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2008-12-14 11:23

(連載)失われた「幸福な情景」を求めて(2)

古屋 力  会社員
 サブプライム問題に端を発した現下の国際金融危機は、世界中を巻き込み、大いなる不安を蔓延させている。基軸通貨のドルは大幅安に陥り、このトンネルの先は見えない。かような欧米流のアングロサクソン型モデルの崩壊は、もはや欧米流のパラダイムには限界が来ていることを露呈させ、新たなパラダイムの構築が必要であることを示唆している。片や人類は、深刻な気候変動問題、水問題、食料問題等で、もはや取りかえしのつかないところまで、来てしまっている。ここにきてようやく人類は「環境は経済の一部ではなく、経済が環境の一部である」ことに気付き、行動をはじめようとしている。「地球は人類の必要を満たすことはできるが、欲望を満たすことはできない」と喝破したのは、かのインド独立の父マハトマ・ガンディー(Mahatma Gandhi)である。

 たしかに、我々の住む地球は、その存在そのものが「ガイア」と呼ばれる一個の傷つきやすいナイーヴな生命体のようなもので、人類はこの「ガイア」の中のごく一部を構成する脆弱でちっぽけな存在にすぎない。この「ガイア」の持続的存続なくして、人類の存続はありえない。そのかけがえのない「ガイア」を、愚かなことに、我々人類の果てしない欲望が蝕んでいるのである。地球は人類の無限の欲望を満たすことはできない。我々人類は、自分たち生命体の存続を担保してくれている持続可能な地球環境を丁寧に維持保全してゆかねばならない。そのためには、地球環境と上手におりあいをつけながら生きてゆかなければならない。いまや世界は大きくパラダイム変換の時期に入りつつあるのである。

 はたして人類は、あらたな「解」を見出せるのであろうか。明るい未来を担保できる「明日にかける橋」を構築することができるのであろうか。ここに1つヒントがある。かつてこの地球上に、太古より「環境は経済の一部ではなく、経済が環境の一部である」ことに気付き、生活に取り組んできた民族がいた。「地球は人類の必要を満たすことはできるが、欲望を満たすことはできないこと」を知っていて、自然を克服するのではなく静かに調和しながら生きてきた民族がいた。それは、他ならぬ日本人である。かのオランダ人が「犯しがたい」と畏敬の念で賞賛した「幸福な情景」を持っていた日本人である。

 現下のサブプライムや地球環境問題の深刻な事態を考えるに、あのときのオランダ人が感じた謙虚な感慨は、実は優れた洞察ではなかったかと思う。いまこそ、日本人は自分に胸に手をあてて、太古の昔から引き継がれてきた、そしてともすると失われつつある「幸福な情景」を育めるDNAの鼓動を自覚し、それを丁寧に蘇生する時期に来ていると思う。実はそれが、「JAPAIN」から「PAIN」を取り除いて「JAPAN」を復活させる唯一の道ではないかと思っている。そして、それは、世界の「PAIN」を取り除くことにも貢献できる道なのではないかと思う。(おわり)
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