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2009-04-03 09:39

(連載)中国の国際戦略と日本(4)

関山 健  東京財団研究員
 中国外交にとって最も重要な二国間関係はどの国との関係か。この点、米国が最も重要な外交相手であることは間違いない。では、二番目に重要な国はどこだろうか。ロシアであろうか。EUであろうか。台頭著しいインドであろうか。この点、王緝思院長は、「日本こそ中国にとって二番目に重要な国だ」と主張する。なぜ日本が米国に次いで重要なのか。端的に言えば、日本が中国にとって米国に次いで重要な(単体の)経済パートナー国だからである。加えて、「日本には、中国が学ぶべき点が数多く存在する」と、王緝思院長は言う。

 「かつて中国は、日本の高度成長に学んだ。いまや、成長スピードでは中国が日本を上回るようになったが、例えば農業効率、環境保護、省エネ・新エネ、ガバナンス、公衆衛生、社会保障など多くの点で、日本は世界最先端の技術やノウハウを有しており、米国以上に学ぶべき点は多い」と王緝思院長は言う。
日米同盟は、中国にとって脅威ではないのだろうか。これについて、王緝思院長は、「中台関係さえ安定していれば、中米日の間で大きな対立は生じないだろう」と楽観的だ。日本は中国の国家利益のすべてに多かれ少なかれ関わっており、東シナ海や台湾周辺で摩擦はあるものの、どれも中国の国家利益を脅かすほどのリスクではない、というのが王緝思院長の認識だ。また、「日本は、中国とイデオロギーこそ違うが、欧米ほど人権問題など中国にとって敏感な問題を強調したりはせず、その分だけ良好な関係を築きやすい」と言う。

 「中国は、数年内に日本のGDPを抜くだろう。そうすれば、日本人としては快くないかもしれない。しかし、むしろ中国としては今後一層、日本との協力関係を強化していきたいのだ」と王緝思院長は力を込める。「主権独立、安全保障、経済発展という国家利益を追求する中国の国際戦略において、日本の重要性は今後も決して失われることはない。むしろ中国としては、科学的発展を実現するために、日本の農業、環境保護、省エネ・新エネ、ガバナンス、公衆衛生、社会保障などに関する技術やノウハウを学んでいく必要があり、そのためには両国政府間の関係強化はもとより、民間主導の協力を今以上にもっともっと増やしていくことを希望する」というのが、王緝思院長の持論である。

 最後に、王緝思院長は「自分は日本に対する理解が深くないが、それにしても、日本の国際戦略は見えてこない」とつぶやいた。お互いが自分の思うところを率直に語り合って、はじめてウィン・ウィンの関係ができる。月並みではあるが、やはり日本に問われているのは、日本自身の戦略を明確に持って行動できるかどうかであるようだ。(おわり)
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