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2009-04-01 08:46

(連載)中国の国際戦略と日本(2)

関山 健  東京財団研究員
 次に、これらの国家利益を脅かしうるリスクは何か。中国にとって国家利益に対する最大のリスクは、建国以来常に国内の不安定要素だったとも言えるし、国際関係においてはアメリカとの対立こそ最大のリスクだとする向きもあろう。しかし、王緝思院長は、外部リスクの源泉は特定の国家ではなく、具体的な問題だと指摘する。すなわち、アメリカやロシアが中国の国家利益を脅かすのではなく、例えば、世界的な経済不安、エネルギー危機、環境破壊といった具体的な問題が中国の国家利益を脅かすのだという。

 国際戦略とは、そうした外部リスクに対応するために、いかに他の大国との二国間協力を進めたり、周辺諸国と協調したり、国連などのマルチ外交を展開したりするか、だという。この点、アメリカのフレッド・バーグステンが、“Foreign Affairs”誌昨年7~8月号の論文「対等な協力関係」(A Partnership of Equals)の中で、「アメリカは中国との対等な協力関係の下で、今後の世界を主導すべきだ」と主張しているのが、注目される。

 しかし、王緝思院長は、こうした米中のG2構想については否定的だ。安定的な周辺環境のなかで調和のとれた発展を目指す中国にとっては、多くの国ぐにとの互恵的な関係の構築こそが目指すべき方向だという。

 同様に、中国社会科学院アメリカ研究所の黄平所長も、G2構想が日本、韓国、インドなど中国の周辺国に与える影響に鑑みて、「中国がアメリカとG2の形で世界の業務を取り仕切るという構想は、検討に値しない」とする。黄平所長は、アメリカ、日本、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダからなるG7も既に時代遅れであるとして、「中国やインドなどの発展途上国を含むG20の枠組みにおいて、より重要な役割を演じ、グローバルな対話と協力を促進していかなければならない」という考えを表明している(『チャイナ・デイリー』3月19日号)。(つづく)
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