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2008-10-24 16:24

(連載)「未開の資源大国」モンゴルと日本(1)

関山 健  東京財団研究員
 9月27日、中国・吉林大学主催の「北東アジア地域協力発展国際シンポジウム」において、「政府開発援助から見た日本モンゴル関係」と題するプレゼンテーションを行った。モンゴルは、国際的な需要が高まっている石炭、銅、金、ウラン、モリブデンなどの鉱物資源について世界有数の埋蔵量を有するが、まだまだ開発が進んでいない「未開の資源大国」である。そのモンゴルと日本とは、1972年の国交樹立以来、友好な関係を維持してきているが、この30年以上にわたる日蒙関係の発展において、日本の政府開発援助が果たした役割は非常に大きい。しかし、他方で、民間レベルの経済関係において、日本はロシアと中国に大きく水を開けられている。

 日本の対モンゴル援助が本格化するのは、モンゴルが民主化した1990年以降のことである。1972年の国交樹立から1990年までは、カシミヤ工場建設(50億円)など総額60億円の援助を実施しただけであった。1991年以降、日本は、モンゴルの民主化・市場主義化支援のために積極的な援助を実施している。1991年から2006年までの日本による援助額は、円借款391.07億円、無償援助790.25億円、技術協力278.95億円の合計1460.27億円に上る。

 日本の対中国援助累積額3.4兆円と比べると、対モンゴル援助はわずか25分の1に過ぎない。日本は2003年の1年間だけで1359.28億円の政府開発援助を提供しているが、これは過去30年以上における対モンゴル援助額と同規模である。しかし、モンゴルから見れば日本は最大の援助国であり、モンゴル経済に占める日本からの援助の役割は極めて大きい。2002年のデータでは、モンゴル全体の投資財源のうち66.3%が外国援助であり、GDPの約2割が外国援助によって支えられていたが、その外国援助のうち約4割は日本からの援助であった(外務省「対モンゴル国別援助計画」2004年11月)。

 これまで日本は、モンゴルに対して、食糧、水、保健医療、教育といった基礎的生活分野からエネルギー、通信、鉄道、道路などのインフラ分野まで、幅広く支援してきた。日本の援助プロジェクトのうち代表的なものは、主要幹線道路の建設、衛星通信基地局の設置、鉄道駅貨物積替施設の整備、火力発電所の改修、ウランバートル市への公共バス提供等が挙げられる。ほかにも、日本は、世銀とともに1991年から1997年まで毎年対モンゴル支援国会合を東京にて開催し、国際社会において積極的に対モンゴル支援を牽引してきた。(つづく)
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