国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-04-11 12:07

(連載)G20ロンドン金融サミットをどう評価するか (2)

関山 健  東京財団研究員
 さらに、今回の危機発生の直接原因ではないものの、アメリカ一国の経済金融状況が世界中に大きな影響を与えうる状況も反省されねばなるまい。すなわち、今回の金融危機によって、特定国の通貨を基軸通貨とする国際経済システムは、その基軸通貨国の経済金融情勢から影響を受けやすく、脆弱であることが改めて認識されたといえる。この点、私は、コミュニケにIMFのSDRの積極活用が盛り込まれたことに注目している。

 SDRは、いわば世界共通通貨の卵のようなものである。かつて欧州において、ECUという共通通貨の卵からユーロという実際の共通通貨が生まれたように、SDRの積極活用によって、世界経済も将来的にはドル基軸通貨体制から脱却していくことが可能となるかもしれない。ただし、今回のコミュニケは対応策の計画と方向性が示しただけである。本当に世界が今回の危機を脱却し、危機の再発を防げるかは、この計画に従って各国政府や国際機関が実際に行動できるかどうか、にかかっているのは言うまでもない。

 国際社会における合意形成は、参加国が増えれば増えるほど困難になるものである。20カ国が参加する現在のG20金融サミットは、全員がそろって合意を形成するには、参加国数が多すぎる。したがって、計画を実行していくにあたっては、強いリーダーシップが必要となる。しかし、かつて第二次世界大戦後にブレトン・ウッズ体制の構築をリードしたアメリカは、もはや相対的な力を落としており、新たな制度構築を単独でリードする力はない。

 私は、アメリカ、日本、中国、EUの四極体制が、G20のコアとなって、今後の世界経済をリードしていくことになるのではないかと見ている。したがって、コミュニケに示された計画がどこまで実行に移されるかは、これら日米中欧の四極がどこまで協調しあえるか、にかかっていると言えるだろう。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム