e-論壇「議論百出」 e-論壇「議論百出」 グローバル・フォーラム グローバル・フォーラム
 「議論百出」へようこそ。投稿へのコメントでないご意見は「新規投稿する」ボタンをクリックして投稿してください。
 なお、投稿記事を他所において引用、転載する場合は、その記事の出所が当e-論壇であることを明記してください。

投稿日で検索  //// 
キーワードで検索   
※キーワードはスペースで区切って複数の言葉を入力できます。
  <<前の20件 | 最新|次の20件>>  [ スレッド一覧 | タイトル一覧 | *投稿一覧]
(連載2)自由放任のネットテレビの公共性 ← (連載1)自由放任のネットテレビの公共性  ツリー表示
投稿者:中村 仁 (東京都・男性・元全国紙記者・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-20 12:28 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3511/3511
 ネット事業者が参入してくると、「テレビ番組の質の低下を招く」と、社説で警鐘を鳴らす新聞もあります。どうでしょう。民放の番組の質はすでに低下しており、この批判はあたりません。それより最大の問題点は、「政治的公平性」が柱になっている放送法第4条の削除です。政治は政権批判が厳しいと、「政治的公平性に欠ける」として、報道番組に介入してきたことが少なくなく、民放ばかりでなく、NHKとのあつれきもありました。規制緩和論者からは「4条がなくなれば、自由な政治的主張ができるようになるから喜ぶべきだ」との主張を聞きます。どうなのでしょうか。第4条の削除に対し、「政治的権力を持つ側が自分たちに有利な番組を作成して、視聴者に提供できるようにするのが狙い」、「政権批判ばかりしていると、ネット事業者の参入を促すぞ。政権批判をほどほどにしておけ」、「政権側は本気ではない。政治的な脅しに過ぎない」、「新聞、テレビも観ず、ネット依存の無党派層を取り込む」など、様々な見方ができます。とにかく、少なくとも「政治的公平性に欠けると言ってきた政権が、第4条を削除するなんて、明らかに政治的思惑が潜んでいる」と、考えるべきなのでしょう。もう一つ。規制を緩やかにするからといっても、電波には公共性があり、信頼性を低下させるわけにはいきません。

 参入する事業者の考え方を知りたいですね。「公共性や信頼性とは何であり、どうやってその基準を決めるのか」という問題があります。参入してくる事業者には「ネットの世界に通用しない考え方だ。公共性や信頼性に欠ける事業者は視聴者から見放され、淘汰されていく原理、原則に任せるしかない」と片づけるのだとしたら、それは利害関係者が決めることではなく、利用者が決めることです。

 ネットの世界は玉石混交で、だめなものは見放され、淘汰されるという原理に任せる。「利用者が公共性や信頼性を求めているのなら、そうした努力をしている事業者は生き残るはずだ」という考え方ですね。新聞には新聞法があるわけではないのに、信頼性を高める自己努力をしています。それでも記事のねつ造、誤報事件が起きます。その結果、淘汰されるかどうかは、読者の選択に任せる。新聞の場合はそれでいいのでしょう。

 放送事業も同じ扱いをするしかないというのなら、それは事業者が決めるべきではありません。今回の方針を打ち出しているのは、政府の規制改革推進会議です。利害関係者が中心の集まりでしょう。広く国民の声を集めるべきです。(おわり)

(連載1)自由放任のネットテレビの公共性  ツリー表示
投稿者:中村  仁 (東京都・男性・元全国紙記者・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-19 18:56  
>>>この投稿にコメントする
3510/3511
 安倍政権が検討している放送事業の見直しに対し、テレビ局、親会社にあたる新聞社から猛烈な批判が巻き起こっています。論点が多岐にわたり、何を重視するかはそれぞれの利害で異なります。今後、放送と通信の垣根がなくなるといっても、放送法の第一条の「公共の福祉(利益の意味)に適合するように規律し、その健全な発展を図る」という精神をどう継続させるかを私は重視します。テレビ、新聞側の反論は新聞紙面などで知ることできるのに対し、放送業務に参入したいネット事業者が「公共の福祉」、「善良な風俗を害しない」、「事実を曲げない」などをどう考えているのか、考えていくのか、もっと知りたいですね。

 放送業務と通信事業が一体となった新しい法律、新しい事業が生まれてくる、発展していくとしても、放送業務の社会的責任、公共性を自覚することは今後も変えてはいけないと思います。ネットの世界は、情報の広場、雑踏というか、情報の群衆のようなものでしょう。伝統的なメディア、政府や民間一般の機関などが発信源になっているものもあれば、群衆の流れのようにとらえどころがないものもあります。従ってネット全体に政府規制、法律的な規制をかけることは物理的に不可能です。ただし、電波を使った放送事業は公共財です。利害関係者が集まって方向性を決めるのでなく、利用者、視聴者の考え方を重視すべきでしょう。

 見直しの原案にある「民放の放送設備部門と番組制作部門を分離」が実現できれば、ネット事業者は自分たちの番組(ソフト、コンテンツ)を「放送設備会社」の設備を借りて社会に送ることができるようになります。電力事業における発電(番組)と送電(放送設備)の分離に似た姿でしょうか。ここに新規参入したネット事業者には社会的責任、公共性を守る責任が生じるのだと思います。「これからのネット時代は規制はそぐわない」ではすまされません。

 すでに「Abema TV」のように、地上波テレビと同じように、ニュース、ドラマ、アニメ、バラエティなどの番組を見られるネットテレビが存在します。地上波の設備を借りることができるようになれば、もっと事業を拡大できると考えているのでしょう。現在の民放テレビの番組はどの局も似たり寄ったりで、同じタレントがいくつもの局の番組に登場し、同じようなことを言う。飽きますね。民放の番組作成力が落ちていますから、新しいアイディアを持ったネット事業者が参入すれば、活性化するし、テレビ離れが進む若い世代を引き付けることができるかもしれません。既得権を守ってきた垣根を取り払う効果はあるでしょう。(つづく)

(連載2)世界秩序の枢軸のユーラシア回帰は何をもたらすか ← (連載1)世界秩序の枢軸のユーラシア回帰は何をもたらすか  ツリー表示
投稿者:宇山 智彦 (北海道・男性・北海道大学教授・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-19 11:00 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3509/3511
 今日の権威主義体制はかなり洗練されており、20世紀の粗野で暴力的な権威主義体制とは性質を異にしています。ある程度ガバナンスも高め、それぞれの国民の間で実際にかなり人気があります。そしてさまざまな国の権威主義的指導者は、互いの経験を学び合い、協力し合っています。特に中国は、開発途上国の独裁的指導者にとって、魅力的なモデルとなっています。政治的な自由化・民主化をしなくても経済発展が可能であることを示しているからです。中国はまた、途上国に対する投資と経済的援助を極めて活発に、しかも民主諸国が作ったルールに縛られずに行っています。このような状況は、中国とロシアが国内の権威主義体制を国際政治のアセット、資産として使うことを可能にしています。

 第3に、大国間の競争の激化はユーラシアの小国にリスクとチャンスの両方を与えています。一般に大国間の競争はより小さな国の主権を損なう可能性があります。クリミアを併合することによって、ロシアは大国がより小さい国の領土を奪うという危険な前例を作りました。同時に大国間の競争は、そこから利益を得ようとする小国にとっての交渉、バーゲニングの余地を増やす可能性があります。例えば東南アジアや中央アジアの各国は、中国、日本、韓国、ロシア、欧米諸国などからの援助や投資のオファーを天秤にかけることができます。いずれにしても、ユーラシアにおける国際関係は、国力の違いを問わない平等なパートナーシップという理想からますます遠ざかっています。中国は「国際関係の民主化」を主張していますが、これは実際には、中国とアメリカの関係を対等なものにせよということを意味しており、他の小国と中国の関係を対等なものにするという意味ではありません。国連を根本的に改革するなど、新たなグローバル・メカニズムを確立しなければ、大国と小国の間の平等な関係は保証できないでしょう。

 言うまでもなく、世界政治が権威主義と大国間競争に傾いていく現在の流れがいつまで続くかは誰も予測できません。短命で終わったり、方向を変えたりするかもしれませんし、長く続くかもしれません。日本では、「既存の世界秩序」、すなわち米国中心の世界秩序を維持することが重要だと考える傾向がありますが、もしもアメリカ自体が予測不能で攻撃的な国になったら、その秩序を守ることにどういう意味があるのでしょうか。また、中国を封じ込めよという意見も時に聞かれますが、覇権の歴史が教えているのは、台頭する勢力を無理に封じ込める試みは、侵略者に対する無分別な宥和政策と同じくらい危険になり得るものであり、しばしば悲惨な戦争につながるということです。

 ですから重要なのは、大国間の競争を煽るのではなく、諸大国の攻撃性を減らし、平和的な共存を保つことです。そして、特に強調したいのですが、自由民主主義国家が世界の指導者たり続けなければならないということを証明するためには、自由民主主義国家のほうが、権威主義国家よりも発展途上国を助け民主的国際秩序を構築する能力があるということを示さなければなりません。武力よりも実例で示す、模範の力が重要なのです。(おわり)

