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2008-06-12 11:18

自信をもちはじめたアフリカ

西川恵  ジャーナリスト
 横浜で開かれた第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)は成功裡に終わった。過去2回、この会議を取材した感想から言うと、アフリカ諸国の自信がこれまでになく目についた。その一つ、開会前日に国際協力機構(JICA)の緒方貞子理事長の司会でもたれたシンポジウムのもようを紹介したい。「アフリカ開発とアジアの成長経験」と題したこのシンポジウム。エチオピア、タンザニア、モザンビークの3カ国の現・前首脳と、アフリカ開発銀行(ADB)の総裁が意見を交わした。近年、大きな経済成長を遂げている国々である。テーマの一つは「政府と民間セクターの役割のあり方」。官民の役割分担をどうするかは、日本や欧州でも議論が続いている。多くのアフリカ諸国は独立後、社会主義的色彩の強い政府主導型の経済・社会政策を推進した。

 しかし1980年代末から、世銀、国際通貨基金(IMF)、米国が主導する通称ワシントン・コンセンサスに基づく経済・金融政策を導入していく。世銀などが援助継続の条件に、補助金カット、財政赤字削減、規制緩和などを内容とするワシントン・コンセンサスの受け入れを求めたからだ。しかしこれはアフリカ諸国を混乱させ、貧富の格差増大を招いた。エチオピアのゼナウィ首相は「改革が外から押し付けられたこの10年は、失われた10年だった」と述べた。タンザニアのキクウェテ大統領は「民間セクターの活性化は成長に不可欠だが、民間セクターが繁盛するよう政府は積極的に関与すべきだ。官民の間のいい関係が大事だ」と指摘する。「大きい政府」「小さい政府」と揺れながら、アフリカ諸国が新しい均衡点を模索する現実を窺わせた。セナウィ首相は「どんな政府も間違いを犯す。ただそれも勉強だ。アフリカに学ぶ時間的余裕を与えてほしい」と語った。

 もう一つ目を引いたのは、3カ国首脳が異句同音に「アフリカを一つで見ないでほしい」と述べたことだ。ADBのカベルカ総裁は「ブルンジのように紛争が解決したばかりの国と、成長途上の国ではニーズは異なる」と語った。当然の言葉だが、過去のTICADではあまり聞かなかった。アフリカの発展は一つのモデルだけでない。それぞれの実情に合ったやり方で経済・産業政策を進めるべきとの認識の深まりでもある。多様性溢れるアフリカへの認識を日本ももっと持つべきかも知れない。「いまトンネルの向こうに出口の光が見えたところ。あと十数年の成長が続いて、アフリカは成功したといえる」とゼナウィ首相は語った。
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