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2008-11-05 01:36

アメリカの終わりとアジアの始まり

亀山 良太  自営業
 日本がバブル崩壊したとき、内科治療(公的資金投入)を選択した日本に対し、アメリカは早急に外科手術(企業退場)を行うべきだと批判した。だが、いざ自分が痛い目にあってみると、やはりアメリカも内科治療を選択せざるを得なかった。「弱虫めっ」と嫌味のひとつも言いたくなる(笑)。その治療費は誰が払うのかというと、アメリカ政府のサイフの中には借用証書しか入ってないし、こんなときに増税できるはずはないから、間違いなく国債を発行することになる。そして、その国債を引き受けるのは、日本をはじめとした諸外国である。「ちっ、またかよ」と嘆きたくもなる(笑)。

 結局、われわれは、アメリカを胴元とする賭博ゲームのプレイヤーとして損害をこうむったばかりか、胴元の損失まで補填しなければならなくなった。こんなことなら、初めからサブプライムローンの返済を肩代わりしてあげた方がよほどマシだった(笑)。しかし、よく考えてみると、「まきぞえ」とか「とばっちり」などという資格はないのかもしれない。アメリカは「強いドル政策」によって「すべてのマネーはアメリカから流れ出し、再びアメリカに流れ入る」という循環システムをつくりあげ、借金の穴を埋め続けてきた。そのためアメリカからドルがなくなることはなかったのである。諸外国は危なっかしいと知りながらも、アメリカの消費にもたれかかって、ファイナンスに応じ、経済成長を遂げてきた。お互い様といっていいだろう。

 しかし、治療費を払い終わっただけで物語は終わらない。現在、サブプライムローン問題を契機に、信用収縮による金融危機へと進んでいるが、その次に起こりそうなことは、アメリカへのマネーの還流がとまり、その結果、アメリカは13兆ドルにも及ぶ負債の始末に頭を抱えることだ。新たなバブルを発生させ、還流の求心力を維持したいところだが、ITや不動産に匹敵するほどの大型バブルは見当たらない。とすると、公的資金によって止血に成功したとしても、アメリカはもう賭博の胴元を続けてはいられなくなる。いよいよアメリカの大量消費を前提とした世界経済システムがゲームオーバーになったといっていいだろう。

 そうなると、しばらく景気の後退は避けられそうもないが、かといってお金が燃えてなくなってしまったわけではないし、紙幣は今日も世界中でせっせと印刷されている。「貨幣経済」というカラクリを変えない限り、やがてまたどこかで渦が起こり、次第に大きくなった渦は、行き場を求めてさまよい始める。それは、おそらく成長著しいアジアに向かうことになるだろう。なぜなら、アメリカに取って代われるだけのスケールがあるのは、大量消費社会を迎えつつある中国やインドを擁するアジアのほかに考えられないからだ。ベトナムやフィリピン、タイなど、ちょっと頼りないが(笑)、後続部隊も豊富に控えている。19世紀はイギリスの時代で、20世紀はアメリカの時代だった。21世紀がアジアの時代でなくて何であろうか。気づいてみたら日本は、顔だけ太平洋の方に向けたまま、体は回れ右しているという窮屈な格好になっているのではないか(笑)。
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