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2008-12-10 07:58

総選挙前の新党か、総選挙後の再編か

杉浦 正章  政治評論家
 新党結成か、政界再編か、いずれにしても動きは急だ。総選挙後などと言う生ぬるいものではないだろう。あきらかに元行政改革担当相・渡辺喜美は選挙前に照準を合わせている。自民党各派はこうした動きに“締め付け”を強めており、麻生擁護の派閥幹部らと、「造反有理」の突出議員らとの間で、食うか食われるかの段階に入った。渡辺が9日に集めた「速やかな政策実現を求める有志議員の会」の中堅・若手議員をみると、明らかに選挙基盤が弱い。このままでは落選必死の危機感がわらをつかむ思いで参加させているのだろう。渡辺の狙いは、ごうごうたる麻生批判の嵐の中で先駆けとなれば、多くの自民党議員が雪崩を打つと読んでいるに違いない。

 発言をみると、もう既に踏み切った感じがありありと出ている。党執行部の公認取り消し、対立候補擁立の圧力に対して、「それは結構なこと。受けて立つ」と息巻いている。いまにも自民党を飛び出しかねない姿勢だ。一方で、渡辺らの裏で糸を引いている元幹事長・中川秀直は「選挙が終わったその瞬間に判断する」と、「自民党離党→新党結成」の可能性を選挙後に設定している。選挙結果を見極めたうえでの行動であり、ためらいが見られる。問題は時間的ゆとりがあるかどうかだ。民主党が圧勝となれば「自民党離党組」などは不要なのだ。いま新党の動きをするからには、自民党にも民主党にも飽き足らない有権者層を取り込まなければ意味がない。出来るだけ多くを引き連れて新党を結成して、メディアの眼を引きつけ、新党ブームを作って総選挙に臨む。これが基本戦略でなくては、何の意味もない。渡辺の狙いもそこにある。

 しかし、渡辺も意気込みだけは盛んだが、その回天の事業を成し遂げるには、いささか人物のスケールが小さい。森喜朗から「お笑いタレントになれ」と言われているように、テレビメディア意識で軽い。後見役の中川秀直も、人望に欠ける。要するに、新党の顔となる人材がゼロだ。自民党離党・新党結成のケースは新自由クラブと新党さきがけのケースがあるが、新自由クラブは河野洋平の下に理念があった。新党さきがけも武村正義中心で重厚さと説得力があった。それでも新自由クラブも新党さきがけも10年しか持たずに消滅した。

 現在の自民党は、あきらかに積年の病弊が吹き出し、賞味期限切れの状態だ。この政治の閉塞感を打ち破るには、新党結成は魅力あるテーマだが、拙速な“泥縄新党”の動きでは、民主党代表・小沢一郎の思うつぼにはまる危険性を内包している。「有志議員の会」で、「野党の内閣不信任案に同調すべきだ」という声が出ることを、小沢はおそらく“舌なめずり”して期待しているに違いない。このように渡辺を取り巻く状況は百鬼夜行であり、果たして何人を集める能力があるか、それともあえなくつぶされて政治生命を終えるか、まさに力量が試される。田中角栄が中川一郎に言った名言「池の鯉も跳ねたはいいが、戻れなければ日干しだ」が、ピタリ当てはまるような気がする。 
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