国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-02-02 11:08

辟易するオバマご祝儀報道の陰で

石川 純一  フリージャーナリスト
 米国にオバマ民主党政権が誕生した。米史上初の黒人大統領の就任式直前、ガザに侵攻してイスラム原理主義勢力ハマスを叩きに叩いていたイスラエルが、一方的に停戦し、これを受ける形でハマスも軍事行動をやめた。米国民が自国の新たな国家元首にお祭り騒ぎを繰り広げるのは当然だが、日本のメディアがご祝儀のような報道を展開するのは、毎度のことながら辟易する。

 米議会は1月8日の上下両院合同会議で、2008年11月の大統領選を受けて、12月に行われた計538人の選挙人による投票の公式集計を行った。その結果、民主党のオバマ大統領候補、バイデン副大統領候補が365票を獲得、173票だった共和党のマケイン、ペイリン正副大統領候補を破ったことを公式に確定。この20日に第44代大統領に就任したオバマ氏は結局、ニューヨーク州、カリフォルニア州など民主党の地盤に加えて、フロリダ州、ペンシルベニア州、オハイオ州などの激戦州や、共和党が伝統的に強いノースカロライナ州でも勝利して、ホワイトハウス入りしたわけだ。

 が、このお祭り騒ぎをよそに、米国は大恐慌以来最長のリセッション(景気後退)に向かっている。経済の約7割を占める消費、そして景気悪化の元凶である住宅市場が上向く兆しは乏しく、エコノミストの間ではマイナス成長が2009年第2・四半期まで続くとの見方が支配的だ。失速を続ける米経済の着地点はまだ見えない。他方、「史上最悪」の評価を残して去っていったブッシュ前大統領は、本当に最悪だったのか。これまで最悪とされていたのはウォーターゲート事件で辞任したニクソン元大統領。だが、ニクソン共和党政権が、南ベトナムで示したがんばりがあったからこそ、北ベトナムの脅威と共産主義の伸張を彼の地で食い止め、東南アジア全域が共産化されるのを防いだのではないか?

 非難されるべきは、ニクソン共和党政権率いる米国との間で結んだベトナム和平ジュネーブ協定をほごにし、軍を南ベトナムに進め、「民族独立」の美名の下にサイゴンを制圧した北ベトナムの共産政権である。彼の地で戦死した米軍将兵は、決して犬死にしたわけではなく、東南アジアの現在の繁栄の礎となった。そして世界史的には、ソ連邦を崩壊させ、米ソ冷戦を終わらせる先兵となったのだ。

 ブッシュ政権の場合も、本当の意味では、今評価を下せる段階にはない。真珠湾以来の米本土攻撃となった2001年の同時多発テロを受けて、ブッシュ政権が発動し、今も続いているアフガン、イラクでの戦いがもしなかったとしたら、国際テロ組織アルカイダに象徴されるイスラム原理主義との闘いはどうなっていたのか?オバマ大統領に対するご祝儀報道とは別に、冷静な分析が必要とされる。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム