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2008-09-25 07:53

事実上「首相公選」の総選挙へ

杉浦正章  政治評論家
 「4度目の正直」で首相になって麻生太郎が、せきを切ったように「麻生政治」を前面に打ち出しはじめた。内閣改造の結果を見ての多くの評論が、「何をやろうとする内閣か分からない」という分析が多いが、それは評者に判断能力がないからである。麻生の姿勢は明白だ。自ら陣頭に立って小沢一郎とさしで戦う、乾坤一擲(けんこんいってき)の「首相公選」への勝負に出たのである。幹事長、官房長官に自分の意のままになる人物を据えたことで明白だ。民主党代表・小沢一郎は「どなたがなっても同じ事」と述べているが、明らかに違う歯ごたえを感じているはずだ。

 恐らく臥薪嘗胆の時期に、2人続いた「適性に欠ける首相」を見て、自分だったらこうすると思っていたのであろう。歴代官房長官にまかせてきた閣僚名簿発表を、自らの手で行うという挙に出たのが、それを象徴する。麻生の人となりは知っているが、「苦労知らずの田中角栄」のようなところがあって、頭の回転の速さ、行動力、エネルギーは抜群だ。何を国民が求めているかの「直感」も鋭い。田中の初期はコンピューター付きブルドーザーと言われたが、似ている。ただ、田中はまず「和」を前面に打ち出したが、麻生は状況もあり、極めて挑戦的だ。露骨に小沢との戦いを前面に出す。これは、自らの人気で勝つしか自民党に手段がない状況を、十分認識した上での対応だろう。スピード感重視の政治という点でも似ている。

 初記者会見でも切り口が明白だった。民主党とどう戦うかを聞かれて「正々堂々と戦う」と述べた。全軍を率いる将たる者、戦闘開始を前にへりくつをこねても始まらない。まさに「正々堂々」でよいのである。自分の使命を聞かれて「日本を明るく、強い国にすることが使命だ」と単純明快に述べた。小泉純一郎は明るかったが、安倍晋三、福田康夫は陰気で、自らが日本を覆う閉塞感の象徴になってしまっていた。人物を見るのが商売の自民党議員が、一致して過去2人の人選を見誤ったのである。一番注目されるのが「財金一体」。盟友の元政調会長中川昭一に財務相と金融担当相を兼務させた。約10年ぶりに財務・金融行政を一元的に統括して、「金融危機対策と景気対策のための積極財政への転換」を前面に打ち出した。

 これは麻生のかねてからの持論を思い切って前面に出したものであり、事実上の大蔵大臣復活ともいえる。ただ「お坊ちゃま政治家」の側面も垣間見せた。後期高齢者医療制度改革をめぐる舛添要一の露骨な猟官運動を見抜けず、再任させたことである。党内的な批判もくすぶった。こうした動きに乗ってしまうところに甘さがあり、危惧(きぐ)されるところだ。総じて、人物評をするなら麻生は2年間の低迷を経て、自民党が提示した最後の切り札だけあって、さすがに政治家らしい政治家が登場したと言うことができる。とりあえず11月初旬の総選挙までの“賞味期限”で、小沢と戦うことになる。小沢は過去の2人は政治歴など格からいって容易に追い込めたが、麻生はそう簡単ではないと感じ取っているだろう。国民にとっては、「首相公選」が事実上行われることとなり、戦後まれに見る総選挙となる。
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