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2008-10-25 10:19

(連載)「未開の資源大国」モンゴルと日本(2)

関山 健  東京財団研究員
 日本政府は、なぜ積極的にモンゴルに援助を提供しているのだろうか。日本の外務省が2004年11月に作成した「対モンゴル国別援助計画」によれば、日本の対モンゴル援助の目的はつぎの4つだとされている。(1)まず地政学的に、モンゴルは、中国とロシアという二大大国に挟まれた内陸国として、北東アジアの安定と平和にとって重要な位置を占めており、モンゴルの独立維持と平和的発展の支援は、日本の安全保障上必要だという。(2)つぎに外交面では、援助を通じてモンゴルと良好な関係を維持する目的がある。日本にとっては、国際社会において日本の立場を支持する友邦として、モンゴルにとっても、中国やロシアに対抗するために、良好な日モンゴル関係は両国にとって共通の利益だという。(3)さらにイデオロギー的には、モンゴルは1990年以来、民主化の努力を進めているが、日本は、政府開発援助によってモンゴルの経済社会発展を支援することによって、同国が進める民主化を促進しようと考えている。(4)4番目に、文化・環境上の目的を指摘できる・モンゴルの自然環境や伝統文化は世界的にも貴重な価値があり、日本としても、文化や環境の保護に関する援助を行っている。

 日本の対モンゴル援助の方向性については、「対モンゴル国別援助計画」は、日本の対モンゴル援助の重点分野は、(1)市場経済を担う制度整備及び人材育成、(2)地方開発、(3)環境保全、(4)インフラ整備、の4つであるとしている。モンゴルは、市場経済導入に伴う混乱等のために、1990年から1993年にかけてマイナス成長となり、特に1992年には300%を超える激しいインフレを経験した。こうした経済危機の結果、1993年の実質GDPは1990年の約80%まで落ち込んだが、その後は、外国援助や国有企業改革等の要因によってモンゴル経済は徐々に回復してきた。近年のマクロ経済指標は概ね好調であり、2005年には6.7%、2006年には8.7%の経済成長を達成した。しかしながら、現在の経済水準は1990年の民主化前の水準をやっと超えたところであり、貧富の格差、地域間格差、牧畜業の衰退など、解決すべき経済社会上の課題は数多い。こうした状況を踏まえて、日本は、モンゴルが持続的な経済成長を通じて貧困を削減できるように、地方経済発展と産業育成を支援することとしている。(つづく)
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