(連載1)世界秩序の枢軸のユーラシア回帰は何をもたらすか  ツリー表示
投稿者:宇山 智彦 (北海道・男性・北海道大学教授・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-18 11:09  
>>>この投稿にコメントする
3508/3511
 歴史的に見て、広い地域に影響力を持った国のほとんどは、アジアかヨーロッパの中に存在していました。古代から第二次世界大戦まで、世界秩序の中心は常にユーラシアにあったと言ってよいでしょう。冷戦期は世界史の中でも例外的な時代で、ユーラシアから遠く離れたアメリカが最も強力な国となり、世界のほぼすべての地域に対する影響力をめぐって、ユーラシア国家ソ連と競争をしていました。この状況は、輸送手段や通信手段の発展、また長距離ミサイルの開発と相まって、時に一つの幻想をもたらしました。超大国は地理的な制約や歴史的な条件を超えて影響をふるうことができるという幻想です。この幻想は冷戦の終結後さらに強まり、唯一の超大国であるアメリカが、一方的かつ無謀な行動をとりがちになりました。現在進みつつある、アメリカを中心とした世界秩序の浸食は、世界秩序の枢軸が徐々にユーラシアに戻ることを意味します。これはさまざまなことをもたらしていますが、ここでは3つ指摘したいと思います。

 まず、地理的・歴史的条件の重要性が、再び明白になってきているということです。ユーラシアは、多様な文化と複雑な歴史的相互関係を持つ地域が接し合う場所だからです。最も大きな非西洋の2カ国である中国とロシアは、かつては大帝国であり、周辺地域に大きな影響を及ぼしていました。しかし、中国の覇権的な地位は19世紀後半に西欧諸国と日本によって転覆されました。またロシアの超大国としての地位は、ソ連が冷戦に実質的に敗北し、1991年に最終的に崩壊した結果、失われました。現在は両国とも、歴史的な屈辱を晴らそうとして、地理的な近接性・接続性や歴史的なつながりを使いながら、勢力圏を回復し、グローバルなプレゼンスを高めようとしています。アメリカとその同盟国は、中ロが地理的な接続性や歴史的な関係を巧みに利用できるような地域で両国と競争する際に、困難に直面しています。これは特に中央アジアの場合で顕著です。

 他方、歴史は国際関係に悪影響を及ぼす場合もあります。多くの中東諸国は歴史的経験に基づいて欧米に不信感を持っています。同様のことは、一部の中東欧諸国とロシアの関係、一部の東南アジア・南アジア諸国と中国の関係についても言えます。

 第2に、世界の多くの地域で自由民主主義が危機に直面している現在、自由民主主義と権威主義の対立が国際関係と最も密接に関係しているのは、ユーラシアです。ロシアと中国の支配者は「カラー革命」を恐れています。特にロシアはグルジアやウクライナなど、民主的なスローガンを掲げ西側の支持を得た人々が政権を取った近隣諸国に対して、攻撃的な態度をとっています。ロシアの攻撃は非難されるべきですけれども、状況を複雑にしているのは、他の国々、最も典型的には中央アジアと中東の少なからぬ人々が、西側の民主主義推進に対するロシアの反感を共有しているということです。西側の態度は、異質な価値観を押しつける試みであり、国家・民族のプライドを傷つけ、主権を掘り崩すものだと認識されているのです。ヨーロッパにおいてでさえ、一部の右翼グループはプーチンを「伝統的価値観」の擁護者、望ましくないグローバル化の反対者として賞賛しています。このような意味では、ロシアは孤立していないのです。そしてロ中その他の国の内部では、権威主義的な指導者はその体制をアップグレードしています。国民の深刻な不満を引き起こすことなく権力を維持するために、さまざまな政治技術を駆使しているのです。(つづく)

防衛産業の発展と韓国について   
投稿者:真田 幸光 (埼玉県・男性・大学教員・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-17 11:02 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3507/3511
 科学の発展は素晴らしいものであります。しかし、科学によって開発された技術が悪用されると、「殺傷用兵器」と化す可能性もあることは、例えば、「ダイナマイト」の研究・開発とその後の利用状況の例を見ても明らかであります。最近では、日本国内でも、「科学者たちが兵器の研究開発には参加しない。」との姿勢を示すケースも見られる一方、「ビジネス・メリットを背景とした防衛装備に関する研究・開発」を進める科学者もあり、「平和的な科学の発展」に疑問符が付くケースもあるのではないかと思われます。

 ところで、こうしたことは、隣国・韓国でも見られ、韓国国内のマスコミ報道によると、「韓国の国立大学である韓国科学技術院(KAIST)が人口知能(AI)を利用した殺用兵器である“キラーロボット”を開発する可能性がある。」との見方が出ています。更に、こうしたKAISTの動きを問題視し、世界の科学者たちが、KAISTとの共同研究を全面的にボイコットすると宣言したことも韓国国内では報道されています。そして、こうした世界の科学者たちのKAISTに対する動きを強く懸念し、KAISTは即座に、「殺傷用兵器の開発はしない」と釈明しました。これらより、韓国政府は、実際にKAISTに対する研究ボイコットが行われる可能性は大きくないとみられるとしていますが、例えば、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大コンピューター工学科のトビー・ウォルシュ教授ら29か国・地域の教授57人は声明で、「2月20日にKAISTが防衛産業関連企業と共同で設立した国防人工知能融合研究センターは、様々なキラーロボットを開発する可能性がある。」との懸念を表明、サイエンス誌とのインタビューで、ウォルシュ教授は、「KAISTの研究は、ドローンや潜水艇、巡航ミサイル、自律型警戒ロボットや戦闘ロボットの開発に適用される恐れがある。今回賛同した教授たちは、KAIST総長が“人間の統制を超えた自律ロボットを開発しない。”と公式に保障しない限り、同大学の構成員との全ての協力を中止することを決めた。」と述べており、KAISTが安易な姿勢を示した場合には、簡単に納得しない可能性も残っていると私は見ています。

 こうした状況に対して、KAISTのシン・ソンチョル総長は、「声明の内容をあらかじめ入手し、声明に署名した教授全員に、“殺傷用兵器や攻撃用兵器の研究はしない。”という内容の文書を発送した。研究センターは、防衛産業に関する物流システム、無人航法、知能型航空訓練システムなどに関するアルゴリズム開発のために設立されたものである。」と説明していますが、本当に開発された技術は軍事利用されないのでしょうか?平和を前提に南北融和を図る韓国が、「防衛産業という事実上の軍事産業の発展を図り、外貨獲得産業として育成していく政策姿勢」は、朴前大統領も示しており、韓国も他の先進国同様、或いは北朝鮮などの一部国家同様、防衛装備品という名の兵器の研究開発と生産、販売に、より一層注力してくる危険性があると私は見ています。

 さて、日本はこうした中、他国の動きを意識し、日本のビジネス界と科学者たちも、兵器の研究開発とその生産・販売に注力するのでありましょうか?注視していきたいと思います。

“北朝鮮の核放棄”と“朝鮮半島の非核化”との違いは深刻   
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-16 12:26 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3506/3511
 金正恩委員長の突然の訪中により、北京で行われることになった中朝首脳会談では、両者は、“朝鮮半島の非核化”で合意したと報じられております。しかしながら、アメリカが求めてきた“北朝鮮の核放棄”と“朝鮮半島の非核化”では、雲泥の差があるように思えます。今のところ、アメリカのトランプ大統領は、中朝首脳会談での“朝鮮半島の非核化”方針について歓迎の意向を示しており、予定されている米朝首脳会談を楽しみにしているとツイートしたそうです。一先ずは、米中朝が足並みを揃えているようにも見えますが、既に、中朝の言う“朝鮮半島の非核化”とは、長期的には朝鮮半島からの米軍撤退を伴う米韓同盟の終了と朝鮮半島の中国勢力圏化を意味するとする指摘があります。この説では、北朝鮮の核放棄とアメリカによる中国の朝鮮半島支配の承認がバーターとなっており、南北両国の頭越しとなる事実上の“米中合意”、あるいは、“米中取引”ということになります。

 “朝鮮半島の非核化”の意味が中国による朝鮮半島支配を意味する一方で、“北朝鮮の核放棄”は、あくまでも、国際法上の違法行為への制裁、あるいは、国際社会における平和への脅威の排除の文脈において捉えられる課題です。核兵器不拡散条約(NPT)体制の行方にも関わるため、国連における対北制裁決議等は、この文脈において成立している国際的な合意であり、日本国政府をはじめ、表向きであれ全国連加盟国が対北制裁の枠組に協力しています。そして、この立場で特に重要な点は、中国の覇権主義的北朝鮮危機の政治利用の思惑とは全く関係なく、国際法秩序を守るための米軍による軍事制裁が正当化されていることです。ここには、政治的妥協の入り込む隙はないのです。

