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2008-07-02 00:49

無極化(ノンポラリティ)の時代

古屋 力  会社員
 米外交問題評議会会長のリチャード・ハースが、最近の“Foreign Affairs”誌で「これまでの世界秩序が劇的に変化し、世界は今後、無極化(ノンポラリティ)の時代になる」と述べている。そして、こう続ける。「20世紀は多極化の時代で幕開けしたが、その後米ソのニ極化の時代を経て、1990年代にソ連が崩壊し、ヤルタ体制が崩れて、しばらくはアメリカという一国家が世界秩序を支配する一極支配の時代が到来した。しかしその寿命は20年程度とあまりに短く、長い世界の歴史の流れから観れば、ほとんど瞬間にすぎなかった。そして、いま始まろうとしているのは、無極化の時代である」と。はたして、それはどんな時代なのだろうか。人類にとってより「ましな時代」になるのだろうか。

 ハースは言う。「古典的な大国間抗争が起きる可能性は小さくなり、主要な多くの国家が、いままでと全く違った次元で、経済的な繁栄と政治的な安定を求めて国際システムに多く依存する時代になるだろう」と。その意味では、もはや政治的な北極も南極もないのであろうか。逆に言えば、満場一致型のコンセンサスがとりにくい時代でもある。そして、政治的な同盟関係に代わる経済的な相互依存関係が醸成されてゆくのかもしれない。それはいままでの勇ましい「ますらお」の時代の終焉であり、たおやかな、はんなりとした「しなやか」な時代の到来を意味するのかもしれない。そして、おそらく、イデオロギーや軍事力という「磁場」に代わる新しい「磁場」は「地球環境」であろうと思う。

 こういった「無秩序」に近い、「無極化の時代」は、一見不安定な時代の予兆に見えるが、実はいままで人類が有史以来実現できなかった、安定的で持続的な世界へのパラダイム・シフトの段階と考えることもできようか。そのヒントは、「有限な地球」という認識であり、こんな馬鹿な抗争ばかりやっていたら人類はそう長くもたないだろうという悟りであり、もうすぐポイント・オブ・ノーリターンが差し迫っているという新たな緊張感であろう。それとも、こういった展開を想像することは、楽観的すぎるのだろうか。かつてジョン・レノンの謳った「イマジン」の世界は絵空事と形容されたこともあったが、しかし、無極化へのパラダイム・シフトの槌音が聴こえてきているなかで、「地球環境」という新しい「磁場」を梃子に「イマジン」への道を考えることは、はたして夢想家のたわごとでもなかろう。為政者も、なぜいまも「イマジン」が人々に謳い継がれているのか、よく考える時期にきているのだと思う。
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