている。「良い影響」から「悪い影響」を差し引いた結果によって順位をつけると、ドイツ(+38)、日本(+35)、欧州連合(+31)、フランス(+26)、英国(+26)が上位五傑となっている。

 これに対し、米国が「良い影響」を与えているという答は35%で、前年の31%から若干回復したが、「悪い影響」が依然として47%もあり、苦戦している。調査は理由を尋ねていないので、正確なことはわからないが、この結果はイラク戦争のマイナス・イメージとおそらく無関係ではないであろう。ちなみに日米間でみると、米国人の70%が日本は「良い影響」を与えていると答えているのに、米国が「良い影響」を与えていると答えた日本人は21%にとどまっている。後者は中国人の38%よりも低い数字である。

 日本のイメージが上位であるのは、まずは慶賀するべきことであるが、興味深いことに、日本人自身のなかで、日本が「良い影響」を与えていると答えた人は、36%にとどまっている。外国人による評価よりも自国民の評価のほうが低い国は多くない。実際、平均値が35%の米国に関しては、米国人は56%が「良い影響」を与えていると答えているし、同じく42%の中国に関しても、中国人のじつに90%が「良い影響」を与えていると答えている。

 日本人の自国評価の低さは、日本人の「控え目」な性格と関係があるのだろうか? たしかに、伝統的な日本の文化のなかでは、自分のことを誇らしげに語ることは立派なこととはされていない。あるいは、これは日本人の「反省好き」と関係があるのだろうか。実際、外国人が日本論を書くときは、日本の長所を指摘するより、短所を指摘したほうが本が売れる、というのが昔からの通り相場であるようだ。

 「控え目」も「反省好き」も悪いことでは決してないが、それも行きすぎるべきではない。「日本の経済援助は途上国で歓迎されていない」とか、「自衛隊の海外派遣は各地で不安を引き起こしている」とかの風説がある。そうしたケースも皆無であるとは思わないが、もしそれが世界の大勢であったならば、上述のような調査結果は決して出ないはずである。自国の政策の良い面を正しく認識できなければ、それを続けることも困難になるであろう。なお、調査結果の詳細に関心のある向きは、下記を参照されたい。
 http://news.bbc.co.uk/2/shared/bsp/hi/pdfs/02_04_08_globalview.pdf
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム