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2008-11-26 08:02

麻生政権の問題は“初期不良”の段階

杉浦 正章  政治評論家
 国会会期延長と2次補正提出の先送りは、出だし2か月でつまずいた首相・麻生太郎にどう作用するか。麻生が景気最優先を唱えてきただけに、26日の新聞の社説は、強弱の差はあれこぞって麻生発言の矛盾をついている。しかし「解散は春以降」を意味する2次補正提出見送りは、麻生にとってみれば態勢立て直しの時間的余裕を稼いだことになる。麻生にとって幸いなのは“つまずき”が“致命傷“から外れ、“初期不良”の段階にあることだ。政権投げ出しの安倍晋三、福田康夫のケースとは明らかに異なる。28日の民主党代表小沢一郎との党首討論が、その「立て直し度」の判断材料となるだろう。

 2次補正先送りへの全国紙の批判は、麻生が「政局より政策」として景気最優先を唱えながら、定額給付金の評判が悪いと一転して通常国会冒頭に先延ばししたという点に尽きる。しかし民主党が採決に応じない金融強化法案は、10兆円の波及効果を想定して中小企業に対する年末資金繰りを確保しようとしており、まず同法案の成立で年末に間に合わせるのが先ではないか。税収の落ち込みなどを見極めた上で2次補正を作成し、早期に招集する通常国会冒頭で処理するのが段取りとして適切ではないか。次に1兆円の地方交付税、郵政株の売却凍結、給付金の二転三転の発言、が象徴する「根回しなしのトップダウン」は、あきらかに麻生の失態だが、これは既に自分自身で是正の方向にある。

 問題は安倍、福田と同様に官房長官の適材に恵まれないことだ。河村建夫は小者過ぎて自民党側との根回し役を果たせていない。各省の調整役もいまひとつ冴えない。いきおい首相が根回しせざるを得ない状況をどうするかだ。話題になっている岡本全勝秘書官の重用も度が過ぎるのではないか。漢字の誤読やホテルのバー通いは、明らかに首相の適性の問題とは異なる。あげつらうのは日本のマスコミの程度の低さ、未開度を象徴している。政治家に「全人性」を求める方が無理だ。歴代首相と比べても、麻生は首相就任以来、スピード感ある外交、内政を実施しており、金融危機対策での国際会議における主張は傾聴されている。英国の消費税引き下げも、「早期に思い切った手を打たなければ機を逸する」という麻生の主張を、英国首相・ゴードン・ブラウンが念頭に入れたものだ。

 自分で日本の例を挙げて対応を説明している。田母神俊雄発言の処理も迅速で周辺国に批判の機会を与えなかった。野党はともかくとして、政権には確実に存在する「敵」をどうさばくかだ。野党では小沢一郎が最たるものだが、自民党内でも中川秀直、渡辺喜美などが政局がらみの微妙な動きをほのめかしている。与謝野馨がポスト麻生に意欲を見せだしたといううわさもあるが、とてもそんな力はない。風評のたぐいだ。いつでもどこにもいる「敵」の雑音に惑わされずに、ここは2009年度予算編成と税制改正に全力を挙げることだ。それをてこに、態勢の立て直しをはかるべき時だ。まだ麻生批判は就任2か月の“初期不良”に根ざしている段階であり、修理すれば使える。
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