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2009-04-09 07:56

問題発言を斜めに切れば

杉浦正章  政治評論家
 政治家や官僚の発言には傾聴すべきものも多いが、いささか的外れなものも散見される。その「的外れ」を斜めに切って、時局のポイントを解説する。

★「宇宙開発の権利の問題だ」と、中国外務省の女性報道官・姜瑜の発言。北朝鮮のミサイル発射問題で国連安保理における中国の立場を端的に表明したものだ。姜瑜はスペイン紙のインターネット投票における「世界で最も美しい女性政治家」で37位にはいったほどの容姿端麗。共産圏にしては感じのよい報道官だが、北のミサイルを「宇宙開発の権利」と主張するのはいささか見当外れではございませんか。その証拠はいくらでもある。「人工衛星・光明星2号打ち上げ成功」を歓迎する8日の平壌市民大会で、最高人民会議常任委員長・金永南(キムヨンナム)の右隣に、軍需工業担当を長く務める全(チョン)ビョンホ党書記とみられる姿があったことだ。読売新聞によると、「これは衛星名目の弾道ミサイル発射が、軍事利用目的で推進されたことを物語るものだ」という。演説に立った党書記・崔泰福(チェテボク)が「強盛大国の大門をたたく最初の砲声を上げたことに大きな意義がある」と“本音”を公言しているではないか。強盛大国とは地域の軍事大国を目指すことにほかならない。人工衛星が「最初の砲声」とは笑わせる。それにつけても国際社会では「失敗」の見方が定着しているにもかかわらず、将軍様をたたえる歌を流して、北の“衛星”はまだ回っているのだろうか。北は「大本営発表」まで真似してどうする。口コミで「失敗」はかならず伝わる。さすがに姜瑜も「衛星が回っています」とは言えまい。

★「辞めさせるべきか、粘るべきかか、そこが問題じゃ」と、民主党幹事長・鳩山由紀夫がハムレットの心境を8日吐露させた。「代表を辞めさせ、政権交代しやすくするのか。逆に、粘り腰で屈しなかった民主党の姿を見せることで、国民に評価されるのか。大変難しい状況であることは間違いない」と述べたのだ。常々思っているのだが、鳩山は人のよいお坊ちゃまだ。この人ほど自分の心中奥深い部分をしゃべってしまう政治家も少ない。正直でよいのだが、永田町で「人がよい」とか「正直だ」といわれるのは、褒め言葉ではない。失礼ながら「バカ」の代名詞でもある。だから海千山千の代表・小沢一郎に操られるままなのだ。鳩山は「このまま行って政権交代が実現できるのか。さらに際どい状況になってきていることも実態として認めざるを得ない」とも述べた。しかし、鳩山の言う「実態」はとっくに突きつけられている。一月前の秘書逮捕時がそれだ。あの時点で「代表辞任・新代表選出」でけりをつけておけば、「際どい状況」に至らずに、まだ民主党優勢が保てた可能性が強い。それにしても小沢は往生際が悪い。

★「向こう(北朝鮮)は核を保有している。日本も『核を保有する』と言ってもいいのではないか」と、自民党の7日の役員連絡会で組織本部長・坂本剛二が北朝鮮のミサイル発射に対し、核保有論を展開した。決議がまとまらないなら「国連を脱退せよ」とも述べたという。自民党は北のミサイル打ち上げという重大事態に際して、役員会で“床屋談義”をやっているのかと言いたい。北の核に核で対抗という発想は、町の床屋で隠居じいさんが理髪師相手に息巻いているような感覚だ。組織本部長は自民党組織図では幹事長と並ぶ重要な役職。荒唐無稽(むけい)な核保有論や、だだっ子のような国連脱退論は、北が喜ぶだけだ。役員会で発言するなら、「敵ミサイル基地先制攻撃論」だろうが、そこまで勉強が行っていなかったとみえる。さすがに前副総裁・山崎拓が「『日本も核武装して北朝鮮に対抗しよう』という意見が、公然と党の会議で言われることは非常に憂慮すべきだ。極端に言えば、人類を破滅に導く議論だ」と戒めた。官房長官・河村建夫も「非核3原則を持つ国として、そういう選択肢はあり得ない」も冷静だ。
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