 以上に述べたように、“北朝鮮の核放棄”と“朝鮮半島の非核化”には、その本質からして政治問題と法律問題の違いがあるのですが、北朝鮮危機にあって漁夫の利を得たい中国が、巧妙に前者の方向へと誘導しようとしていることだけは確かです。また、北朝鮮の金委員長も、訪問先の中国では、自国が国連制裁対象国であることを忘れたかのように振る舞っております。となりますと、この問題は、“北朝鮮の核放棄”と核放棄後の朝鮮半島の将来像については一旦切り離した方が賢明なように思えます。乃ち、北朝鮮が無条件の核放棄に応じるまで、中国を含めた国際的な経済制裁の枠組を緩めることなく、否、より厳格に実施し、かつ、北朝鮮に核・ミサイル開発の時間的な猶予を与えないために、一定の期限を設定し、その間に北朝鮮が核放棄を実行しない場合には、軍事制裁を科すとするプロセスを検討すべきではないでしょうか。

 仮に、トランプ政権が米韓同盟について再考し、朝鮮半島の現状を変更する方針にあるならば、北朝鮮の核放棄に伴う北朝鮮の現体制の変化を見極めた上で(体制崩壊もあり得る…)、別途、朝鮮戦争の当事国も参加する形で合意を形成するという方法もあります。中国主導による北朝鮮危機の解決、即ち、“朝鮮半島の非核化”路線は、東アジアにおける習独裁体制とその支配力の歯止めなき膨張に繋がりかねません。“赤い帝国”の拡大は、日米を含む周辺諸国の安全を根底から脅かすと共に、国際社会の無法化をも意味するのですから。

(連載2)テレビは自由であるべきか ← (連載1)テレビは自由であるべきか  ツリー表示
投稿者:六辻 彰二 (神奈川県・男性・横浜市立大学講師・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-13 13:32 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3505/3511
 1987年に米国は放送局に複数の視点から報道することを定めた公平原則(Fairness Doctrine)を撤廃。ロナルド・レーガン大統領(当時)はこれを「政府の規制は(表現の自由を定めた)憲法第1条に反する」と正当化。今回の提案で安倍首相もこれに言及しています。ところが、その後の米国では各局が正確さより政治的な主張で他局との差別化を図るようになり、これは結果的にジャーナリズムへの信頼の低下につながりました。最近の例をあげると、大手テレビ局FOXニュースの司会者ローラ・イングラハム氏は、2月にフロリダ州の高校で発生した銃乱射事件を生き延び、銃規制の強化を求める活動に参加している生徒の個人情報をさらして「UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に落ちた」などと揶揄。さすがに非難が相次ぎ、多くのスポンサーが降板したため、3月29日に謝罪に追い込まれました。FOXニュースはトランプ大統領を支持する保守的な論調で知られ、銃規制にも消極的。イングラハム氏の一件は、そのイデオロギーにかかわらず、特定の立場を前面に出した「自由な報道」が、日本ではかろうじてネット上にとどまっているレベルの誹謗中傷になりかねず、社会の分断をさらに深め得ることを示す一例にすぎません。

 ただし、日本の場合、放送免許の許認可権を政府が握っており、今回の提案でもこの部分には触れられていません。この点で、政府が許認可権を持たない米国と異なり、「公正」が廃止されても「好ましくない報道」を政府が管理することは可能です。しかし、それでは政府のいう「自由な報道」も有名無実になります。さらにここでの文脈で重要なことは、仮に「公平」が撤廃された後も政府に許認可権を握られる放送局が「自発的に」言論を抑制したとしても、今回の提案には外資参入の解禁が含まれることです。米国の巨大メディア企業が資本力を武器に参入した場合、米国式の「自由な報道」が日本でも行われかねません。その弊害は、電波事業への外資参入が認められている英国ですでに報告されています。2017年11月、英国の放送・通信を監督する放送通信庁(Ofcom)はFOXニュースの報道番組が同国の公平原則に反したと結論。この番組は、2017年5月にマンチェスターで発生した、22人の死者を出す爆破テロ事件を取り上げ、「ポリティカル・コレクトネスという『公式のウソ』を強制する『全体主義』の政府がテロ対策に失敗した」という見解を紹介。批判された政府の見解は紹介されず、司会者も異論を示しませんでした。日本で「公平」が撤廃されれば、この種のニュースも規制されにくくなります。

 これに加えて注意すべきは、自由な報道が「視聴者の選択の自由」の前提である「多様性」を生むと限らないことです。よく知られる例としては、2003年のイラク侵攻があげられます。「イラクが大量破壊兵器を保有し、これがアルカイダに渡ると危険」という、およそ荒唐無稽な主張と、「米国の安全のための予防的先制」という論理には、多くの国から反対が噴出。しかし、他の見解を省いたシンプルな意見が各局から洪水のように流された結果、世論調査によると開戦に反対した米国市民はわずか27パーセント。テレビ報道に何らかの反対意見を表明した市民は3パーセントにとどまりました。9.11後の米国が一種の集団的なヒステリーに陥っていたことは割り引くべきでしょう。また、CIAなどが誤った情報を提供していたことも確かです。しかし、疑心暗鬼になりやすい時に何の規制もなければ、全ての放送局からフェイクとヘイトに満ちたニュースが垂れ流され、ほとんど全員が同じ方向に向かっても不思議ではありません。「空気」がまかり通りやすい日本では、なおさらです。

 念のためにいえば、報道には公平とともに自由が不可欠です。「報道の自由度」が先進国中最低レベルで、「公平」が政府批判を抑制させる手段の日本では、なおさらです。その一方で、公平が時につまらなくて非生産的になるのと同じく、自由が過激主義や排他主義に向かいかねないこともまた確かです。重要なことは、先行する者が常に有利と限らないことです。後発者は先行者の試行錯誤をみて、よい部分を効率的かつ選択的に吸収できます。これは「後発者の利益」と呼ばれます。「公平」を放棄した米国は自由な報道で間違いなく他国に先行しています。しかし、そこには光も影もあります。後発者はその光を追い、影を避ける余裕があるはずです。少なくとも米国の経験を全面的に見習う必要があるかは疑問で、自由で公平な報道の実現には、より慎重な検討が求められるでしょう。(おわり)

(連載1)テレビは自由であるべきか  ツリー表示
投稿者:六辻 彰二 (神奈川県・男性・横浜市立大学講師・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-12 16:50  
>>>この投稿にコメントする
3504/3511
 内閣府の規制改革推進本部は3月15日、テレビやラジオの「政治的公平」を定めた放送法第4条の撤廃を提案。その後、審議が続いています。2016年2月に高市早苗総務大臣(当時)が「政治的公平を欠く放送を繰り返した」とみなされる放送局への電波停止の可能性に言及したように、これまで政府は特にテレビが特定の立場から報道することに否定的でした。いきなり正反対の方針を打ち出した安倍首相は2月の国会審議で、アベマTVに出演した体験を踏まえて「視聴者には地上波と全く同じ」と発言。テレビとネットの融合を念頭に法制度を改革するなら、ネットにテレビ並みの規制をかけられない以上、テレビの方の規制を緩和するべき、という路線に転じました。その動機はともかく、「公平」という原則がなくなれば、意見が対立する問題で各局はこれまで以上に独自の立場で報道できます。それは「表現の自由」に沿ったものともいえます。

 しかし、ネット上のヘイトスピーチやフェイクニュースの規制はグローバルな課題です。その水準に規制が引き下げられれば、テレビ報道が誹謗中傷とプロパガンダに満ちたものになる恐れすらあり、米国の事例からはその危険性を見出せます。今回の提案は放送事業と番組制作の分離による競争促進や外資の参入許可などを含みますが、これまで放送事業の規制緩和を支持してきた専門家からも困惑や疑問が続出。所管省庁である総務省も同様です。

 ビジネスの観点はさておき、ここでは放送法第4条の「政治的公平」の見直しに焦点を絞ります。放送法第4条では、公序良俗に反しない、政治的公平、事実を曲げない、意見が対立している問題には多角的に伝える、などの原則が定められています。これを撤廃する論理としては、以下があり得ます。そもそも意見が対立する問題を、全ての立場から等しく距離を置いて報道することは極めて難しい。各局が実際に独自の論調で報道している(特に現政権に対して)。ならばいっそ事業者ごとに自由にさせ、あとは視聴者の選択に任せればよい。「公平」撤廃の論理は「視聴者の選択の自由」を強調します。これはネットで好きな情報を選び取ることに慣れた現代人にとって分かりやすいものかもしれません。

 実際、人間には国籍、年齢、職業、所得など必ず何らかの立場や属性があり、言葉通りの意味での「公平で客観的な視点」はほぼ不可能です(社会学ではこれを存在拘束性と呼ぶ)。そのため、あらゆる報道には多かれ少なかれ偏向(バイアス)があり、これを緩和させるなら複数の見方や確実な証拠を示し、論理的に矛盾なく伝えるしかありません。しかし、特にテレビ、ラジオは他のメディアと比べて「時間の制約」が大きく、複数の見解や情報源を省略したよりコンパクトなメッセージになりがちです。実際、「公平」で定評のある英国BBCでさえ「EU離脱問題をめぐる論調が偏っている」と与党議員から批判され、対応に苦慮しています。「公平」が有名無実化しやすい状況で、「だったらいっそなくして視聴者の判断に任せればいい」という主張は明快ともいえます。とはいえ、「自由な報道」がよい結果を生むとは限りません。(つづく)

(連載2)米国の通商外交姿勢と日中韓について ← (連載1)米国の通商外交姿勢と日中韓について  ツリー表示
投稿者:真田 幸光 (埼玉県・男性・大学教員・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-11 11:23 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3503/3511
 米国による輸入規制は、ほとんどが中国本土を対象とすることから始まりましたが、合わせて、米国政府は一部の韓国製品に対し反ダンピング関税を課すことを決め、その対象品目の6割近くが、米国による中国本土への反ダンピング規制対象品目と重なっているのであります。こればかりか、米国政府による規制措置内容によっては、中国本土の対米輸出が減少し、その結果として、韓国から中国本土への中間財の輸出が減ると言う二次被害を受ける可能性もあります。

 これに対して、日本は、様々な視点からの「日米協調」をベースに、また、貿易の米中依存度、貿易のGDP依存度が韓国よりは低く、更に対中依存を減らしてきたことから、韓国よりも影響は限定的と見られます。更に、防衛連携の中身も濃く、こうした側面からも被害は相対的には低いと見て良いでしょう。但し、私は、トランプ大統領は、日本に対して、それほどまでに好意的であるとは見ておらず、韓国ほどの通商圧力を掛けぬ一方で、1.在日米軍の費用負担の増加、2.米国側の防衛装備品の高額購入増加と言う圧力を日本に掛け、結局は、「アメリカ・ファースト」主義を実行し、米国にとっての利益を追求してくると思います。「義の無い大国」である米中に挟まれた日本と韓国は厳しい状態が続くものと思います。

 一方で、当事者たる米中両国は、ここに来て、激しいつばぜり合いを更に展開しています。私の見るところ、北朝鮮とシリア問題で後手に回り、対露関係で苦戦をする米国・トランプ政権が、中国本土との関係に於いても貿易問題でがっぷり四つに組もうとしており、大丈夫なのかとさえ感じているところです。即ち、例えば、米中間の為替問題でも、「米国が、更なる人民元安を迫れば中国本土の対米輸出が増え、逆に更なる人民元高を迫れば、人民元の国際化をより一層助長しかねない。」状況にあり、また、米国が対中輸入制限を実施すれば、「生活消費財の一部を中国本土に大きく依存する米国は、米国民に結局は迷惑を掛ける。」ことにもなりかねず、対露問題に続き、対中問題でも、米国は苦戦を強いられる可能性があると私は見ているからであります。トランプ大統領は、こうした中、「今回の措置は必ずしも中国本土だけを対象にしていない。」などの主旨の発言もし、硬軟織り交ぜた対中対応をしていますが、こうしたトランプ政権の交渉姿勢を中国本土は見透かしているようにも思われます。そして、こうした中、トランプ大統領は、中国本土に更にけんかを売るような形で、「中国本土の輸入品1,000億米ドル分に関税を上乗せするのが妥当かどうか検討するように。」と米国の通商代表部(USTR)に改めて指示を出しています。中国本土の報復に対抗し、当初の関税案から上積みをする姿勢を示したものと見られています。これに対して、中国本土も更に報復で応じると表明しています。

 交渉巧みな中国本土に対して、トランプ政権は、「中国本土は違法行為を正さず、我が国の農家や製造業者に損害を与えることを選んだ。米国は、自由で公正かつ互恵的な貿易を達成するという責任をさらに果たし、米国企業や米国国民の技術や知的財産を守る為、議論をする準備ができている。」との姿勢を示していますが、「自国第一主義」を基本姿勢としているトランプ政権に、自由で公正かつ互恵的な貿易を達成したいと言われても、国際社会がこれを支持するでありましょうか?私には米国のこうした大義は通じにくいと映ります。そして、中国本土は、この通商問題とは別のディールで米国が譲歩するなど、何かの手をトランプ政権が示さぬと簡単には引かないと見ています。米中関係はがっぷり四つに組もうとしているように見られますが、今のところ、中国本土が優勢ではないだろうかと思います。(おわり)

(連載1)米国の通商外交姿勢と日中韓について  ツリー表示
投稿者:真田 幸光 (埼玉県・男性・大学教員・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-10 17:48  
>>>この投稿にコメントする
3502/3511
 私は、米国のトランプ大統領下の米国経済の動きの中で、1.宇宙・航空産業とその延長線上にある防衛産業の強化、2.モノのインターネット(IoT)時代を見据え、米国産人工知能(AI)が使用されていない「もの」は「もの」に非ずと言うスタンダード作りに向けての動き、3.実体経済を意識したグローバル物流の支配に向けた動きなどは、国家としての経済戦略としては素晴らしいと考えています。しかし、一方で、「米国の世界的な威信低下に伴う自国第一主義の拡大」には心情的にも決して賛成できません。真の大国であるならば、大局に立ち、世界の利益と米国の利益が共に適う政策展開をする、そうした、義のある政策運営をトランプ大統領には期待しているからであります。

 然るに、トランプ政権は、とうとう中国本土製品に巨額関税を課すと発表しました。そして、これを受けて、大国である中国本土も、真の大国とは程遠いスタンスを示し、「売られた喧嘩は受けて立つ」と言わんばかりに、これに対する報復措置を示しています。こうした表面的な動きを見て、少しセンセーショナルな表現を許して戴ければ、「米中は貿易戦争に突入する。」と言った状況に入ったとも言えます。そして、米中と貿易面で密接な関係にある日本や韓国、特に経済的な体力の弱い、更には、軍事的にも緩衝地帯のど真ん中にある韓国は、米中の狭間で難しい選択を迫られるかもしれません。即ち、韓国に関して更に述べれば、「韓国が米国側につけば、中国本土は戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)問題で韓国に報復したときと同じように、再び韓国への報復を強める可能性がある。一方で中国本土側に寄れば、今度はトランプ政権による大規模な貿易報復が予想される。」と言ったことが想像されます。

 トランプ大統領は就任直後から、中国本土の不公正貿易に不満を示し、攻撃を予告していましたが、約1年、そうした心配は顕在化しませんでした。しかし、今年に入り、トランプ大統領は、しばしば、「米国企業が中国本土で事業を展開する際、技術移転を強要されている。その結果、中国本土がこのようにして米国から奪った技術を政府次元で支援し、半導体や人工知能(AI)など先端分野で中国本土企業が米国企業を逆転するよう手助けしている。知的財産権の侵害である。」と言った主旨の発言を強め、そして、今回、具体的な行動にいよいよ出たのであります。この間、米国政府は、米国の法律である通商法301条に基づき、中国本土による知的財産権侵害について調査に乗り出し、中国本土による不当な知的財産権の侵害が米国の国家安全保障に脅威を与えている論理的証拠集めに腐心したとも言えます。今回はその証拠を持っての行動ですから、米国政府としても、簡単には手を引かないでありましょう。

 今般の米国政府による中国本土製品の制裁には、靴・衣類・家電など最大で100品目への関税賦課のほか、人工知能など先端技術分野に対する中国本土の対米投資を制限する内容が盛り込まれ、米国の産業界での意見を集約した上で発効する見通しであり、トランプ政権は、米国世論の後押しもきちんと受けるでありましょう。更に、むしろ、米国政府が中国本土政府に先んじて、中国本土の不正貿易を提訴する姿勢も示しており、通商問題では、米中ががっぷり四つで組む可能性も高まってきています。こうして、米中通商摩擦が全面戦争に突入すれば、貿易の多くを米中両国に大きく依存している韓国は、上述したように、米中間で、所謂、「股裂き状態」に陥る可能性は極めて高くなります。即ち、現在、韓国にとって、中国本土と米国は貿易相手国1、2位であり、韓国の輸出全体のうち中国本土の割合は約25%、米国は約12%となっています。更に、昨年時点で韓国の国内総生産(GDP)に対する輸出入額の比率(貿易依存度)は68.8%と極めて高く、米中のどちら共、健全貿易を続けていかないと、韓国経済は大打撃を受けることは想像に難くありません。(つづく)

軍事大国中国は自由貿易体制が生み出したモンスター   
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-09 17:45 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3501/3511
 アメリカのトランプ政権は、鉄鋼・アルミニウム製品に対する高額関税の設定に加えて、知的財産権についても最大で600億ドル規模の対中制裁関税をかけると発表しました。こうした一連の米国の対中強硬政策に対して、中国は、米国債の購入を減額する措置をも辞さずとして対抗心を露わにしております。遂に米中貿易戦争の火蓋が切って落とされた感がありますが、そもそも、米中貿易戦争の根本的な原因は、今日の自由貿易体制そのものにあるのかもしれません。ソ連邦の崩壊によって中国が学んだことは、ハイテク技術を含む経済力の差が米ソの命運を分けたと言うことです。言い換えますと、共産主義に基づく計画経済に固執している限り、中国もまた、遅かれ早かれソ連邦と同じ運命を辿るしかなかったのです。そこで、天安門事件で一旦は挫折するものの、中国は、経済力においてアメリカと同等、否、それ以上の力を蓄えることで、自国の共産党一党独裁体制を断固として守る決意を固めるのです。

