国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-05-21 10:07

韓国の対北朝鮮非核化政策は真剣である

田島高志  東洋英和女学院大学大学院客員教授
 先日、慶応義塾大学東アジア研究所で「李明博政権と日韓関係」と題するシンポジウムが開かれ、大変有益であった。質疑応答時間に私は、「初歩的な質問であるが」と前置きした上で、(1)北朝鮮が同胞である韓国に核攻撃する可能性はないと思われるが、韓国が北朝鮮の非核化を重要な基本政策の一つに掲げている背景となる考え方如何、(2)韓国前政権は、韓国は米中間及び日中間のバランサーの役割を果すとの考え方を示していたが、現在は如何、との2点を質問したところ、韓国側パネリストの回答は興味深く明解であったので、その要点をご紹介したい。

 まず、第1の質問に対し、金聖翰高麗大学教授及び金浩燮中央大学教授は、「米国でも質問を受けた基本的な問題である」として、下記6点を述べた。(1)1992年南北は南北の非核化に関する共同宣言を発表している。(2)もし北朝鮮が核を保有すれば、南北の軍事上のみならず政治、社会、外交上の均衡が崩れ、韓国の安全保障は不安定になる。北朝鮮は今でもしばしば韓国を脅している。南北関係が悪化すれば、北朝鮮が韓国に対し核を使う可能性は高い。いかなる場合でも、中国に使うのは自殺行為であり、日本に使えば、米国が核の傘による抑止政策により、韓国と協議せず日本のみとの協議で核報復を行うであろう。従って、北朝鮮の核は、中国や日本にではなく、韓国に使われる可能性こそが最も高い、(3)北朝鮮の核保有は、核拡散を容認することになり、世界の安全のためにも許せない。(4)韓国の究極の国家目標は南北統一であるが、核を保有したままの南北統一は周辺国が歓迎しないであろうから、南北統一実現のためには、先ず非核化実現の必要がある、(5)核の事故が万一にも起るような情況は避けねばならない、(6)国際的なモラルや責任感を持たない欠陥政権が、核を保有して長期存続する事態は避けるべきである。

 次に、第2の質問に対し、玄仁澤高麗大学教授及び上記金聖翰教授より、「バランサー論は、前政権時代の国際情勢に対する理解不足と韓国の力と立場に対する誤った認識に基づく誤った政策であった」として、「21世紀はパワーポリテイックスの時代ではなく、米国中心の国際秩序のもとでいかに安定を維持するかの時代であり、小さい力量しかない韓国は、アジア太平洋地域協力の推進に協力することがその役割であろう」との趣旨が述べられた。

 日本では、前政権の太陽政策もあり、韓国は北朝鮮の核保有にはそれほど脅威を持っていないとの見方が強いと見られるが、上記韓国側の説明により、韓国の対北朝鮮非核化政策も真剣なものがあると改めて認識させられた。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム