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2009-02-04 19:06

ポスト京都への日本のメッセージ

鈴木 馨祐  衆議院議員
 思い返してみれば、一年前の一番の課題は原油価格の高騰であったことを思えば、経済情勢の移り変わりの早さ、激しさを改めて感じさせられる。原油価格高騰の際には、バイオ・エネルギーや省エネ技術等にも注目が集まり、世界的にも地球温暖化問題への対応が注目された。今はエネルギー価格も落ち着き、肌で感じる必要性が薄くなったからであろうか、環境問題への注目度も世界的にやや低下しているように感じる。

 しかし、今年は2013年以降のポスト京都議定書の地球温暖化対策の枠組みを決める上でも非常に重要な年である。地球温暖化対策は、温室効果ガスの排出量をいかに削減することができるかにかかっているわけだが、今の状態で温暖化のペースを一定に保つためには、今の数値に比べてどのくらいの削減が必要かについてはある程度のコンセンサスがあり、今後の世界の成長余力を考えても、大体の削減幅の必要性という総論では、大体の合意がある。ここまでは科学の論理で話ができる。しかし問題はここから先だ。それぞれの国が一体どのくらいずつ負担する必要があるかについては、それぞれの国が国益、エゴをむき出しにした「政治」の世界、まさに国際政治の話となってしまっている。削減の基準年の置き方、削減を総量で行うか、エネルギー原単位で行うか、といった議論は、もはや科学ではなく、政治にすぎない。

 世界でもトップクラスのエネルギー効率を実現している日本は、もちろん自らも更なる削減を行っていく必要があるのは当然だが、科学的に現時点で到達することのできる現実的なモデルとして、科学的なアプローチをもっと主張すべき立場にある。自らの経験を考えても、途上国については、政府がコントロールしやすく、かつ科学的な計算が成り立ちやすい産業セクターや運輸セクターと、個人という意志決定者の意志に左右される民生セクターについては、削減目標の算出根拠を変える、といったきめ細かい現実的な方策を提案することも重要である。

 そして、私もこれまで自民党の会議でも政府に主張してきたことだが、中期目標といったものも、その算出方式を各国に任せることは明らかに非科学的であり、少なくとも削減ポテンシャルも含め、中期目標などの策定に当たっては、世界で共通の算出モデルを適用するべきである。ブラックボックスから出てきた目標値で角突き合わせるのではなく、どのようなモデルがもっとも科学的かを検証することこそが、今日本が世界に向けて主張すべきことである。アジア太平洋パートナーシップをはじめとして、産業部門については知見も蓄積されてきている。まだ間に合う今のうちにこうした提案を積極的に日本として発信していくべきであろう。科学的なデータを元に科学的なアプローチで各国の削減ポテンシャルを確定させた上で、そのために必要な技術的コストを誰が負担するのか、技術の開発者であるメーカーが技術供与するのか、先進国が負担するのか、当事者である途上国が負担するのか、を議論すべきである。

 個人的には開発インセンティブを抑制し、今後のイノベーションをつぶさないためにも、技術移転・供与により開発者がコストを負担するのはフェアではないと思うので、知的財産権の問題に触れない形でのビジネス・ベースでの技術移転を行った上で、新興国をのぞく途上国においては、先進国が必要に応じて基金等から必要コストを負担するというのが、あるべき姿と考えるがいかがなものであろうか。
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