 中国がこの目的を達成するための最短距離の道として選んだのは、西側諸国で構築されていた既存の自由貿易体制を最大限に利用することでした。社会・共産主義国との間で結成したコメコンといった国家貿易圏の内側に閉じこもっていたソ連邦の閉鎖型の貿易体制から一歩踏み出し、自ら自由主義国の通商体制に参加することこそ、サバイバルを目指す共産主義国家には必要不可欠であると考えたのでしょう。何故ならば、自由貿易体制の内部に入り込むことができれば、米ドルという国際基軸通貨を大量、かつ、容易に入手することができるからです(2001年12月には世界貿易機関に加盟…)。そのためには、中国は、何としても貿易黒字国となる必要があり、アメリカをはじめとした先進各国の企業に安価な労働力を以って生産拠点を提供し、かつ、人民元安を武器として輸出攻勢をかけることで、輸出大国、即ち、“世界の工場”となることに成功したのです。

 米ドルは70年代に金兌換を停止したとはいえ、今日に至るまで国際基軸通貨の地位を保っており、米ドルを始めとした外貨準備の積み上げは、経済における中国のステータスを押し上げると共に、政治的にも重要な対外政策上の道具ともなりました。物議を醸してきたアジアインフラ投資銀行は、潤沢とされた外貨準備を中華圏の形成としての“一帯一路構想”の実現に注ぎ込むプランとして理解されますし(ただし、実際には、中国には公表されているほどの外貨準備はなく、むしろ、外貨獲得が目的であるとする説もある…)、とりわけ米国債の大量購入は、今般の中国の対抗策に見られるように、対米牽制の有効な手段ともなり得ます。しかも、自由主義諸国の企業、大学、研究所などに、不正手段を含めた様々手法でアクセスすることで、軍事大国化の基盤となる先端的な軍事技術さえ容易に手に入れることができたのです。

 このように考えますと、政治的な国家間対立や防衛・安全保障面でのリスクを凡そ捨象し得る自由貿易体制ほど、中国にとりまして好都合な国際通商体制はなかったことになります。たとえ究極の目的が共産党一党独裁体制の維持であり、また、世界支配であったとしても、自由貿易主義の大義の前では不問に付されるからです。しかしながら、政経分離を原則としてきた現下の自由貿易体制が中国というモンスターを生み出し、国民弾圧をも厭わない独裁体制の下で国際法秩序をも揺るがすほどの重大な脅威を国際社会に与えているとしますと、見直しを迫られているのは、政治的リスクを公然と無視してきた今日の自由貿易体制の方なのではないかと思うのです。

(連載2)日本政府はなぜトランプに足元をみられるか ← (連載1)日本政府はなぜトランプに足元をみられるか  ツリー表示
投稿者:六辻 彰二 (神奈川県・男性・横浜市立大学講師・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-06 11:32 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3500/3511
 1995年に発足したWTOは、加盟国間の貿易問題を処理するための機能を備えています。パネルと上級委員会の二審制に基づく紛争解決メカニズムは、大国が相手に不利な貿易条件を無理強いすることを防ぎ、ルールに基づく取引を保障するためのものです。ところで、WTOのデータベースによると、日本はこれまで米国を8回提訴しており、件数では中国(2件)、韓国(2件)への提訴を上回ります(WTOでの提訴、応訴とも米国が世界最多)。そのうち3件が「日本の鉄鋼製品に対する米国のダンピング認定と輸入規制がWTOルールに反する」という訴えでした。しかし、2004年を最後に日本は米国を相手に新たな提訴をしていません。それは米国が日本製品を「ダンピング」とみなさなくなったからではありません。オバマ政権末期の2016年、米商務省は日本など7ヵ国の鉄鋼製品が「ダンピング」にあたるかの調査結果を発表。この背景のもと、翌2017年5月に経済産業省は、米国をはじめ中国、韓国、インドなどによる日本製品への「アンチ・ダンピング」がWTOルールに反すると批判。ところが、その後で日本が実際に提訴したのはインドだけでした。

 念のために確認すると、この際に日本が提訴しなかった国には、米国だけでなく中国や韓国も含まれます。とはいえ、これら両国に対して日本は2010年代に入ってからWTOに提訴した事案があります。重要なことは、この時だけでなく10年以上にわたって日本が米国と貿易問題を抱えながらも、正面から対決してでも利益を守るという姿勢をみせてこなかったことです。もちろん、「異議を申し立てれば利益を守れる」とは限りません。韓国の場合、WTOでの米国の提訴は12件にのぼり(中国によるそれは10件、最多はEUによる33件)、最近では2017年にも米国の「アンチ・ダンピング」に異議を申し立てた経緯がありますが、先述のようにFTA再交渉に持ち込まれました。のみならず、米国はトランプ政権以前から度々WTOのルールや裁決に違反しており、WTOでの勝訴が実効性をともなうとは限りません。ただし、韓国の場合、日本と同じく、北朝鮮情勢をめぐって米国の影響力は強まっており、さらに中国との関係も冷却化しています。日本の場合、これに加えて米国に物言わない姿勢があるため、さらにトランプ政権の強引さにもろく、「何も言わなければ安全」というわけでもありません。少なくとも、長らく衝突を避けてきた日本が「はぐらかす」以上の抵抗をできないと米国がみたとしても、不思議ではないでしょう。

 日本外交の「親米化」は冷戦期にも増して、2001年に発足した小泉政権以降、加速度的に進んできました。そこには「米国との関係さえ安泰なら、後は何とでもなる」という楽観主義、言い換えると「鉄板願望」があったといえます。しかし、当たり前のことですが、いかに同盟国同士でも日本の利益と米国の利益は異なります。「鉄板」は相手の善意に期待するところが大きく、それが取り除かれたとき、途端にもろさを露呈します。「中国の脅威」、「北朝鮮の脅威」を理由に、米国との関係のみを優先させてきたことは、トランプ政権に足元をみられる一因になっています。

 国内に眼を向けると、構造改革を推し進めた小泉政権のもとで大企業の「ケイレツ」が失われて以来、現在に至るまで、多くの中小企業が新たな顧客の確保や新規事業の開拓に向かってきました。これはいわば、生存のために「鉄板」への期待を減らし、リスクを分散させる取り組みでした。翻って日本政府をみたとき、トランプ政権のもとで米国が世界最大の問題児となり、世界情勢が変動しているにもかかわらず、そこには相も変らぬ「鉄板願望」が目立ちます。国内で構造改革を推し進めた日本政府自身が最も構造改革に遅れているというと皮肉にすぎるでしょうか。ともあれ、鉄鋼・アルミ関税の引き上げ問題は、好悪の感情に左右されない大局観や戦略性に基づくリスク分散こそ政府に求められることを、改めて示したといえるでしょう。(おわり)

(連載1)日本政府はなぜトランプに足元をみられるか  ツリー表示
投稿者:六辻 彰二 (神奈川県・男性・横浜市立大学講師・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-05 18:16  
>>>この投稿にコメントする
3499/3511
 トランプ政権の強引なアプローチが日本にも本格的に向かい始めました。3月8日に導入された鉄鋼・アルミ関税の引き上げが23日に発効。EUや韓国などが「安全保障上の理由」から最終的に除外された一方、日本は中国、ロシアとともに適用対象に残りました。この期に及んで、いくら「日本は米国にとって(中ロと異なり)安全保障上の脅威ではない」と陳情しても、米国政府が納得するとは思えません。トランプ氏がいう「安全保障」は方便に近いからです。トランプ政権はリスク分散をせずに米国に頼る日本の足元をみているのであり、そのような陳情はむしろこの関係を浮き彫りにするといえます。トランプ政権はこの他、3月22日に中国の電化製品などに対する関税引き上げも発表しており、一連の保護主義的な措置は「貿易戦争」の懸念も呼んでいます。しかし、中国への関税導入に関してエコノミストの池田雄之輔氏は「貿易戦争もいとわない強硬策」というより、中間選挙向けの宣伝や相手国に対する交渉材料といった戦術的側面が強いと分析。その根拠として、決定内容が事前の予測より以下の3点で大幅に穏当な内容だったことを指摘しています。(https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yunosuke-ikeda-idJPKBN1GZ0ZA)

