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2008-06-30 20:34

日朝国交正常化への期待と条件

岩國哲人  衆議院議員
 米国は、北朝鮮が「すべての核計画申告」と引きかえに、テロ支援国家指定解除の手続きに踏み切ることを宣言した。来年1月に任期切れを迎えるブッシュ政権は、北朝鮮の核問題に関する進展で成果を挙げることを最優先課題としていると思わざるを得ない。今年4月のシンガポールでの米朝会談ですでに同意が得られていたともいわれている。2002年の小泉首相の訪朝は、国交断絶の氷を打ち砕く大きな意義があり、平壌宣言は両国首脳による勇気ある政治決断であった、と私は高く評価している。しかし、その後に起きたミサイル連射、核実験などから両国関係は再び悪化し、わが国による経済制裁が実施されて、「対話と和解」への路線が二歩も三歩も後退し、「対話と圧力」の時代へと変ってしまった。

 「対話と和解」の意味するところは、相互の主張を調整するものであり、北朝鮮の主張のみを受け容れるものではない。北朝鮮の誠意が見られなければ、制裁延長は当然であり、私も経済制裁を「解除」すべき、と発言したことは一度もない。しかしながら、経済制裁をどのように実施すればどのような効果が生まれるか、その分析は極めて難しい。日本が北朝鮮に実質的な制裁を行ったのは、1998年のテポドン発射事件が最初だが、2006年まで北朝鮮の貿易総額は漸増こそすれ、激減した事実はない。日本のシェアが減った分、輸出については中国が、輸入については韓国がシェアを伸ばしている。北朝鮮との交渉については、これまで圧力をかけるブレーキ装置はあっても、対話というアクセルは取り付けられていない状態だった。

 しかし、硬直状態を打開したいという機運は充分に高まっていた。民主党は「朝鮮半島問題研究会」を立ち上げたが、その日の午後には公明党も、翌日には社民党も立ち上げた。それから1カ月も経たないうちに、超党派の議連の話にまで発展してきている。5月28日の北京での米朝会談からさらに動きが早まりだした。5月30日、31日の両日にわたって京都の立命館大学で行われた朝鮮半島問題の国際シンポジウムの基調講演を依頼され、私もその2日間に内外の専門家や政府関係者から多くのことを学ぶことができた。「日朝国交正常化への期待と条件」というテーマで、私の意見として5つの点を述べた。そのうちの2つを紹介する。

 第一は、ドイツと日本が核保有のための経済力も技術力も持ちながら、あえて核を持たない国として歩むのは、戦争の時代の反省に基づいて近隣の国から愛される国としての歴史を歩む意思があるからであり、どんな理由や事情があっても、核を持とうとする限り、北朝鮮は近隣の国から愛される国にはなり得ないこと。第二は、拉致問題について、「認めろ」、「帰せ」、「謝まれ」の言葉だけでなく、再調査を最優先とし、北朝鮮がそれを受け容れられる環境づくりに、両国の工夫が必要であること。ベトナム戦争終結後、残留米兵の家族が彼らの返還を要求し、数度にわたる交渉の結果、ベトナム側は調査を受け入れた。残留兵拘留と拉致の問題は同列には扱えないが、当然ブッシュ政権も米国の米朝担当者もこの事例を承知しているはずだ。
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