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2009-02-27 21:07

オバマ大統領の施政方針演説について

関山 健  東京財団研究員
 2月24日夜、オバマ大統領が議会上下両院合同会議で就任後初の施政方針演説を行った。まず最初に、外交に比べて圧倒的に経済に関する内容が多いことが印象的だ。本来、施政方針演説は経済だけをテーマにするものではないにも関わらず、これだけ経済に関する内容が多いのは、やはり国内経済に対するオバマ大統領の危機感の現れと見ることができる。オバマ政権の最優先課題は「経済対策」ということを改めてアピールしたことになるだろう。その内容については、合格点と言える良い演説だったと評価できるだろう。以下に、私の感想を述べるが、この演説によって、オバマ政権が取り組むべき経済対策のメニューとプライオリティが明確に示されたと言えよう。あとは、これに従って実行に移せるかどうかである。

 まず、これから取り組む経済政策のプライオリティを明確にしている点が評価できる。(1)演説の冒頭で、雇用対策や勤労者減税に言及して、庶民の生活に配慮していることをアピールし、(2)次に金融システムの再生に取り組む姿勢を強調し、(3)さらに将来の成長力向上につながる投資を約束した。目新しい政策はないが、オバマ政権が取り組む経済政策のメニューが明確に示されたと言えよう。

 演説のなかでオバマ大統領は、これから足元の景気対策と長期的な財政赤字削減を両立させていくうえで、世論と議会から出てくるであろう不満や批判の芽を巧みに摘んでいる。例えば金融再生について、オバマは、あえて「今銀行を助けるように見られることが、どれほど不人気であるかも承知している」と述べた上で、「私はウォール街の重役たちの利益のために、1セントたりとも支出するつもりはない。ただ、私は、従業員の給与を支払えない小企業や、貯蓄しても住宅ローンを組めない家族を助けるためには、あらゆることをするつもりだ」と述べている。これは議会からの批判を意識した内容だ。

 オバマが、演説のなかで共和党を攻撃するようなことはせず、むしろ政府と議会が一致して経済危機に挑む雰囲気作りに努めているのも印象的だ。例えば、オバマは、財政再建について「民主党員であれ、共和党員であれ、この部屋にいるすべての人が、予算がないために、いくつかの価値ある優先課題を犠牲にしなければならない」と指摘し、超党派の取組みを呼びかけている。こうした超党派の雰囲気作りは、今後早期に予算を成立させ、関連法案を議会で通過させるためには、重要なことだ。

 演説の中でオバマは、「私の予算は米国のためのビジョンであり、我々の未来への青写真だと考える」と述べ、3年後、5年後、10年後を見据えた未来志向の政策を強調している。5年後、10年後にアメリカは復活するというビジョンを示すことで、当面の景気低迷や予算切り詰めへの支持を得ようとしている現れだ。アメリカ国民が、この演説をどう評価するのかは興味深いが、私の知人に聞く限りでは、概ね評判は良いようである。では、オバマ氏の演説によって、アメリカ経済が再生できると信じることができるか?それは、オバマ政権の今後の行動にかかっているのは言うまでもない。

 
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