 関税規模が大幅に縮小された(関税規模そのものが600億ドルという予測もあるなか、600億ドルの輸入品に25パーセントの課税で150億ドルになった)。課税までの猶予がある(即日実施ではなく、対象品目の特定に15日間、ヒアリング期間に30日が設けられ、柔軟化の余地がある)。国際ルールを全く無視したわけでない(米国製品に対する中国の参入障壁に関しては、世界貿易機関の紛争解決メカニズムを利用する)。いずれも頷けるものです。つまり、トランプ政権は「貿易赤字を削減する」という目的のもと、あえて傍若無人にふるまって、相手に譲歩を迫っているとみられます。ただ、池田氏の論考でその部分は触れられていませんが、鉄鋼・アルミ関税の引き上げも「戦術」だったとすると、「この措置を受けて日本との交渉がしやすくなる」と米国はみていることになります。トランプ政権が日本との交渉を有利にしようとする最大のテーマとしては、日米の自由貿易協定(FTA)があります。「アジア諸国の不公正な取引」が米国の貿易赤字の原因の一つと捉えるトランプ政権は、環太平洋パートナーシップ(TPP)から離脱し、米国により有利な条件で各国と個別にFTAを結ぶことを要求してきました。多国間交渉と比べて、二国間交渉は力関係がそのまま交渉結果に反映されがちです。農産物などで一層の市場開放を求められる警戒感から日本政府はFTA交渉を避け続け、2017年11月にトランプ氏が訪日した際にも、北朝鮮情勢などとともにこの問題が取り上げられたものの、交渉開始時期は定められませんでした。米政府内にはこの当時「(やはり米国の貿易赤字を生んでいる)韓国とのFTAの修正協議や中国との貿易・投資交渉が先」という考え方がありました。これは日本が「うやむや」で済ませられた一因でした。

 ところが、米国はその後、韓国との交渉を加速。トランプ政権は「現状のFTA破棄」すら匂わせ、この圧力によって韓国政府をFTA再交渉に向かわせただけでなく、武器輸入も増加させました。その結果、韓国は鉄鋼・アルミ関税引き上げの対象から除外されたうえ、日本や中国への関税引き上げが発効した23日にトランプ氏は韓国との貿易交渉が「素晴らしい成果」を収めつつあると発言しています。つまり、韓国との交渉が終結に近づいたことで、後回しになっていた日本や中国への圧力が本格化したといえます。

 トランプ政権の露骨な圧力に対して、日本の立場はもろいといわざるを得ません。そこには3つのポイントがあります。第一に、北朝鮮問題です。もともと日米同盟が片務的で対等でない以上、日米当局者がいくら「友人関係」を演出しようと、米国の発言力が強くなることは避けられません。そのうえ、北朝鮮情勢はこれに拍車をかけてきたといえます。北朝鮮による核・ミサイル開発は今に始まったものではありませんが、トランプ政権による威圧的な行動により、昨年4月以降その緊張は急速に高まってきました。ホワイトハウスの計画通りなのか、結果的にそうなっただけかは定かでないものの、少なくとも切迫する北朝鮮情勢が日本における米国の存在感をこれまで以上に高めていることは確かです。とりわけ安倍首相が「日米の方針は完全に一致」と強調するなかでは、なおさらです。第二に、中国との関係です。トランプ氏の主な標的が中国である以上、「関税引き上げの免除」そのものが「他の国を米国側につかせる手段」となります。他の条件もあるにせよ、鉄鋼・アルミ関税の引き上げの対象から外されたEU、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジルなどは、摩擦を抱えながらも、中国と必ずしも対立一辺倒でなく、程度の差はあれ多くが中国の「一帯一路」構想にも協力的です(昨年5月の「一帯一路」会議にアルゼンチンは大統領、オーストラリアは閣僚を送っている)。つまり、中国に近づく国への関税引き上げを免除することは、米国にとっていわば「まき餌をまく」効果があります。逆に、最近でこそ改善の兆しがみえるものの、日中関係が大きく変化する見通しはほとんどありません。日本が中国に近づかないことは、トランプ氏にとって「日本に遠慮しなければならない」必然性の低下を意味します。第三に、二国間の貿易問題に限っても、日本が米国と正面から衝突することはほとんど想定できません。「日本が米国に物を言えない」というのはよく聞くことですが、実際にどの程度日本が米国に対して静かだったかは、世界貿易機関(WTO)のデータからうかがえます。(つづく)

日本社会における国際法の認知度の低さ   
投稿者:篠田 英朗 (東京都・男性・東京外国語大学大学院教授・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-05 13:04 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3498/3511
 定期的に出演させていただいているニコニコ動画『国際政治ch』で、ゲストに冨澤暉・元陸上幕僚長をお招きして、対談をした。海外の軍人「プロ」同士の視線を気にすれば、「自衛隊」という名称を入れる改憲案には承服できない、といった意見など、約三時間、興味深いお話をたくさんしていただいた。それにしても印象に残ったのは、冨澤さんに、最後に、「自分と同じ見解を持つ篠田という学者は珍しい」といったことを述べていただいたことだ。視聴者の中にも、同じようなコメントを出してくれている方がいらっしゃり、光栄ではあるが、複雑な思いにかられた。

 なぜなら私自身は、自分自身の国際秩序論を、極めて普通の正論だとしか思っていないし、憲法解釈も単なる平凡な憲法典の読解だとしか思っていないからだ(むしろ私は憲法学の主流のほうが意図的に憲法典を曲解していると思っているし、司法試験受験者や公務員試験受験者が、試験委員のチェックばかりに忙しくて日本国憲法典それ自体を読む暇を持てていないと疑っている)。冨澤さんが著作で論じていることも、国際社会の常識と言ってよいことばかりだ。「戦争を放棄をしているのは日本だけではない」、「PKOの武力行使は集団的自衛権と関係ない」、「集団的自衛権と集団安全保障の差異をほとんどの国民が認識していない」、などは、単に国際法の基本を勉強すれば、それで常識となる事柄ばかりだ。

 だが国際社会の常識を常識として主張すると、日本社会では、珍しがられるらしい。私のように、うっかりと憲法典それ自体は国際社会の常識に反していない、などといったことまで口走ってしまうと、憲法学者や公務員試験合格者や司法試験合格者から、「日陰者」、「(三流)蓑田胸喜」、「ホロコースト否定論者」、「若い」、などの言葉を浴びせかけられる。全ては、国際法の地位が、日本社会で不当に扱われていることに起因しているのではないか。私は国際政治学者だが、国際法学会にも属している。素晴らしい業績を持ち、国際的に、学会で、国連委員会で、活躍されている国際法学者の方々が日本にも多いことを、よく知っている。政治運動には走らず、プロ意識が強いことが、かえって国際法学者の方々の日本社会での存在感を地味にしているとしたら、不当だ。司法試験で国際法を必須にする、公務員試験で国際法を必須にする、国立大学法学部で国際法教員を優先確保する、などの措置がとられれば、日本社会は一気に変わるような気がする。が、もちろん簡単には発生しない。既得権益に根差した社会構造の問題だからだ。

 相変わらず、司法試験合格者が、法律家の代表として、憲法の基本書にしか存在しない「国際法上の交戦権」なるものを振りかざし(実際には現代国際法に「交戦権」なるものは存在しない)、国際法では国連憲章にもとづいて世界的に自衛権に関する議論が蓄積されているのに「自衛権は憲法に書かれていないので透明人間だ」、などといった主張を、熱心に社会に広めている。もっとも伝統的に、日本の国際法において、国際人道法(戦時国際法=ユス・インベロ)はもちろん、自衛権(武力行使に関する法=ユス・アド・ベルム)についても、あまり華やかな議論がなされてこなかったという事情もあるかもしれない。しかし優れた専門家がいないわけではない。人口激減・少子高齢化による国力の低下が懸念されている日本が、いつまでも「戦前の復活を阻止する」ことだけを目標に、「憲法優位説」だけを唱えているだけで、本当に上手くやっていけるのだろうか。

ベーシックインカムは人類衰退の道   
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-03 11:39 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3497/3511
 つい最近まで、政府が生活に必要となる必要品を国民に配る配給制度は、社会・共産主義の“専売特許”と見なされてきました。ところが、近年、“資本主義”のお膝元の諸国でも、全ての国民に一定の所得を配るベーシックインカムが唱えられるようになり、スイスでの国民投票に加えてオランダやフィンランドでも実証実験まで始まっているそうです。ベーシックインカムとは、働かなくても生活費が支給されるため、人類を労働から解放する政策として支持する声も少なくありません。しかしながら、同政策には、幾つかの問題点が潜んでいます。

 第1の問題点は、言わずもがな、ソ連邦崩壊の主因として指摘されているように、人々の労働意欲が著しく低下してしまう点です。人間の中には、本能的に“快楽”を求める人々もおりますので、こうしたタイプの人々は、働かなくても生活できるならば、敢えて職を持って職場で苦労しようとはしないでしょう。もっとも、この点に関しては、仕事に喜びを見出すタイプの人々の存在を根拠として、クリエーティブな仕事が増えるとする反論があるかもしれません。しかしながら、世の中には、しばしば“3K(きつい・汚い・危険)”、あるいは、英語では“3D(Dirty, Dangerous and Demeaning)”とも表現されるように、なり手が少なく、相応の報酬があってこそ成り立つ職業もあります。第1点に関連して第2点として指摘し得ることは、経済全体のメカニズムから見れば、全員、あるいは、大多数が働かないで生活を送ることは、事実上不可能なことです。何故ならば、生活に必要となる物品や施設等を造ったり、行政サービスも含め、それらを提供する人も同時にいなくなるからです。ベーシックインカム論は、個々人の所得の保障面ばかりに注目してメリットを説いていますが、たとえ所得があっても、消費する‘もの’や‘サービス’がなくなれば、経済のサイクルは停止します。人々の労働市場からの撤退とは、即ち、生産物の減少や経済活動の縮小をも意味しますので、経済レベルは自ずと低下せざるを得ないのです。また、需要と供給から成り立つ価格形成のメカニズムからすれば、それは同時に、‘もの’や‘サービス’不足による物価高騰を招くかもしれません(財源が政府紙幣の発効であれば、悪性のインフレも…)。第3の問題点は、スイスで実施されたベーシックインカムの導入を問う国民投票においても議論された財源問題です。上述したように、経済は低減傾向を辿りますので、法人税、所得税、付加価値税等、何れの租税の種類において税収も低下することでしょう。大幅に減少した歳入からベーシックインカムに必要となる予算が割かれるのですから、長期的には給付額や他の政策予算を削減しなければならない事態が予測されます。予算不足により行政サービスも低下しますので、社会インフラを含めた人々の生活の質も劣化することでしょう。

