国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-04-30 08:00

官僚任せで自滅する自民党

杉浦正章  政治評論家
 とにかく“敵失”だけで選挙に勝つのだから、民主党は楽な政党だ。敵は、自分で落とし穴を掘って、自分で落ちてくれる。この調子では、幸運の女神は、小沢一郎にほほ笑み続けるに違いない。2度あることは3度ある。総選挙でも期待していいのではないか。参院選挙も、山口補選も、戦後史上まれに見る失政が招いた結果である。参院選は言うまでもなく、「消えた年金」問題だった。歴代自民党政権が国民の生命・財産を左右する極めて重要な問題を、厚労省の官僚任せにしてきたツケだ。

 後期高齢者医療制度も、毎週の新聞の短歌欄を見てみるがよい。老いの嘆きであふれている。「差別」とか、「姥捨」とか、「見捨てられた」とか、極めて情緒的表現がなされている。これが地殻変動とも言える高齢者の自民党離れを巻き起こしている。情緒的であるが故に、根が深く、小手先の制度改善程度で、いったん離れた支持層が戻ることはあり得ない。2か月おきの年金天引きのたびに、恨みは復活する。これも、大局が見えない官僚の立てた“論理”の上で、政治が踊ったツケだ。マスコミも、とりわけ厚労省担当記者が、2年前の法案提出段階において官僚の“理論付け”に踊らされ、反対の火の手をあげそびれた責任は大きい。論理の大網をかければ、与野党が消費税をタブー視して、導入の責任を果たさない結果でもある。

 そして今日30日の衆院本会議での、ガソリン税などの暫定税率復活のための再議決である。民主党の“参院占拠”の結果である再議決そのものは、失政とは言えないし、責任政党として当然の対応だ。しかし、この問題の本質は、道路行政を預かる国交省三流官僚の“失政”にほかならない。“横領”と入ってもよいほどの無駄遣い。驚くべき行政の怠慢が野放しにされていた、ことへの批判が根底にあるのを忘れてはならない。いずれのケースも全くの“敵失”であり、民主党代表・小沢が満面笑みをたたえて喜ぶ筋合いのものではない。民主党の実力でも、小沢の選挙好きの結果でもない。自民党政権がわざわざ“選んで”選挙に敗れる道を進んでくれている、おかげなのである。

 その証拠には、民主党の政党支持率は、どの選挙のケースを見ても、自民党と逆転していない。あの地滑りを起こした参院選挙の直前ですら、朝日新聞の調査は自民党25%に対して民主党16%にとどまっている。山口補選の前も、自民党26%、民主党22%だった。要するに民主党候補支持票と言うより、反自民党票が大発生しての結果なのである。さすがに代表代行・菅直人は分かっていて、「うちの場合は政党支持率が選挙には現れない」と述べている。この傾向は、現福田康夫政権が続く限り消えないだろう。首相のピントのずれ具合は並大抵ではない。道路特定財源の一般財源化だけが“売り”だが、国民の目から見れば、「やって当然」の施策であり、とても総選挙の目玉にはならない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム