国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-05-23 20:17

国益のため欧米路線をこそ羽田空港へ

鈴木馨祐  衆議院議員
 成田空港が開港30年を迎えている。国際競争が厳しくなる中で、アジアの拠点として一定の地位を築いてきている、その努力には敬意を表したい。その一方で、最近羽田空港の国際化が注目されている。空港は、今のグローバル経済の中でモノ・ヒトの移動の主役であって、非常に重要な国家戦略上のインフラである。今後5年、10年の我が国の進む方向を考えれば、空港戦略とりわけ国際空港に関するそれは非常に重要であり、ある意味で我が国の浮沈を賭けた問題であるとすら言えるだろう。その意味で言えば、我が国の国際空港をめぐる議論も、決して「羽田対成田」のような国内の内向きの議論に終始していてはならない。むしろ、仁川や上海といった東アジア地域のライバルに「東京」が勝つためには何が必要か、という発想が大事だろう。

 これまでは、羽田については、国内線で最長フライトである石垣島までの距離を超えない範囲でのみ、国際線の就航を認めるといった議論がなされてきた。ようやくそれは変わりつつあるが、それにしても、いまだに羽田の国際線は近距離のものにしようというムードは健在だ。しかし、日本としての国家戦略を考えれば、私は逆に、ニューヨークやロンドンといったビジネス上重要な長距離戦略路線こそ羽田にシフトすべきだと考えている。なぜなら、中国線などの近距離便は、どのみち必ず日本に発着する。わずか2、3時間の上海~東京便を上海~仁川便が代替することはない。関東の人間は、少なくともソウル経由で上海に行くよりは、多少遠くても成田から上海に行こうとするだろう。近距離便は商圏が狭く、離着陸はその商圏の中に限られるのだ。

 一方で、東京~ロンドン便は上海~ロンドン便に取って代わられる可能性がある。欧米から見れば、東アジア全体が一つの市場に近く、その中で最も効率がいいところに路線を集中させるのは、経営戦略上大いにありうることなのだ。長距離便における商圏は東アジア全体であり、欧米キャリア的には上海でも東京でも仁川でも大きな違いはないのだ。それを東京に引きつけるためには、少なくとも日本全域と東京という後背地の優良なビジネス客がすべてアクセスしやすく、ソウルや上海に代替される可能性が低い、羽田に長距離線をシフトさせるべきなのだ。幸い日本の顧客がほぼ全員利用すれば、日本はかなり大きな商圏なのだから。少なくとも現在のように、東京・横浜の人間ですら羽田からソウル経由でロンドンに行くか、成田まで行って直行でロンドンに行くか、で迷うような状況は解消しなくてはならない。東京自体の競争力を高めるという観点だけでなく、このような観点からも羽田空港の国際線への積極的な活用は、死活的に重要なのではないだろうか。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム