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2008-10-12 10:46

(連載)世界金融危機という「顔ナシ」の化け物(2)

古屋 力  会社員
 片やカリブ海の洋上でクルーザーに乗って、ドンペリを飲みながら、空虚な快楽を満喫している輩がいる一方で、片やどうみても自分の過失ではない事情によって、不条理にも不幸な目にあってしまっている幾多の罪もない人々の姿がある。その皮肉な対照性には、憤りを覚える。本来こうした明らかな矛盾や制度の欠陥を是正し、リスクを毅然とコントロールするはずの政治家が、いまひとつ釈然としていないし、後ろ向きな責任回避や姑息な対処療法に終始し、右顧左眄し、狼狽しているから、始末に終えない。いずれにしても、良い悪いはともかく、こういったグローバリズムの仕組みはもう元には戻りにくであろう。覆水盆に還らずである。それではどするか。神学論争を続けていたって埒があかない。いまの仕組みをなんとか改善是正しながら、毅然として前に進むしかない。

 まださほど経済が発達していなかった時代、いまほどグリーバリズムが加速蔓延する前の古典的な時代には、まだ健全な余裕があった。人々は、お金だけに狼狽したり、右顧左眄したりしていなかった。いまほど物質的にはリッチではないものの、もっと品格と落ち着きがあった。優しさがあった。そこには人間的なみずみずしさが健在であった。ところが、いまはどうだろうか。自分さえよければという風潮、この蒙昧とした閉塞感は、なんだろう。きっといつかは幸せになり、心平安に暮らせるようにと、一生懸命働いて「坂の上の雲」を目指してきた人類諸氏の断末魔、あげくのはてが、これでは情けない。

 もう一度経済的利得だけのゲゼルシャフトの世界に傾斜せず、さらに大事なはずの人間社会としてのゲマインシャフトの世界の復活、醸造が急務であろう。お金のためだけにあくせくして、人間としての大事な品格や尊厳を毀損するような社会は、決して豊かではない。

 アジア通貨危機や昨今のサブプライム・ローンの原因となっている過剰流動性問題の解決をはじめとした、国際金融システムの抜本的改善も急務である。おそらく、基軸通貨云々の議論だけでは解決できないであろう。地球環境問題や世界共通通貨の創設も視野にいれたパラダイムシフトが急務であろう。誰だって幸福になりたいし、誰だって人を不幸にしたくはないはずである。その工夫と改善ができる知性を、人類はまだ持っていると信じたい。(おわり)
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