 以上に主要な問題点を挙げて見ましたが、ベーシックインカムが望ましくないことは、実際に街を歩いてみれば一目瞭然です。何故ならば、人には将来に向けてすべき仕事がたくさん残されていることが分かるからです。ベーシックインカムといった公的給付制度よりも、経済とは持ちつ持たれつの関係で成り立っているのですから、社会に役立ち(犯罪等を除いておよそあらゆる職業は世の中のためになっている…)、人々の生活やその向上に貢献する様々な仕事が正当に評価され、相応の報酬が支払われる経済システムの構築を目指すべきです。

 人類は、より善き経済・社会システムに向けて未だ発展の途上にあるのですから。結局、停滞と退行を招くベーシックインカムとは、配給制度において統制経済を取り入れ、労働選択では個人の自由放任を認めた、共産主義と新自由主義との奇妙な‘キメラ’なのではないでしょうか。そしてそれは、人類を衰退へと導くように思えるのです。

力の論理と世界について   
投稿者:真田 幸光 (埼玉県・男性・大学教員・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-02 11:08 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3496/3511
 最近の世界情勢を見ていると、力が全てのような気がしてしまいます。「権力者の言うことは全て正義。それに逆らう者は悪。従って、権力者に逆らう者は、力を以ってねじ伏せる。」そうした風潮は世界に広がっているように思います。例えば、米国のトランプ大統領、国際秩序を無視するかのように、「自国第一主義」を掲げ、例えば、通商交渉に於いて、相対的に立場の弱いメキシコを叩く、また、同盟国として動いてきた日本や韓国に対してもセーフガードを発動するなど、自国の論理、利益に基づいて動いてきているのを見ると、「わがまま」にもほどがあると思います。

 中国本土の習近平国家主席も国内の権力掌握を強める為、国家主席の任期を変更する動きに出て、国内基盤を固めつつ、周辺諸国に対しては、「経済力と言うパワーを見せつけ、中国本土の需要がないと困るであろう、中国本土の経済援助がないと困るであろうと、一種の強迫観念を世界に植え付けつつ、その影響力を拡大している。」とも受け止められ、ここに、「義」は見られません。圧勝の末、再選を果たしたロシアのプーチン大統領は、国内的には人気が高いようですが、例えば、シリアや北朝鮮問題では、自国の利権を優先し、国際協調をせず、我が道を行く姿勢を示します。英国は英国で、国際社会が不安を示しているにも拘らずBrexitを推進しようとしており、更にEU加盟国には交渉期間の延期などの厚顔無恥なる要請をし、最悪のケースでは、かつてアヘン戦争で痛めつけた中国本土と連携して、再び、権力拡大の可能性を模索しようとする始末。若いリーダーであるフランスのマクロン大統領は、こうした国際情勢の変化を捉えつつ、微妙に同盟国との関係を微調整し、結局は大局を捨て自国の利益を最優先する姿勢を示しているように見受けられます。こうして、所謂、国連の、拒否権を持つ、永久常任理事国は、結局は、自国の利益を最優先し、その上で自らの都合の良い、「世界秩序」の再構築に向けて歩み始めているように見受けられます。

 しかし、今、世界に必要なことは、「自国の利益優先ではなく、世界を俯瞰し、世界全体が安全、平和に生きていける秩序の構築」であり、大国のわがままな意向により世界秩序が再編されても、「栄枯盛衰」再び、新たな我欲の強い権力層にその秩序は打ち壊されるという輪廻の運命を辿りましょう。

 「我欲を捨て、大局的見地からの世界秩序の再構築」を望む私にとっては、全く正反対の方向に世界は動いていると見え、如何にして対応したら良いか、大いに悩んでいます。出来るところから、草の根から粛々と、とは思いますが、「我欲の力」は予想以上に強いです。

北京での招聘講義   
投稿者:池尾 愛子 (東京都・女性・早稲田大学教授・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-03-30 11:58 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3495/3511
 私は3月27-29日に北京に出張し、28日に「有沢広巳の経済政策観」という題で講義を一コマ行った。有沢広巳氏(1896-1988)はマルクス経済学者で、現代資本主義について幅広く研究を推進してきた人である。有沢氏が関わった「傾斜生産方式」(戦後日本経済の再建策の一つ)や、彼の原子力発電推進者としての活動について、私が書いた経験があったので、今少し幅を広げて少人数のセミナーで報告してほしいとの依頼を受けたのである。有沢氏について書いたことはあっても、話すことは初めてであったので、私はかなり神経を使った。それで結果的にわかったことは、講義依頼者と私の間で、有沢氏の経済政策観について大きな認識ギャップがあったことである。依頼者は、有沢氏が中国の改革開放政策を支持して実現に努力してくれたと考えていたのであるが、私はそれを知らず全く触れなかったのである。

 私が今回新たに調べたのは、社会主義政策研究会編『社会主義日本の設計』(1960年2月刊行)であった。1958年に日本フェビアン研究所(代表幹事有沢広巳氏)主催の研究討論会が開催され、1959年に「社会主義政策研究会」に改称して、「『社会主義の日本実現のための政策』という見地からの具体的な研究や討論」が重ねられていた。この本の第1章「現代日本資本主義の特質」(有沢広巳氏)、第2章「社会主義政権の課題と準備」(高橋正雄氏)を中心に紹介した。これをめぐって活発な討論が展開し、こうした学術交流に意義があることがすぐに感じられた。

 有沢氏が1979年の改革開放政策の実現に関わったのであれば、有沢氏自身、1958-60年頃に考えていたことから、1970年代後半にかけて、大きく考えを変えたことになる。上の本では、有沢氏は「技術革新の時代は、1950年代の生産力の発展を盛り上げてきたが、もう峠に来ているのではないか」と予想していた。しかし、その後も技術革新は続き、有沢氏自身、とくにエネルギー分野での目覚ましい技術革新を海外視察や原子力関係の委員会で確認してゆくことになる。

 有沢氏は中国の改革開放推進者として活躍したのであろうか。有沢氏および上の高橋氏の蔵書は、中国社会科学院日本研究所に寄贈されていて、それぞれの文庫としてまとめて書庫に置かれている(私の今回の訪問でも確認した)。1970年代以降の有沢氏について研究する際には、まず北京に行かなくてはならないのであろう。2016年5月6-7日に本e‐論壇に「国連と越境企業研究」と題して書いたように、開国開放後、中国は外国の資本と技術にも扉を開け、当時ニューヨークの国連本部にあった越境企業センター(1993年に国連貿易開発会議に移管)から技術的助言を受けていた。有沢氏は中国の政策に大きな変化をもたらした一人であったといえるのかどうか、今後の研究が待たれる次第である。

ガラパゴス化が進む金融財政政策   
投稿者:中村  仁 (東京都・男性・元全国紙記者・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-03-30 10:30 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3494/3511
 日銀の新しいトップ人事を見ますと、欧米の金融財政政策の転進から何周も遅れ、日本はいづれ淘汰されかねない。そんな体制が続きそうです。外界から遮断され、孤立した環境に長く置かれると、進化を忘れる。まるでガラパゴス化の運命が待っているような気がします。米国は年3回のペースで利上げを進め、欧州も金融緩和からの転換を図ろうとしています。日銀トップの次の体制による所信表明が行われ、学者から副総裁に転身する若田部早大教授に「また理論倒れの学者か」と、懸念する声が聞かれます。前任の同じリフレ派(金融緩和推進派)の岩田副総裁(前学習院大教授)も5年前の就任時に、「この人で大丈夫か」と、批判されました。岩田氏は「異次元緩和により、2年で2%の物価上昇を達成できなければ辞任する」、と自信満々でした。その2年がすぎ、5年経っても、「公約」は達成できず、「では辞任するのかな」と見守っていると、結局、任期いっぱい副総裁に座り、4月に退任します。非常識な人でした。

