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2009-01-08 08:00

給付金は弱者救済の寄付に回せ

杉浦 正章  政治評論家
 定額給付金をめぐって政府・与党はまたまた迷走を繰り返しているが、知恵者はいないのか。折からの大不況で弱者救済は爛頭(らんとう)の急務となっている。ここはどう見ても、政治家・高額所得者は給付金をNPO法人や、福祉団体などに対する寄付に回すべきだ。日本にも寄付の文化を定着させる良い機会だ。定額給付金に対する政府・与党の対応は、年明けに急旋回し、「国会議員も辞退せずに、もらって使うべきだ」と幹事長・細田博之が言い出せば、「貰う高額所得者はさもしい」といっていた首相・麻生太郎までが「その時に考える」などと、ぐらついた。いまや“宿敵”となったみのもんたごときから「辞めて貰うしかない」と言われるような隙を作ってしまった。総務相・鳩山邦夫にいたっては「地元でうまいものを食うことになると思う」と、ばかげた発言を繰り返している。

 拙稿は早くも11月11日の段階で「政府は、富裕層の給付金寄付を受け付けよ」と指摘してきたが、これを受けて自治体などでは給付金寄付を取り入れる流れが生じ始めた。東京・足立区は、定額給付金を区民がNPO法人などに寄付した場合、住民税から差し引く方針を決めた。区を通じ、指定された区内のNPO法人や町内自治会、福祉団体などに寄付すると、5000円を除いた額が2010年度の住民税から控除される仕組みだという。国がもたもたしているのに、自治体の方が先行しているのである。

 こうした流れが出始めた中で、驚いたことに「政治家の寄付は、禁止されている」という政府・与党首脳が出て来た。細田は6日昼の政府与党連絡会議で「議員は(公職選挙法上)受け取って寄付することはできない。辞退も予想される。政府として見解を統一する必要がある」と述べた。公職選挙法を知らないにもほどがある。確かに政治家から選挙区内の個人や団体に対する寄附については、公職選挙法第199条の2(公職の候補者等の寄附の禁止)の規定により禁止されている。しかし、それはあくまで「当該選挙区内にある者」に対する寄付行為であり、選挙区外に対する寄付行為は禁止されていないのだ。公選法のイロハも知らないで、幹事長が務まるのか。国・地方の政治家が寄付をすれば、かなりの額がまとまる。

 政治家に限らず、「富裕層」も寄付行為には特典がある。寄付金はほとんど税金の免除になっているのだ。高額納税者は上手に寄付すると、減税になる。そんなことはとっくに承知で、寄付をしている高額所得者も多い。慈善家カーネギーの例をとるまでもなく、欧米では所得を社会に還元するというキリスト教思想に基づいて、大規模な慈善活動が展開されている。政府・与党が音頭をとれば、富裕層に限らず、一般市民のあいだでも、給付金の幾ばくかを寄付する流れが生じよう。いまの社会情勢を見れば、金融・経済危機の波を弱者がもろにかぶって、失職者が町にあふれ出している状況だ。政府・与党は、ここは知恵を出して、給付金を弱者対策の寄付金に回す道を、早急に検討し、打ち出すべきだ。首相は率先して、給付金を受け取り、寄付に回すべきだ。そうすれば低迷する人気もやや回復するだろう。
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