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2009-04-10 08:34

(連載)G20ロンドン金融サミットをどう評価するか (1)

関山 健  東京財団研究員
 4月3日にロンドンで開催された第2回G20金融サミット後の記者会見で、アメリカのオバマ大統領はこのサミットを「世界経済再建に向けた転換点」と評価し、「歴史的な会議」だったと述べた。オバマ大統領のこの評価は、誇張し過ぎかもしれないが、昨年12月に開催された前回の金融サミットに比べれば、中身の充実した会議だったのではないだろうか。ところで、現在世界を襲う金融危機に対して、世界の首脳が行わなければならないことは大きく分けて2つあると思う。一つは危機からの脱却であり、もう一つは危機の再発防止だ。

 危機の最中にある我々は、将来のことを考える余裕がなく、ついつい危機脱却のための財政措置に注目しがちである。この点、各国は、自国の経済を守るため、既に多額の財政措置を決定・実施している。しかし、いま世界の主要経済国の首脳が一堂に会して議論すべきことは、各国が行う財政措置の規模ではなく、世界全体で取り組むべき危機の再発防止策だと思う。再発防止策を準備することで金融システムの信頼回復につながり、最終的な危機からの脱却につながるとも言える。

 こうした観点からロンドン金融サミットが発出したコミュニケを見てみると、財政措置については、たしかに5兆ドルという金額は各国が既に決定済みの金額を足し上げただけの数字であるが、今後世界が取り組むべき危機の再発防止策については、金融監督規制の強化や国際金融機関の強化などの分野で多くの具体的な計画が合意された。今回の世界金融危機を招いた構造的な要因は、信用バブルの発生を許した「行き過ぎた金融自由化」にあると考えられる。特に、従来の制度では十分な規制の枠に入っていなかった投資銀行、ヘッジファンド、格付け機関に対して、適切な規制を加えることが必要だろう。

 加えて、グローバル化した金融取引に対応する国際的な規制監視の枠組みを欠いたため、問題を世界規模に深刻化させる結果となった。また、世界の為替取引額が1日1兆8000億ドルにも上る現在、世界的な金融危機から小国を救済するには、2500億ドルという現行IMFの出資総額では少額にすぎる。
今回の首脳コミュニケでは、これらの問題への対応方針が盛り込まれている。これらは積極的に評価すべきものであろう。(つづく)
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