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2009-11-09 19:56
オバマ来日の注目点:米中間における日本の存在感
関山 健
東京財団研究員
11月12日、アメリカのオバマ大統領が初めて来日する。昨今のぎくしゃくした日米関係を背景に、数日前までキャンセルの噂も流れていたが、アメリカとしてアジア重視・日米関係重視の姿勢を示すためにも、予定どおり日本を訪れるようだ。民主党の鳩山政権の下で、日米関係が動揺していることは周知の事実である。その最大の原因は、鳩山政権の対米外交方針が未だ定まっておらず、左右に揺れ動いているからだ。民主党内には、日米同盟を支持する自民党に近い現実主義者と、日米同盟に消極的なリベラル派の双方が混在している。また、民主党が衆議院で過半数をとっても、参議院では過半数を保持していないため、日米同盟に反対する社会民主党と連立を組まなければならない。このように対米外交方針について政権内で意見が統一されていないために、民主党の対米外交方針は右に左に大きく揺れ動き、予測しにくい状態が続いている。
そして、先が見えないだけに、これまで日本が進めてきた米国との緊密な同盟関係に急激な変化が生じるのではないかとの不安が広がっているのが、日米関係の現状だ。今回のオバマ大統領の訪日は、シンガポールで開催されるAPEC首脳会議出席のついでにアジアを歴訪する一環に過ぎず、特に注目すべき課題があるわけではない。日本のメディアは、沖縄普天間基地移設問題の決着に注目しているが、鳩山首相が同問題の解決を急がないと言っている以上、これについても大きな進展はないだろう。
私が注目しているのは、今回の訪日中にオバマ大統領が対アジア外交の方針に関するスピーチを行うかどうかだ。オバマ政権は、発足後一貫してアジア重視の姿勢を鮮明にしてはいるが、実はオバマ大統領自身が包括的な対アジア外交方針を語ったことは、今までほとんどない。したがって、今回のアジア歴訪中にオバマ大統領が対アジア外交の方針に関するスピーチを初めて行うのではないかと注目している。さらに、もしスピーチを行うとすれば、その場所も注目を要する点だ。オバマ大統領が初めてのアジア政策スピーチを東京で行うか北京で行うかは、アジアにおけるパートナーとして日本と中国のどちらをより重視しているかを計る目安になるだろう。
また、気候変動問題について、日米でどのような合意がなされるかも注目される。気候変動問題を重視している鳩山政権にとって、アメリカから具体的なCO2排出削減の約束を引き出せれば大きな成果である。国民受けも総じて言えば悪いはずはなく、低迷傾向にある支持率の浮揚効果も期待できよう。しかし現実には、残念ながら世界の二大CO2排出国である米中の間で今後のCO2排出削減の国際枠組みの基本ルールが決められてしまう可能性が高い。米中の間で日本がどれだけ存在感を発揮できるか、それが今回のオバマ大統領訪日の注目点だと言っても過言ではなかろう。
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