国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-08-29 11:11

オリンピックに見る日本の島国根性

湯下博之  杏林大学客員教授
 過去最多の204の国と地域が参加した北京オリンピックが、テロや大気汚染などによる混乱もなく、無事終了した。1964年の東京、1988年のソウルに次ぐ、アジアで3回目のオリンピックであったが、いずれも日本、韓国、中国それぞれの経済発展を背景としてものであったと言え、今回のオリンピックも中国の威信をかけた国威発揚の大事業という印象であった。また、中国の台頭が21世紀前半の国際社会の関心事であることもあって、競技そのものに加えて、中国の人権や民主化といった問題についても、メディアが広く取り上げた。

 全体として話題の多いオリンピックであったが、スポーツ競技に限っても、133のオリンピック新記録と43の世界新記録が生まれたし、男子水泳平泳ぎの北島康介選手の2大会連続2冠の達成など、まさに歴史に残る快挙が見られた。陸上男子のトラック種目で日本初のメダルを獲得した400メートル・リレーも印象的であった。また、ソフトボールや「なでしこジャパン」のサッカーなど、日本の女子の活躍も素晴らしかった。しかしながら、日本がやや残念な結果に終わった種目も少なくなく、国別にみたメダルの数では、日本は期待外れになった。

 主催国中国の躍進は目を見張るほどであったが、次回主催国の英国も強化策が効果を発揮して、中国、米国、ロシアに次いで4位となった。アテネでは日本を下回った韓国も、再び日本より多数のメダルを獲得した。事前の報道ぶりからは、日本はもっと期待が持てるのではないかと思えたが、実際に蓋を開けてみると、外の世界で種々変化を生じており、日本はそれに対して十分な関心を払っていなかったり、適切な対応をしていなかったことが明らかになった。 

 このようなことになった背景には、日本人特に日本のメディアが、日本のことばかり騒ぎ立てて、世界の情勢に客観的な目を向けることをしない、という島国根性があると思う。テレビでオリンピック関係のニュースを見ていても、日本関係のことは十分以上に繰り返し報道されるが、日本が上位に入らなかった種目は、余程話題性のあるケースは別として、殆ど映像が出ない。これでは、世界の全体像やその中での日本の位置づけは分からない。韓国がアトランタやシドニーでも日本より多いメダルを獲得している状況も理解されない。その結果、日本は世界に対して遅れをとってしまう、ということになるわけである。

 この問題は、必ずしも今回のオリンピックに限ったことではない。テレビの報道ぶりについては、私は、かねてより、もう少し日本の視聴者の目を外に向け、世界の動きや状況を客観的に理解できるように改めて欲しい、と訴えてきた。今回のオリンピックの結果を踏まえて、ぜひそのような変化が起きることを願ってやまない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム