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2008-10-09 08:04

解散めぐり与野党は「いたちごっこ」

杉浦正章  政治評論家
 首相・麻生太郎が天の時地の利を最大限生かして“解散回避”に動いている。民主党は憶面もなく補正予算案の賛成に回るなど“解散実現”に懸命だが、所信表明で「私は逃げない」と大見得を切った麻生は、当面の逃げ切りに懸命だ。現状は首相と民主党による解散綱引きの「いたちごっこ」が続くが、当解説が当初から指摘していた事実上の「話し合い解散」のムードも生じている。政治を読み解けば、図式は簡単だ。自民党独自の調査結果で「与党が過半数に達しない」という結果を受けて、麻生にしてみれば、就任2、3か月で首を切られてたまるかということ。野党は、追い込んで首をすげ替えたいということだ。このための食うか食われるかの駆け引きが展開されているということだ。

 とにかく民主党の対応は、早期解散に向けてなりふり構わぬご都合主義もよいところだ。補正予算案には賛成したかと思うと、今度は給油活動を延長する新テロ対策特別措置法改正案の審議促進に転ずるといった具合。昨年の臨時国会で「憲法違反」とごねにごねて、「給油」に反対したことなどとっくに忘れた風情だ。狙いは一つ、早期解散を勝ち取りたいのだ。これに対して麻生は、あらゆる事象を解散引き延ばしに利用して、窮地からの脱出をはかろうとしている。補正予算に成立のめどが付けば、給油法案を持ち出し、株価が史上3番目の下げを見せれば「選挙なんてやる前に景気対策だろう」という。外交日程も次から次に織り込んでいる。今月下旬には北京におけるアジア欧州会議(ASEM)と日中首脳会議で北京へ。11月下旬にはペルーで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出席を検討している。

 金融危機の現状も、麻生の解散引き延ばしに“追い風”となって作用している。たしかに金融危機が実体経済に影響を与え始めており、金融危機発生以前に作った補正予算案が成立しても、効果は心理的なものにとどまる。中小企業の融資枠拡大など追加補正を含めた本格的景気対策がが必要なのは、火を見るよりも明らかだ。予算委員会審議でも麻生は、菅直人や前原誠司の質問を軽くかわしており、しぶとさを見せている。おそらく、麻生は自信をつけており、今後はこの調子で“実績”をあげて、例え一議席でも挽回を図らなければならない時期と考えているのだろう。

 上滑りしている支持率の“ご祝儀相場”が下がり始めても、開き直るしかないという心境だろう。公明党が早期解散をやいのやいの言っても、それに応ずれば首が飛ぶ。麻生にとっては、背に腹は代えられない状態が続いてゆくだろうが、ここにきて、民主党の国会戦術の軟化で、自民党側に一定の民主党に対する信用が生じてきた事が注目される。民主党がごり押しをしないで、国会ルールを順守するなら、「話し合い解散」への流れが増すかも知れない。しかし、すべては自民党の“負け具合”の予測がどう出るかにかかっていることである。
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