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2008-10-26 11:21

(連載)「未開の資源大国」モンゴルと日本(3)

関山 健  東京財団研究員
 最後に、日・モンゴル関係の現状と展望について述べる。これまで日本とモンゴルは、日本からの政府開発援助を中心に友好関係を築いてきた。両国の良好な関係は、2004年11月に在モンゴル日本国大使館が実施した世論調査の結果にも表れている。同調査によれば、7割以上のモンゴル人が「日本に親しみを感じる」と答えたほか、モンゴルにとって「最も親しくすべき国」として日本が第1位であったという。いまやモンゴルは、世界でも有数な親日国であると言えよう。しかし、援助による政府主導の友好関係とは対照的に、日モンゴル間の民間経済交流は極めて乏しい。2007年のデータによれば、モンゴルにとって最大の輸出相手国は中国であり、中国向け輸出はモンゴルの輸出総額の74.1%を占める一方、日本向け輸出は全体の1%にも満たない。

 輸入については、日本からの輸入がモンゴルの輸入総額の6.0%(第3位)を占めているが、最大輸入相手国のロシア(全体の34.6%)や第2位の中国(同31.7%)には遠く及ばない。投資についても、日本は対モンゴル外国投資の3.4%に過ぎず、全体の51.1%を占める中国とはまったく比較にならない。こうした乏しい貿易投資関係を反映して、モンゴルに支店を開設している日本企業は2008年2月現在でわずかに8社しかなく、モンゴルに住む日本人も300人あまりにすぎない。以上から分かるとおり、民間レベルの経済関係においては中国やロシアの存在感が極めて大きく、日本は非常に出遅れている。

 ただし、モンゴルでは、中国やロシアへの過度の依存を避けるために、日本との貿易投資関係の拡大を望む声が大きい。2008年3月2-7日、オヨーン外務大臣が訪日した際には、円借款プロジェクト「新ウランバートル国際空港建設計画」に関する交換公文に署名するとともに、高村外務大臣との外相会談で両国間の通商・経済関係の拡大につき意見交換した。オヨーン大臣は、この訪日中、多くの企業関係者と面会し、鉱物資源開発等に対する投資拡大をアピールしたという。日本側としても、モンゴルが有する銅、金、モリブデン、石油等の地下資源は大変魅力的である。

 特に、2005年頃より、豊富な埋蔵量を誇る南ゴビ地域の原料炭(コークス炭)が注目されるようになり、日本、カナダ、ブラジル等の企業が大規模な開発を行う機運が高まりつつある。南ゴビ地域にある「タバン・トルゴイ石炭鉱区」の埋蔵量は51億トン(コークス炭は18億トン)で、世界一の規模になると言われている。また、同じ南ゴビ地域の「オヨー・トルゴイ鉱区」の銅・金鉱山も銅量ベースで約1500万トンという、世界第2位の大規模な埋蔵量が見込まれている。2004年に作成された「対モンゴル国別援助計画」は、来年以降に改正が予定されている。同計画の改定にあたっては、今後は政府レベルでの友好関係の維持だけでなく、民間レベルでの貿易・投資関係の拡大を促進するような方針が打ち出されることを願ってやまない。(おわり)
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