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2012-02-15 06:56
野田政権の支持率低下は底なし沼だ
杉浦 正章
政治評論家
内閣支持率が低落する度に思い出す人がいる。竹下登だ。1988年に消費税を初めて導入してから支持率が低落の一途をたどり、退陣直前の時事通信の調査で4.4%に至る。内閣支持率史上に燦然(さんぜん)と輝く金字塔を打ち立てたのだ。当時筆者は時事通信の政治部長だったが、退陣要求のデモ隊に囲まれた竹下邸(旧佐藤栄作邸)に他社の仲間と潜り込んで、「ここまで来ました」と数字を見せた。竹下は「そろそろ潮時だわな。周りの家にも迷惑だしな」と漏らしたものだ。すごいのは竹下が4.4%にいたるまで「潮時」と思わなかったことだ。結局総辞職した。連綿と続く時事の調査によると40%台で辞めたのが細川、羽田内閣。30%台で辞めたのは池田、小泉内閣。20%台は福田赳夫、大平、中曽根、海部、村山、橋本、安倍内閣だ。10%台は佐藤、田中、三木、鈴木、宇野、宮沢、小渕、森、福田康夫、麻生、鳩山、菅内閣となっている。一ケタで辞めたのは竹下だけだ。これで、内閣支持率が20%台に入ると、何故危険水域入りするのかが分かる。
それでは首相・野田佳彦の場合はどうか。内閣支持率は1月に時事が28.4%となったのを皮切りに、最新の調査で朝日が27%、産経が26・4%と3割を割り込んだ。辛うじてNHKと読売は30%にとどまった。支持率低下の原因はすぐに思いつくだけでも、防衛相人事にはじまって、マニフェスト崩壊、普天間固定化、消費増税、環太平洋経済連携協定(TPP)、最低保障年金の大嘘と枚挙にいとまがない。これだけそろえば下がらないのがおかしいのだ。その野田は、竹下の輝く金字塔4.4%を追い抜く可能性がある、と言ったら読者は驚くだろうが、あるのだ。竹下の低落はリクルート事件もあったが、消費税導入が最大の原因であった。導入後辞任せずに政権にとどまったのが致命傷となったのだ。消費税3%で金字塔だから、合計5%ではどうなるかというと、「大金字塔」になり得るのだ。というのも、野田は消費増税解散も、総辞職も、否定している。「解散は増税実施前に国民の信を問う」との方針で一貫している。その方針なら法案を通した後も政権に居続けるということになり、支持率はとどまるところを知らぬ下落となる。底なし沼だ。
もっとも、政権が使命感に燃えているのも確かだ。野田が「支持率に右往左往しない。本当に国家国民のためなら、現状では厳しい世論であっても、説得していくことを覚悟しなければいけない場面もある」と決意を表明。副総理・岡田克也も消費増税に原因があることを認めながら、「ひるむことなく、しっかり前に進めていく」と述べる。野田に完全同調しているのだ。野田政権は「撃ちてし止まん」で、消費税に関してだけは潔い。これが支持率で最低の大金字塔を打ち立てることのできる“根拠”である。その先に見えるのは野垂れ死にしかない。哀れな末路となりたくなかったら、野田は消費増税法案を通して直ちに解散で信を問うしかないということだ。ところが、選挙しか頭にない元代表・小沢一郎はこの政権首脳の対応がどうしても納得できない。「内閣支持率が下がっているときに本当にやれるのか」とか、「こんなときに消費増税なんて冗談じゃない。何を考えているのか」と批判する。ここで使命感に突き進む「政治家」と、マニフェストでごまかしても「選挙に勝てば、勝ち」という価値観でしか政局を見れない「政治屋」との差が歴然と出る。
しかし小沢も往生際が悪い。こんな時もどんなときもない。民主党は自分がうそをついた罰で、どっちみち負けるのだ。今度の調査の特徴を見れば分かる。各社共通の傾向として無党派層が異常に拡大しているのだ。朝日が前回の55%から63%へ、読売が45%から54%へと大幅に上昇している。これは前回民主党を支持した層が、行き場をなくして、“浮遊”していることを物語る。最終的にどこへ流れるかというと自民党と、“響き”だけはいい新党に流れるだろう。自民党執行部がだらしがないのは、新党の動きに対して毅然とした態度を取らないことだ。新党とは既存政党の否定であるのに、まだ未練たらしく選挙協力でもできないかなどと、「裏の政治」を模索する。維新の会の選挙公約を見れば、民主党より悪いど素人集団であることは歴然としている。石原慎太郎は核武装も辞さぬファシストだ。昔の自民党だったらバッシッとたたくのだろうが、今の執行部はいつも「ハムレットの心境」(幹事長・石原伸晃)でしかない。自民党総裁・谷垣禎一以下勝負をしようという気力に欠ける。このため、判断力に欠ける有権者は、たたく既成政党がないから、いきおい新党へと向かってしまうのだ。優柔不断ではこの政局は乗り切れないことが分かっていない
。
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