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2008-07-11 17:32

サミットで取り残された原油価格高騰問題

細野豪志  衆議院議員
 洞爺湖サミットが終了しました。わが国で開かれるサミットは8年に1回。前回の沖縄サミットは、9.11テロ事件の前年の2000年でした。さて、今回のサミットは、本格的なテロの脅威に見舞われる中で、無事に日程を終了しました。警察庁をはじめ、警備関係者の努力には敬意を表したいと思います。各国首脳(夫妻)は、日本を満喫して帰った様子でした。表面的には成功裏に終了したかに見えるサミットですが、内容には大いにもの足りなさが残りました。

 福田総理が最優先課題として位置づけたのが、地球温暖化対策です。「2050年までに50%の削減を達成するとの目標を世界で共有することを目指す」という首脳宣言(要約)は、G8による「合意」を回避したものです。本来であれば、G8で「合意」した上で、他の締結国と「共有」とするのが筋でしょう。インド、中国などを加えた主要排出国会議で具体的な長期目標に言及できなかったのは、当然の帰結と言えるでしょう。とはいえ、各国の利害がぶつかり合う排出量の目標の合意は、もともと難題でした。サミットの結果は及第点とは到底言えませんが、米国、中国などを説得して合意にこぎ着けた福田総理の議長としての努力は、多としたいと思います。

 落第点をつけざるを得ないのが、現在の世界情勢の中で、最も危機感を持つべき原油高への対応です。首脳宣言で採用された「先物市場の透明化」という表現は、米国をはじめとした市場重視派がこれまで使ってきたものです。サミットは、先物市場の現状を追認したことになります。途上国や欧州の一部に、投機資金の「規制」を求める動きがなかったわけではありません。規制に踏み出せるかどうか、議長国である日本は鍵を握っていました。しかし、サミットの前日に行われた日米首脳会談でも全く議題にならなかったことからも分かるように、福田総理は原油高にほとんど関心を持っていなかったようです。親しい経営者が、「福田総理は何事も他人事(ひとごと)のようだ」と嘆いていましたが、原油高に関する限りその通りだと思います。
 
 世界の原油市場をリードしているWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート、米国の標準的な油種)原油先物では、実際に西テキサス地方で産出される原油の1700倍、全世界の石油需要の6倍の量の取引が行われています(朝日新書『石油がわかれば世界が読める』より)。現物の裏づけのない「ペーパー・バレル」が原油の価格を決定していることは明らかです。先週、中東に行った際も、ドバイの好景気、サウジ・アラビアの空前の財政黒字には、目を見張りました。何しろ、消費国から産油国に対する所得移転は200兆円に上るというのですから、凄まじい限りです。このオイルダラーと、低金利が続く日本の金融資産が、更なる原油の高騰を招いているとの指摘を聞くと、情けなくなります。

 世界経済の中でも、先進国の貧困層や途上国という弱い部分にしわ寄せが来ている現状を放置することは出来ません。私が事務局長を務める民主党の「原油価格高騰に関する緊急対策PT」では、原油の先物市場の規制のあり方についての検討に入りました。個人的には、食糧や排出権取引についても、同様の規制の必要性を感じています。世界中に広がりを見せている先物市場の中で、どの取引を規制対象とするのか、効果的に税を課す余地があるのか、国際協調は可能か等々、難しい課題ではあります。ただ、自民党も、福田政権も、取り組まない課題である以上、我々が挑戦するしかありません。
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