 「学者の非常識」はこれで終わりかと思っていましたら、後任の若田部氏も、「非常識」な財政金融論の発言を繰り返しています。副総裁は総裁を補佐する役目があるのに、黒田総裁以上の強硬なリフレ論者なのです。以前、総裁だった白川氏と若田部氏が論争した際、白川氏に「海外の経済学者が何を発言しているかではなく、自分の頭で考えたことを主張してほしい」といわれたとかで、クギを刺されたそうです。痛烈きわまる皮肉ですね。若田部氏の専攻は経済学史だそうですから、欧米の学説の研究には熱心だったのでしょう。白川氏は日銀の金融政策の目標として、「物価上昇率2%の達成」を掲げることに基本的には反対でした。「物価2%というアジェンダ(検討課題)の設定自体が誤り」という論者です。特定の物価数値でなく、様変わりしてきた時代を乗り切る政策の組み合わせこそ必要だというのです。その通りですね。国会で所信表明で若田部氏は、驚くようなことを言ってのけています。「金融政策には限界がない」、「国債購入が巨額になっているといっても、発行残高の4割であり、まだ6割が残っている」、「量的緩和は90兆円(現在80兆円がメド)まで許容」、「物価上昇2%の達成が難しければ、追加緩和策を」、「2%の達成以前に出口戦略(異次元緩和からの正常化)を発動することはない」、などなど。

 最近の経済常識は「金融政策の限界を知り、金融政策だけに負担をかけてはいけない」、「日銀が国債の全額を購入したら、市場から民間が排除されるし、財政節度がさらに失われる」、「実際、日銀は何も説明しないまま、国債購入額を減らし始めている」、「追加緩和をしても2%の物価上昇は無理」、「出口論どころか、日本は果たして出口にたどりつけるかどうかも分からない」などです。若田部氏は、首相側近で強硬なリフレ派の本田スイス大使(前内閣官房補佐官)と、財政政策では同意見といいます。本田氏は「デフレからの脱却には、大規模な財政出動と金融緩和が不可欠で、若田部氏は完全に理解している」と、指摘しています。

 強硬派を副総裁に置き、総裁や日銀ににらみをきかせるという計算でしょう。金融政策問題点をめぐる論争の常識とは、ほぼ正反対の主張なのです。欧米における財政金融政策からも反対方向に向いています。リフレ派が自分たちの主張のほうが正しいというのならば、財政節度を重視せず、異次元緩和を継続しても、「日本だけがなぜうまくいくのか」を立証しなければなりません。納得のできる説明は聞きませんね。日本の財政悪化は20年以上に及び、この間、なんども財政出動により、経済成長率を引き上げ、税収増を図ろうとしてきたことか。結局、国債残高が累増するだけでした。さらに財政赤字の最大の原因は高齢化による社会保障費の増大です。そこに手をつけないで、財政再建はできません。この点でも、成長路線と財政危機を区別する必要があります。

Rexitの後に来るもの   
投稿者:大井 幸子 (東京都・女性・国際金融アナリスト・-)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-03-29 16:29 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3493/3511
 ティラーソン国務長官解任のニュースで、北朝鮮やイランを含む地政学リスクが注目される。ニュースでは、彼のファーストネームRexから、「Rexit」と報じられている。メイ首相は英国EU離脱「Brexit」後の後始末に苦戦している。Rexit後の米国はどうなるのか?

 米国の国家情報機関は米国の脅威に関する年報”Worldwide Threat Assessment” (2/13/2018)にて以下のように言及している。主な脅威として、1) 北朝鮮とイランの核問題、2) 11月の中間選挙に向けてのロシアによるサイバー攻撃、3) 技術移転のおかげで中国人民解放軍の近代化が進む、4) 膨れ上がる米国債務。あくまでも外交政策による和平を求めたティラーソン氏が解任された後、トランプ大統領はタカ派のCIA長官ポンペオ氏を起用した。上の1)から3)に関しては強気に立ち向かう姿勢である。トランプ大統領は米朝直接会談を歓迎し、当地まで出向くという意思表示をしたことで、「これ以上有りえない譲歩」を見せた。もはや北朝鮮側には選択肢はなく、会談を実施し、非核化に合意し実行しなければならない。さもないと米国は軍事的解決策に出るだろう。

 ところで、国家情報機関が公的債務問題に言及するのは「経済安全保障上」の懸念があるためだ。米国の公的債務は20兆ドル(約2000兆円)に達し、増え続けている。米国債の買い手は海外の機関投資家であり、主要な保有国は中国と日本である。また、債務が増え続ければ債務返済コストが上昇し、経済成長の重荷になる。こうした深刻な状況にもかかわらず、コーン委員長辞任の後空席になっていた国家経済会議(NEC)の委員長に、トランプ大統領は人気マーケットコメンテーターのラリー・カドロー氏を抜擢した。カドロー氏はTVタレントであり、ついに会議がTVショーになってしまった。これはさすがに正気の沙汰とは思えない。

 ところで、Rexit後にやって来る脅威をまともに受けるのが日本である。米朝対話が実現すれば、「北朝鮮に最大限の圧力をかける」と吠えていた安倍政権は蚊帳の外に置かれる。米国の保護主義政策のあおりで円高となれば、アベノミクスを支えてきた円安・株高は持続しない。森友学園問題はまだ長引きそうだし、万一、安倍麻生退陣となれば、株価は大幅下落し、本当の国難がやって来る。

米中対立と日朝平壌宣言は両立しない   
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-03-28 20:18 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
3492/3511
 世の中には、その時には気が付かなくても、後に至って事の重大さに慄くような出来事があるものです。2002年に当時の小泉内閣が北朝鮮と間で交わした日朝平壌宣言もまた、その一つではないかと思うのです。戦後、朝鮮半島が南北に分裂して以来、長らく日本国と北朝鮮との間には国交はなく、この意味で日朝平壌宣言は、日本国の対北政策の転換点とも目されました。その背景に拉致事件があったことは言うまでもなく、小泉首相の平壌訪問と拉致被害者、並びに、その家族の方々の帰国実現は、サプライズ外交として脚光を浴びることとなったのです。小泉元首相の最大の功績とも評されていますが、今になって考えて見ますと、あまりに危うい橋を渡っていたとしか言いようがないのです。

 今日の中国の軍事大国化とそれに伴う米中対立の深刻化を考慮しますと、その危うさは鮮明に浮かび上がります。2002年当時にあって、中国は、天安門事件後であれ、2001年にはWTOへの加盟を果たしており、自由主義国でも中国の経済発展がやがて同国の自由化と民主化をもたらすとする期待感がありました。このため、表立った中国脅威論もなく、況してや平壌宣言と中国との関連性について深く考える論評も皆無に近かったのではないでしょうか。

 しかしながら、当時にあって極めて自然に感じられた日朝首脳会談を機とした拉致事件の一部解決から平壌宣言への流れは、両者を結び付ける必然性も道理もなく、日本国、並びに、国際社会にとりまして攪乱要因でしかなかったように思われます。何故ならば、仮に、平壌宣言の内容に従って、北朝鮮の核・ミサイル開発問題の解決が図られ(北朝鮮の非核化を明記しているわけはなく、ミサイル発射実験もモラトリアムに過ぎない…)、日朝関係が正常化された場合には、日米同盟をも揺るがしかねない重大な問題が発生するリスクがあったからです。例えば、日朝国交正常化と同時に、日本国は、北朝鮮に対する莫大な経済支援を約束しておりますが、朝鮮戦争以来、米朝関係が休戦状態にあり、かつ、特に中国と北朝鮮との間で同盟関係が維持されている点を考慮しますと、日本国は、同盟国であるアメリカの“敵国”を資金面で支えることとなります。また、同宣言では、日朝間において相互に脅威となる行動をとらないとされていますが、朝鮮戦争が再開される、あるいは、対北軍事制裁が実施される場合、自衛隊の対米軍支援にも支障をきたすことも予測されます。アメリカは、日本国による頭越しの“日朝和平”に憤慨したかもしれません。加えて、北朝鮮は、ソ連邦を後ろ盾として建国された国ですので、米ロ関係においても間接的なロシア支援ともなりかねません。言い換えますと、平壌宣言の“誠実な履行”は、同盟国であるアメリカをはじめとした自由主義国に対する“裏切り”ともなりかねなかったのです。

 この問題の根底には、国際社会における対立関係に変化がない状態において、核・ミサイル問題、並びに、拉致問題の解決の代償として、敵方陣営にある北朝鮮と国交を正常化し、かつ、経済支援を行うのは間違いではないか、という基本的な問いかけがあります。本来、別個に解決すべき問題を一緒くたにしたことで、日本国は、中ロ北陣営に引き寄せられると共に、日米同盟の弛緩と信頼喪失というリスクを負うこととなるからです。幸いにして、北朝鮮は、その後、悉く平壌宣言の内容を反故にしたために日本国は事なきを得ましたが、今般、再度、日朝、日米、並びに、南北間の対話において核・ミサイル問題、拉致問題、そしてその先に平壌宣言が持ち出されている現状は(米朝和平への流れも同じパターンであるかもしれない…)、2002年において架設された“危ない橋”を再び渡り始めたことを意味します。米中対立が先鋭化している今日(たとえ米朝関係が正常化されても、中国の脅威は残る…)、再びこの問題が日本国の安全保障上の危機として迫ってきているように思えるのです。

  <<前の20件 | 最新|次の20件>>  [ スレッド一覧 | タイトル一覧 | *投稿一覧]