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2008-10-16 07:52

「麻生政治」定着後の解散を狙う麻生

杉浦正章  政治評論家
 麻生太郎か小沢一郎かの国民の選択は明らかに麻生だが、自民党が総選挙で惨敗すれば、下手をすれば就任3か月で麻生は首相の座を降りなければならない。解散するということは、その決断もすることになりかねない。ちゅうちょするのも無理はない。したがって本人は「麻生政治」を定着させてから解散ということだろうが、解散時期を当てることが商売の政治記事の過当競争と、これに乗る野党の攻勢をいかにかわしてゆくか。孤独の決断を迫られる毎日だろう。麻生支持は、報道機関の世論調査でも、小沢のそれより倍近い。NHKの最新の調査でも、麻生か小沢かの選択で、麻生が42%で、小沢が21%だ。問題は、麻生への支持が自民党支持と結びつかないことだ。

 無理もない。戦後まれに見る官僚による職務怠慢、不祥事、失政が政権と与党を批判にさらし、自民党離れした支持票が容易に戻る気配を示さないからだ。就任以来の麻生政治には批判もつきまとうが、総じて低次元だ。そのよい例が、今週のTBS時事放談における元代議士・野中広務と作家半藤一利のこき下ろしだ。麻生批判の急先鋒・野中の登場に迎合して、番組構成も明らかに麻生批判をテーマとして、これまでの重みのある政局対談から逸脱した。野中が麻生の休日ゴルフや首相公邸に住まないことを批判すれば、半藤は麻生と天皇皇后両陛下との会食まで難癖をつけるという次元の低さだった。半藤は「この方は不勉強だと思った」と断定したが、素人の断定は往々にして見当が外れる。切れ者であった野中ももう年かもしれない。

 麻生の国会答弁は、本会議、予算委答弁を見る限り、危なげがない。10月15日も民主党副代表・石井一の品性のない恫喝質問を軽く受け流していた。世界を覆う金融危機の中で、まず景気対策優先とする政治姿勢は正しい。「公的資金導入」という日本の主張を、さきの財務大臣・主要銀行総裁会議で実現させたのは、政権初の成果でもある。麻生は財務に詳しく、経済人らしく景気の先行きを読む力のある首相だ。半藤が指摘するほど勉強不足とは思えない。明るさも小沢の暗さとは対照的であり、リーダーの資格を備えている。

 麻生は、いわば自民党最後の切り札であり、その切り札の役割を果たそうとするが、惜しむらくは時間がないのだ。麻生は、明らかに幹事長・細田博之と“役割分担”をしている。細田に解散ムードをあおらせ、自分は沈静化するというパターンだ。細田が来月末投開票を示唆しても、麻生は「解散の日時は日々刻々変わるのは当然だ」と煙に巻く。細田は幹事長だから解散発言を繰り返して党内引き締めをしなければならないのだ。従って誰も麻生の解散に関する心底を読むことはできない。実現できるかどうかはともかくとして、麻生本人が解散をできるだけ引き延ばしたい、場合によっては任期満了まで引き延ばして「麻生政治」を定着したい、と思っている事は状況証拠からみても確かだろう。
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